第3部:【社内体制構築の第一歩】Robloxプロジェクト始動に向けた組織と人材戦略

Robloxの可能性を理解したとしても、「一体、社内で何から始めればいいのか?」と途方に暮れるかもしれません。しかし、これは決して一朝一夕でできることではありません。段階的なアプローチと、適切な組織・人材戦略を立てることが成功の鍵を握ります。
フェーズ1:知見獲得と学習のための「少人数パイロットチーム」結成(期間:1〜3ヶ月)
まずは、社内の既存リソースから好奇心旺盛で学習意欲の高いメンバーを少数精鋭でアサインすることから始めます。理想は、開発、マーケティング、企画の各部署から1〜2名ずつ。彼らのミッションは以下の通りです。
- Roblox Studioの基礎学習: 公式チュートリアル、オンライン教材(YouTube、Udemyなど)を活用し、Luaスクリプトの基礎、3Dモデリングの基本操作を習得します。
- 人気「体験」の徹底分析: Roblox内の「Discovery」ページで上位に表示される「体験」をプレイし、なぜ人気があるのか、どのようなマネタイズモデルを使っているのか、コミュニティとの交流はどうか、徹底的に分析します。
- 社内ワークショップの開催: 習得した知識を社内向けに共有し、Robloxの基本を啓蒙します。これは経営層の理解を深める上でも重要です。
このフェーズでは、大きな予算は不要です。主に人件費と、必要であればオンライン学習リソースへの投資で十分です。重要なのは、「まず触ってみる」「体験してみる」という姿勢です。
フェーズ2:プロトタイプ開発と社内啓蒙のための「専任チーム」発足(期間:3〜6ヶ月)
パイロットチームでの学習を経て、Robloxの基本的な理解が進んだら、次のステップは実際に小さな「体験」を開発してみることです。
- 専任チームの発足: パイロットチームのメンバーを中心に、Robloxでのプロトタイプ開発に専念できる「小規模な専任チーム」を正式に立ち上げます。人数は3〜5名程度が現実的です。
- 既存IPのミニゲーム化、あるいは全く新しいコンセプトの検証: 貴社の既存IPをRobloxの特性に合わせてミニゲーム化してみたり、あるいは全く新しい、Robloxに最適化されたコンセプトの「体験」を短期間で開発します。目的は、「実際にRobloxでコンテンツを開発し、リリースするまでのプロセス」を社内で経験することです。
- コミュニティとの初期交流: 開発したプロトタイプを限定的に公開し、Roblox内のコミュニティや、社外のRoblox専門家からフィードバックを得る機会を設けます。
このフェーズでは、初期のプロトタイプ開発に伴う人件費、そして小規模なコミュニティ形成のためのリソースが必要になります。予算については「投資額」のパートで詳しく述べますが、まずは「小さく始め、早く失敗し、素早く学ぶ」ことを徹底します。
フェーズ3:本格展開を見据えた「Roblox事業部」の検討と役割分担
プロトタイプ開発を通じてRobloxの可能性と課題が明確になったら、本格的な事業展開を見据えた組織体制の検討に入ります。
- Roblox事業専門チームの組成:
- プロデューサー/ディレクター: Robloxにおける体験の全体統括、収益モデル設計。
- ゲームデザイナー: Robloxの特性を理解したゲームメカニクス、UI/UX設計。
- Robloxスクリプター(エンジニア): Luaを用いた開発、Roblox API連携。
- 3Dアーティスト/モデラー: Robloxアセット制作、最適化。
- コミュニティマネージャー: Robloxコミュニティとの交流、UGCの誘発、フィードバック収集。
- マーケティング/PR担当: Roblox内外でのプロモーション。
- データアナリスト: ユーザー行動データ分析、体験改善提案。
- 社内人材の育成と外部連携: 上記のスキルセットを持つ人材が社内にいない場合、既存社員のリスキリング(Roblox Studio研修、Luaプログラミング研修など)を積極的に行うか、Roblox開発に特化した外部の専門スタジオやコンサルタントとの連携を視野に入れます。特に初期段階では、外部の専門家の知見を活用することが、無駄な試行錯誤を減らす上で非常に有効です。
- 企業文化へのRoblox DNAの導入: RobloxはUGCとコミュニティが中心です。これは従来の「作り手」と「遊び手」という一方的な関係性とは異なります。社員全体がユーザー目線に立ち、コミュニティとの「共創」を意識する文化を醸成することが、Robloxで成功するための不可欠な要素となります。
Robloxプロジェクトの始動は、貴社にとって単なる新規事業の立ち上げではなく、組織そのものの変革を促す契機となり得ます。まずは少人数で小さく始め、着実に知見と経験を積み重ねることが、この未踏の領域を攻略するための第一歩です。