KADOKAWAとHAYATE、そしてSONY──アニメ“覇権”を狙う次の布石

ソニーがKADOKAWAや新会社Hayateと共に描く“アニメ覇権”戦略とは?原作供給から世界配信まで、業界構造を変える野心的な布陣に迫る。
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2024年、ソニーグループとKADOKAWAの業務資本提携が発表されたことは、国内外のアニメビジネス関係者に大きな衝撃を与えた。
KADOKAWAは、出版社としてだけでなく、映像制作会社やゲーム会社を傘下に持ち、アニメ原作の供給源として圧倒的な力を持っている。
『Re:ゼロから始める異世界生活』や『オーバーロード』『この素晴らしい世界に祝福を!』など、多くのライトノベル系人気IPを世に送り出してきた同社は、ソニーのアニメ戦略において極めて重要なパートナーといえる。
ソニーはアニプレックスを中核に、高品質なアニメ制作を行ってきたが、KADOKAWAとの提携によって原作資源の供給が安定し、さらにはそれをグローバル展開できる配信インフラとしてCrunchyrollを活用することで、アニメIPのバリューチェーン全体を自社内で完結できる体制が整った。
これは、いわば“アニメ版の垂直統合モデル”の完成形である。
また、2025年に発表された新会社「Hayate Inc.」の設立も、ソニーのアニメ戦略における重要な布石となっている。
HayateはアニプレックスとCrunchyrollが共同出資するアニメ制作会社であり、グローバル市場向けのオリジナルアニメの企画・制作に特化している。
Hayateでは、従来の日本型アニメ制作方式である“制作委員会モデル”から脱却し、少数精鋭による迅速な意思決定と開発スピードを武器に、海外市場のニーズに即したコンテンツ制作を行うことを目指している。
Hayateの設立背景には、配信プラットフォーム主導のグローバル制作(いわゆる"Netflix方式")に対抗する意図も含まれている。
つまり、ソニーはあくまで日本発の制作文化とクリエイター主導の姿勢を維持しつつ、世界市場で通用する作品を効率的に生み出す体制を構築しようとしている。Hayateはその象徴的な試みといえる。
今後、KADOKAWA、アニプレックス、Crunchyroll、Hayateという四者の連携が深化すれば、ソニーはアニメにおける“企画・制作・配信・収益化”の全工程を支配することが可能になる。
世界のアニメ産業における覇権を本気で狙うソニーの本気度が、この一連の布陣からはっきりと読み取れる。