Crunchyrollとは何か?──世界最大のアニメ配信ビジネスの中核

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アニメ専門ストリーミングサービス「Crunchyroll(クランチロール)」は、世界中のアニメファンにとって欠かせない存在となっている。
米国発のこのサービスは、2006年に設立された当初はファンによる非公式な動画共有サイトとしてスタートしたが、徐々にライセンスを取得し、合法的な配信事業者として成長した。
そして2021年、ソニーグループが約12億ドル(当時約1300億円)でこのCrunchyrollを買収したことは、アニメ業界全体における国際戦略の転換点となった。
Crunchyrollは現在、130カ国以上でサービスを展開し、登録会員数は1億人を超え、有料会員は1700万人以上に達している。
主な言語対応は英語、スペイン語、フランス語、ドイツ語、ブラジル・ポルトガル語などで、日本語音声+多言語字幕という形式でアニメの最新話を世界同時に視聴できる「Simulcast(シミルキャスト)」配信を実現している。
これは日本国内での放送後、数時間以内に世界中のユーザーへ最新話を届ける仕組みで、違法視聴の抑制とファンの囲い込みに大きな効果を上げている。
さらにCrunchyrollは、単なる動画配信プラットフォームではなく、アニメIP(知的財産)を軸にしたメディアミックス型のビジネスモデルを展開している。
具体的には、オリジナルアニメの企画・制作(Crunchyroll Originals)、イベントの開催、グッズ販売、ゲーム化など、多角的な収益源を持つ。
こうした取り組みにより、アニメIPの価値を一過性のブームに終わらせず、長期的に収益化するエコシステムを形成している。
たとえばCrunchyrollが手がけた『Tower of God』や『The God of High School』などの作品は、韓国のWebtoon(縦読みデジタル漫画)を原作とし、グローバルな新規IPの創出にも寄与している。日本発アニメに加え、アジア発の新たな才能を世界へ送り出すプラットフォームとしての役割も担い始めている。
現在、Crunchyrollはソニーグループの音楽事業(SMEJ)、アニメ制作(アニプレックス)、ゲーム事業(PlayStation)と連携し、グローバルIPの価値最大化に向けたハブとして機能している。アニメを単に"日本の文化"としてではなく、ソニーの中核事業の一角として戦略的に扱う姿勢が、他社とは一線を画す。