【ゲームプロデューサーを目指す学生がクリエイターにインタビュー 】ゲームプロデューサー木村氏の仕事とは?例えるならスポーツ強豪校の有名な監督とかではなく、ただの顧問の先生? 木村雅人#2

【ゲームプロデューサーを目指す学生がクリエイターにインタビュー 】ゲームプロデューサー木村氏の仕事とは?例えるならスポーツ強豪校の有名な監督とかではなく、ただの顧問の先生? 木村雅人#2

【ゲームプロデューサーを目指す学生がクリエイターにインタビュー 】ゲームプロデューサー木村氏の仕事とは?例えるならスポーツ強豪校の有名な監督とかではなく、ただの顧問の先生? 木村雅人#2

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  1. 1木村さんのプロデューサーとしての業務
  2. 2クリエイターとの関わり
  3. 3プロデューサーのなり方って変な話
  4. 4今回のお話をうけて

木村さんのプロデューサーとしての業務

エンジニアやデザイナーなどの職種とは異なり、プロデューサーという職種は会社やプロジェクトによって担っている業務もバラバラな場合があり、一概にこういう仕事をしていますという説明が少し難しい。
今回のインタビューでは、まず木村さんがどのような業務をしているのか伺うことで、プロデューサーという職種への理解を深めることから始めたい。

木村様(以下、木村と表記)「僕は、多分かっこいいタイプのプロデューサーじゃないですよ。」

福山「確かに表によく出ておられる方々のイメージが強いですが、実態を知るという意味ではそちらに偏らない方が良いのではと思っています。」

木村「であれば、プロデューサーという仕事は、開発の時期とか会社の状態によって仕事の内容が変わると思います。」

木村「例えば大手のゲーム会社さんだと、多分僕らとは違った仕事の仕方をしていると思います。もっとプロモーションなどに寄っていることが多かったりして、表に出ている方々もいらっしゃると思います。ただ、ウチみたいな規模の開発スタジオだと色々人手が足りなくて、もうちょっと実際の開発現場や経営、管理的なことにも時間を取られたりもします。そこは会社の規模とか、何をしているのか、という会社の状態やプロジェクト自体の状況によって変わってきますね。」

木村「まず企画を固めて、人を集める。そして、実際にゲームを作っていく中ではプロマネみたいなこともやりますし、出来上がってくると作品を外に伝える仕事になっていくので、仕事の内容は結構変わっていきますね。ルーティン的にずっと同じことをやっていればいいっていうわけではないですし、だからこそ面白い仕事なのだと思います。」

福山「では、木村さんがされている業務についてお伺いしたいと思います。自己紹介などで、『ゲーム開発現場のいろいろ面倒くさいことを担当しています。』とおっしゃっていますが、実際にはどんなことなんでしょうか。」

木村「やっていることの幅は広くて、本当に何でもやってるんです。特に今、僕らは会社の立ち上げ時期というのもあり、会社自体を作るということもしていて、それこそオフィスの内装についても、あんなのが良い、こんなのが良いとデザイン会社と相談しつつ作っていきました。」

木村「そんなこともやりつつ、ゲームの企画の立ち上げをしたり、そのプレゼン資料をまとめたり、それこそ実際に人員を集めるとなれば外部の会社さんに相談して人員を連れてきたり、新卒とか中途の人材採用もやったりしています。」

木村自分のプロデューサーとしての仕事を例えるときに、これが一番近いかなって思うのが”スポーツ強豪校の顧問の先生”です。カッコ良い監督とか花形の選手とかデキるコーチじゃなくて、顧問の先生っぽいんですよ。」

木村「ゲーム開発で言うと監督はディレクターで、『どんなチームにしよう、どんな戦略でいこうとか、どのポジションの選手が足りないから補強しないといけない』っていうのは監督が考えます。もちろんその横に顧問の先生もいる。いるんですけど、自分でそれらをゴリゴリ決めるわけではなく、アドバイスしたり相談し合ったりする感じ。」

木村「それでも、チーム全体のいろんなことを把握していて、例えば、『練習時間が足りないから、もうちょっと夜遅くまで練習したい。だからナイター設備が欲しいよ』って言われたら、お金をかき集めてきて、業者を選んで、ナイター設備を作る。」

木村「野球で言うとするなら、バッティングピッチャーが足りないって言われたら、ボールも投げるし、守備練習ではノックも打つしって感じで本当に何でもやる。でも実際の試合でプレーをするのはピッチャーやバッターといった選手である現場の人間で、そこを指揮するのは監督というディレクターでっていうのに近いのかなって思っています。」

木村”作る”っていうことを支える。もちろん作るところ自体にも関わるんですけど、ど真ん中にいるわけではなくて、それを支えること全部をやっている仕事な気がしますね。」

福山「部活とかで言う顧問っていうのはしっくりくるような気がします。説明するときにもイメージを持ちやすいですね。」

クリエイターとの関わり

福山「顧問の先生みたいというお話でしたが、直接的に開発に関わり続けているわけではないのかなと思います。プロデューサーという立場として、クリエイターの方々との関わりはどういうふうなものになるんでしょうか?」

木村「今おっしゃったみたいに世間のイメージとしてはやっぱり、プロデューサーはちょっと引いたところにいて、たまに現場を見にきて……みたいな感じだと思うんですけど、僕の場合で言うと、基本的にずっと、どっぷり現場にいます。ずっと現場にめり込んでいるので別のところにいる感じではないです。だから関わり方でいうと本当にチームの一員として現場にいて、チームを支え続けています。」

木村「ゲームを作っているとトラブルも、もう本当にいろいろ起きます。ゲーム開発のチームってすごい大きな船みたいなモノなんですけど、そんな大きい船が動き始めたときに、その進路にはいろんな落とし穴がいっぱいあります。それを事前にできるだけ埋めていって、平坦な道をうまく進んでいけるようにするんですけど、思わぬところにいっぱい落とし穴があるので、全部埋めるのは全然無理で、一生懸命対処し続けて作っていく。」

木村「なので、僕は普段は別のところにいて、ちょっと俯瞰して見ているという感じではないです。もちろん俯瞰気味ではあるんですよ。それができないとチームの問題を把握できないので、俯瞰的に見てはいるんですけど、半分はチームに片足をメリメリにめり込ませてもらっている感じではありますね。」

福山「プロセス的なところで言うと、直接的な業務としてゲームの中身を作るだとかっていうところとは少し異なってくるのでしょうか。」

木村「多分会社やプロジェクトの成り立ちにもよると思うんです。例えば、外部のディレクターさんに企画を持ち込んで来ていただいて、ご一緒するっていうような場合だと、企画の最初から関わるっていうのは難しいんですけど、僕らの場合は基本的には完全にゼロから自分たちの会社の中で作っているので、ディレクターがまず企画の種を作るという段階からある程度関わっていきます。」

福山「個人的なイメージとして、企画の立ち上げ段階に関わったりというのはありました。一方で、動き出した後に関しては特にイメージがつきづらいのですが、企画が動き出してからについてはどうでしょうか。」

木村「企画がある程度出来上がると、それをビジュアライズ、ゲーム化、ストーリー化していくっていうことが始まっていくんですけど、そこはそれぞれにプロフェッショナルがいるのでそこに任せていきます。」

木村「個々に任せつつ、色々な全てに関わっていて、プロジェクトが自立して本格的に回り始めるまでは一緒に回していく感じですね。例えば、アートディレクターが足りないなら、どこかから探してきたり、企画をゲームに落とし込んでいきましょうという段階で企画の人間が足りないとなれば仕様書作成も手伝うみたいな。」

木村「過去に関わった作品で企画が足りなかったときも、一緒にミーティングルームに入って、『主人公はこんなやつで、どんなきっかけでこうなって……』っていうシナリオの概要みたいなところを一緒に缶詰になって詰めていったりもしました。」

木村「ココは場合や人にもよるんですけど、現場にも関わりつつどちらかというと外向き、『ディレクターがこれをやりたい。でも今、人が足りない。じゃあ、探してきます。』、『タイアップをしたいなら、タイアップ先を探します。』っていう感じで、どこでも必要なところから、ありとあらゆる方法でチームビルディングをしていく。」

木村「あとは、ゲームを作るためには莫大なお金が必要なので、やっぱり予算とかも作らないといけないんですね。だから、クリエイティブと並行してこれぐらいの人数になって、これぐらいの期間がかかって、こんなものがいるぞっていう、もうありとあらゆることを想定して、考えて予算を作ります。」

木村「そうすると、このチームには、こんな能力の人が必要っていうのが見えてくるので、スタッフ表みたいなものを作ってスタッフを集めます。そういった表などができてくると、『大体これぐらいの人たちがこの期間いるっていうことは人件費がこれぐらい必要で、機材費がこれぐらいかかる。この規模の企画なら、これぐらいの長さのカットシーンがあって、それを作るためにはモーションキャプチャーの費用がこれくらいかかるよね。でもそれを日本国内でやる?海外でやる?……このゲームは英語ベースで作るからやっぱり海外やね。』みたいな感じでゲーム開発に関わることをまるっと含めて予算化していくんです。」

木村「並行で、現場のいろんなところに首を突っ込んでもいくんですが、やっぱりどちらかというと外向きであったり予算の管理であったり人の管理であったりってところがメインになってきますね。」

木村「でも、『ちょっとここ第三者的な意見が欲しいから、1回このミーティング入ってよ』とかっていうときは入りますし、さっき言った、バッティングピッチャーが足りないから顧問が投げるみたいなときは多々ありますね。」

木村「本当にその時々であれやって、これやってとかなので、プロデューサーの仕事ってずっと一つのことをしているみたいなことはあまりなくて、ゲーム開発のフェイズ毎に本当に色々なことをやっていますね。」

福山「ゲーム開発の内側にいないと分からないことがたくさんあって、それらを知っているとプロデューサーの業務に繋がることもたくさんある。だからこそ、俯瞰的な視点を持ちながらも内側にちゃんと関わっていると上手く回せることもあるんだろうなと感じました。」

木村「しっかりと関わってないとどんな人が必要なのか、どこに人が足らないとかが解らなくなってしまう。『やばいぞ、なんか遅れてるぞ』みたいなときに、『ここが足らない。ここがちょっと多すぎるから人数を調整して』とかっていう予算とスケジュールと人員の工夫ができるっていうのはすごく大事なことで、それができるためにはやっぱりドップリ首を突っ込んで企画内容やプロジェクトにいるスタッフを知っていないと無理だと思いますよね。」

プロデューサーのなり方って変な話

木村「今回、このインタビューを受けるにあたって、どんなことを話そうかなって考えたんですね。実際プロデューサーってどんな仕事で、どこが面白いのか?しんどいのか?どういうときに燃えて、逆にどういうときにヘコむのかっていう実際の仕事内容の話とか、こんなふうにやっていくとプロデューサーみたいなものになれるよっていう、ものかな?と思ったんですが……。」

木村「でも、実はどっちもあんまり答えがない仕事だなと思ってしまって。プロデューサーになれる虎の巻みたいな裏技のようなものを話せたら良かったんですが。」

福山「明確なキャリアプランがあってのものではないということですか。」

木村「色々考えていて、実はプロデューサーって、プロデューサーになりたいと思ってなっちゃ駄目かもって思ってしまったんですよ。仕事って自分のできることと、やりたいことと、周りから求められていることからできてると思うんです。そこで、これはあくまで僕の個人的な場合ですが、自分ができることを、何とか凄い才能の人たちの集団から振り落とされないようにしがみついて、必死に色々やってきた結果がプロデューサーというモノだったような気がしています。」

木村「なので、『プロデューサーっていう肩書きが欲しいぜ』ってなったわけではないし、そう考えるとプロデューサーになる方法とかっていうのはやっぱりおかしな話だなって(笑)。」

今回のお話をうけて

各記事でのお話を通じて感じたこと、考えたことをまとめています。お付き合いいただけると幸いです。

就職活動でよくある質問の一つに、この仕事はどういうことをやるか分かっていますか?というものがあると思います。志望者の業界への理解度を問うものだと思いますが、職種名は共通していても会社ごとに何をやっているかは多少なりとも揺らぎがあるはずで、特に上流に関わる職種ほどそれが大きくなると感じています。

プロデューサーという職種は特にその揺らぎが大きいものの一つだと思っていて、どんなキャリアの始まりでもたどり着く可能性があり、キャリアプランの紹介を求められたときに話す選択肢にありながら実態を把握することが難しいという、なかなかいやらしい存在だなと思います。

それを今回、木村さんの場合という注釈はつくものの具体的に教えていただき、理解度が上がったと感じています。私だけでなく、これを読んでいる方々の理解が深まるきっかけになれば良いなと思います。他の方のお話を聞いたり、読む際のイメージを持つのにも役に立つのではないでしょうか。

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