大手アニメーション会社がゲーム開発に注力する理由 『金色のガッシュベル!! 永遠の絆の仲間たち』の挑戦(東映アニメーション株式会社 永田様)
「東映アニメーション株式会社」により制作され、2003年から2006年まで放映された人気TVアニメ『金色のガッシュベル!!』放映開始から20周年を迎えることを記念し、スマートフォン向けRPGのリリースが決定。
同タイトルはアニメーション制作会社である「東映アニメーション株式会社」が直接的に関わるゲームとしても注目を集めています。
今回は「東映アニメーション株式会社」プロデューサーの永田様に、ガッシュベル初の本格スマートフォンゲーム『金色のガッシュベル!! 永遠の絆の仲間たち』について詳しくお話を伺いました。
『永遠(とわ)の絆の仲間たち』(トワキズ)とは
アニメ『金色のガッシュベル!!』の登場キャラクターと共に懐かしのストーリーを追体験しながら、好きな魔物でチームを編成して術(スキル)や技を繰り出して敵を倒し、物語を進めていく、という内容となっています。
「トワキズ」は、「東映アニメーション株式会社」より2024年リリース予定です。
動作環境
- Android 10以降/メモリ(RAM)4GB以上
- iOS iPhone8以降/iOS 13.0以上
待望のゲームがリリースされるまで
――本日はお時間を頂き、ありがとうございます。よろしくお願いします。
ーー『金色のガッシュベル』の新作ゲームについてですが、どういった経緯で、『ガッシュベル!!』という有名な作品のゲームを開発する流れになったのかをお聞きしたいです。
永田様(以下、永田と表記)「元々、弊社のIPをゲーム化をする場合は、基本的にライセンシーさんとの関係がありました。例えば、ゲームメーカーさん側がゲームを作りたいと申し出て、そこにライセンスアウトをする形です。」
永田「今回、デジタルプロダクト推進室ができるにあたって、我々も事業としてゲーム事業を取り扱うようになりました。単純なライセンスアウトではなく、共同事業としてパートナーを見つけ、一緒にゲームを開発しましょう、という形の取り組みです。」
『 永遠の絆の仲間たち』は3社共同プロジェクト
- 東映アニメーション株式会社[本社:東京都中野区、代表取締役社長:高木勝裕]
- 株式会社NEOWIZ [本社:韓国 京畿道城南市、共同代表:金 承徹(キム・スンチョル)/裵 泰根(ベ・テグン)]
- 株式会社ゲームオン [本社:東京都渋谷区、代表取締役CEO:李 一守(イ・イルス)]
永田「『ガッシュベル!!』に関しましては、今回協業をさせていただいたゲーム会社さん側から、『ガッシュベル!!』でゲーム製作をやりたいです、という売り込みが来ました。」
永田「熱意があるお声がけをいただき、我々もデジタルプロダクト推進室の事業を始めるタイミングでしたので、ぜひ一緒にやりませんか、という形で進んだのが3年ほど前のお話です。」
――なるほど。構想は3年前からあったのですね。
永田「そうですね。推進室ができたのが2021年4月なのですが、お話自体はその前の年からありました。」
永田「リリースは2023年内と発表していましたが、少しそこからずれて2024年の初頭を予定しています。つい先日、事前登録も開始いたしました。」
――なるほど、ありがとうございます。
アニメ会社がゲーム開発をする理由
――東映アニメーションさんといえば、名前の通りアニメーションの会社だと誰もが思うところですが、ゲームに着目した理由はあるのでしょうか。
永田「ゲームに着目したというと後付けになるとは思います。アニメーションを作って、それをライセンスアウトしていくビジネスを柱としてきた中で、会社をより拡大させていくために、新たな事業展開を目指していかないといけない、そういった会社の構想も一部ありました。」
永田「ゲームはハイリスクですが、ハイリターンな部分も大きくある事業です。会社の成長という意味では、我々が仕掛けていくという意気込みは欠かせません。」
永田「ゲームだけではなく、様々な事業の可能性をデジタルプロダクトという形で丸めてはいますが、そういったところでも仕掛けていこうと考えています。」
永田「会社の成長もそうですが、これまではライセンシーさんにIPを育てて貰っていた部分が大きくありました。今回、ゲームを含めたデジタルプロダクトを通じてIPを成長させる、そういった我々が主体となってやっていくという挑戦でもあります。」
ーー今までは協力会社さんに預けて育てていた部分を、東映アニメーションさんも入っていって、一緒にIPを育てていこうとしているのですね。委任ではなく共同でやっていく、というのが今回のプロジェクトの新しさだという印象になりました。
――業界としては、そういった流れがあるのでしょうか。
永田「はい。昨今では、アニメ会社のグループ企業がゲーム会社として活躍することが見受けられます。」
永田「出版や映画業界でもゲームを自社で出されており、そういったタイミングが来ていると感じています。」
――テレビ業界でも、ゲームを作るようになった、とお聞きしたことがあります。
永田「そうですね。メディアや出版など、異業種から新しい事業に乗り出すというのが継続して行われているタイミングだと思っています。」
――ゲームも文化・インフラとして浸透し始めて、事業の一つとする会社が増えているのを感じています。
永田「はい。やはり自らチャンネルを持つことで、情報発信の場としても活用できると思いますし、自分達でIPを育てる手段の一つとしてゲームを選ぶ、そういったケースも増えてきていると思います。」
「ガッシュベル!!」の世界を身近に
――ユーザーにお伝えしたいアピールポイントはどのようなところでしょうか?
永田「『金色のガッシュベル!!』も皆様にご愛顧いただき、今年でアニメの放送から20周年です。」
永田「20年経っても『ガッシュベル!!』のファンは多くいらっしゃるのだなと感じています。昨年の原画展や、東京ゲームショウに出展させていただいたときにも、多くのファンの方がブースに来てくれました。」
『東京ゲームショウ2023』に出展
- 東映アニメーション株式会社として『東京ゲームショウ』に初出展
- 『東京ゲームショウ』ではゲームPVを初公開
永田「設置していた立像で写真を撮ってくださるなど、すごく根強いファンがおり、20年経ってもまだまだ愛されているコンテンツだなと感じています。」
永田「そんなファンの期待を裏切らないようにしつつ、また新しい『金色のガッシュベル!!』の世界を見せられるようなゲームを作ろうと思って鋭意開発しています。」
永田「当時のアニメーションの思い出などの懐かしさもありながら、ゲームならではのオリジナル要素を盛り込んでいっています。」
永田「ゲームオリジナルキャラクターを導入したり、オリジナルストーリーを作ったりなど、既存の『ガッシュベル!!』ファンだけではなく、新しく触れる人にも楽しんでもらえるゲームを作っているので、期待していただきたいです。」
永田「また、『ガッシュベル!!』のゲームが本格的にスマートフォンで出るのは今回で初めてになります。身近に『ガッシュベル!!』という作品を感じられるようなゲームになると嬉しいなと思っています。」
――20年経ったIPだからこそ、皆さんの期待を裏切らないものを作っていきたいという想いが伝わります。
永田「ファンにとっては、思い出を壊されることが一番受け入れられないことだと思うので、そこは注意しています。使う楽曲はアニメに利用されていた歌や曲ですし、声優さんも当時の方に新録させていただいた声を使用させてもらっています。」
永田「また、今までのゲームよりも多くのプレイアブルキャラクターが登場すると思います。脇役など、少ししか出番がなかったとしても、しっかりとゲームに登場させるような形でオールスターを目指した、全てが詰まっているような作品になると良いな思っています。」
リリース以降の構想
――将来的に目指す所などをお伺いしたいです。
永田「現状として、今回のリリースは日本だけの予定となっています。」
永田「まずは日本のファンに受け入れてもらえるものを作ること、それを第1として作っているからです。」
永田「ただ、アジア諸国でも人気があるということも伺っていますし、今回の開発会社であるゲームオンさんの親会社であるNEOWIZさんは韓国の会社です。」
永田「彼らも『ガッシュベル!!』が大好きだという形で参画してくれていて、NEOWIZさんにお伺いさせていただいた時もガッシュのフィギュアなどが置いてありました。」
永田「そういったこともあって、海外でも人気だということは分かっているので、世界展開も当然見据えて、世界のファンの皆さんにも提供できるように頑張りたいと思ってます。」
永田「日本のコンテンツを世界に発信するには、我々だけではできない部分があると思います。今回、NEOWIZさんは海外展開にも長けていますので、いつか海外に向けても発信していきたいと思っています。」
βテストの評判
――クローズドベータテストがありましたが、ゲーム性での評判はいかがでしたか。
永田「クローズドベータテストは、最初に2000人の募集をかけていましたが、あっという間に上限に達してしまったので、4000人にまで増やさせてもらいました。それぐらい熱心な『ガッシュベル!!』ファンの方々が参加してくださったと思います。」
永田「アンケートでは、8割ぐらいは満足してくれたかなというところです。あんまり、という人も居ましたが、そのコメントの多くはキャラクターにボイスがついていないことへの不満でした。」
永田「今回のベータテストでは、キャラクターのボイスが入っていない状態でした。一応テストの要項に『今回のクローズドベータテストではキャラクターボイスが入っていませんが、正式サービスでは声が入ります。』と書いていたのですが、ボイスがないという不満が多かったですね。逆に言うと、楽観的かもしれませんが、ボイスの有無以外は受け入れられてたのかなと思いました。」
リリース時の追加要素
- 正式サービスでは新たに収録したCVを実装予定
- クローズドベータテスト時はCVは未収録
永田「良かった点でのコメントは、『ガッシュベル!!』の世界観を再現してるという部分が好評で、満足がいくものだった、という回答が多数ありました。」
永田「また、当時のアニメの曲や主題歌を使用しており、アニメの懐かしさを始まってすぐに感じられたと思います。」
永田「キャラクターはデフォルメ化している部分がありますが、しっかりと3DCGで制作しています。そういったところで、ボイスがない以外では、ファンにも受け入れられているのではないかと思います。」
永田「オリジナルキャラクターについても懸念していたのですが、ガッシュの世界観に合っていたという感想が多く、人気も出そうです。ガッシュたちとの絡みや、オリジナルストーリーにも手応えを感じています。」
――ファンとしても非常に楽しみにしています。
――本日はありがとうございました。
前編|「ファンが付く」IP創出へのチャレンジ 東映アニメーションが目指す新たなIP創出
『金色のガッシュベル!! 永遠の絆の仲間たち』公式
公式X(Twitter):https://twitter.com/Gash_towakizu
公式サイト:https://zatchbell-towakizu.jp/
東映アニメーション株式会社:https://corp.toei-anim.co.jp/ja/index.html
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写真:インタビューにお答えいただいた永田様