【Web3インタビュー】「常識」を疑い、よりユーザーに寄り添う新しいGameFi ゲーム業界の雄が仕掛ける『Quizo.ooo』の可能性(株式会社BLOCKSMITH&Co.)真田哲弥
2021~2022年にかけて、数多くのGameFiが誕生してきました。一方で、それらのGameFiの中には、NFTの売上やゲーム内トークンの値上がりに依存しているタイトルもあります。その結果、一部のタイトルではゲームで使うNFTやトークンの価格の暴落が起こり、「ゲームで稼げる」ことが強みであるはずだったGameFiで、結果的にユーザーが損をする結果になってしまっているタイトルがあるのも事実です。
KLab株式会社の子会社である「BLOCKSMITH&Co.」(以下「ブロックスミス社」と記載)は、その課題へ真正面から向き合い、新しいGameFiタイトル、学んで稼げる『Learn to Earn』の創造にチャレンジしています。今回は同社の代表取締役社長である真田様に、新タイトル『Quizo.ooo』についてお話を伺いました。
株式会社BLOCKSMITH&Co. 代表取締役社長 真田 哲弥 様
株式会社BLOCKSMITH&Co.
KLab社内プロジェクトとして、2つのGameFiプロジェクトが進行しておりました。
BLOCKSMITHは、KLabよりその2つのプロジェクトを引き継ぐ形で、KLabの子会社として設立されました。
GameFiなどのサービスを順次提供開始することを目標としています。
・GameFiの開発、提供、運営
(GameFiとは、「Game+Finance をブロックチェーンとトークンエコノミーによって実現しようとする新しいゲームカテゴリー」、簡単に言うと「遊んで稼げるゲーム」です。)
・NFTの発行と販売
広義のメタバース及びGameFi提供プラットフォームの開発と提供、そこにおける、広告配信やECなど
ユーザーへ寄り添い、持続可能なGameFiへ挑戦
ーーーそもそも、ブロックスミス様のGameFi事業は親会社のKLab様のプロジェクトを受け継いでおるという認識でございます。
ーーーKLab様はいわゆるアプリゲームの開発をご事業としていらっしゃいます。その中で、GameFiの世界に進出されるきっかけは何だったのでしょうか?
真田「そもそもKLab社の中で、NFTを用いたビジネスを考えてはいました。しかしながら、世の中で『NBA Top Shot』という、スポーツ選手のカードを使ったゲームが出始めたあたりから、チームを作って本気で検討を始めたという背景があります。」
ーーーKLab社様はスポーツ系のトレーディングカードを数多手掛けてきた過去があるとお伺いしております。確かに近しい部分を感じるところはあります。
真田「そうですね。野球もやりましたし、サッカーもやりました。スポーツ系のトレーディング要素のあるカードについては、我々の得意ジャンルです。ですので『こういうブロックチェーンゲームが流行するんだったら、我々も作れるのでは?』と思ったのが正直なところです。」
真田「更に、ここに日本のソシャゲで培った知恵と工夫を注入したら、もっと面白いものができるんじゃないか?」
真田「…と思って、本腰入れて取り掛かった、という経緯があります。」
ーーーかくして、GameFiないしはブロックチェーンゲームの世界に乗り出した訳ですね。
ーーー今回は貴社がリリースを予定している『Quizo.ooo』についてお伺いしますが、そちらのゲームのプレスリリースの中で、現状のGameFiについての分析を記載していらっしゃいます。
ほとんどの「Play to Earn」「X to Earn」サービスは、ユーザーは利用開始時等にNFTを購入し、利用に応じてトークン(仮想通貨)を報酬として受け取るという仕組みになっています。
しかしながら、「Play to Earn」「X to Earn」においては、トークンやNFTの価格が急落するという問題が頻発しています。トークンの発行や償却、価格維持など全体の調和をトークンエコノミクス(トークン経済圏)と呼びますが、報酬としてユーザーに付与するトークンの原資がNFTの販売収益に依存しているなど、トークン経済圏の設計そのものに問題があるとの分析もあります。
そこで、持続可能なWebサービスを開発するためには、既存の「Play to Earn」「X to Earn」とは異なる経済圏設計が必要であると考えています。
そのような背景のもと、Learn to Earnサービス『Quizo.ooo』の開発が進められています。
ーーーずばりお聞きしますが、持続的なWebサービスを目指すにあたって『Quizo.ooo』はどんな仕掛けがあるのでしょうか?
真田「色々工夫はあるのですが…まず、グローバルなマーケットを狙っているということです。」
真田「KLab株式会社自体が、そもそもグローバル志向を持っているのですが、ブロックチェーンに関しては、今までのゲームよりもより一層、国内市場に閉じずにグローバルなマーケットで勝負できるなと感じてます。」
真田「そして、グローバルマーケットで勝負していくときに、ブロックチェーンゲームをビジネスとしてどうやっていくかを広く考えた結果、クイズというサービスをやることになりました。」
ーーーリリースの中でも、英語から出発して多言語展開されると記載がありましたね。
ーーーゲームというものは、ユーザーの母数を増やしていかないと成立せず、そのためのグローバル戦略なのかなとご推察いたします。
真田「そうですね。あとは、ユーザー数を増やし続けるという観点から言うと、NFTを買わなくても無料で始められるような構想を持っています。」
真田「現状、多くのブロックチェーンゲームは先にNFTを購入しないと遊べないものが多いです。しかも、その中にはウン万円、下手したらウン十万円のを買ってからじゃないと遊べないものもあります。」
真田「これはユーザーからしたら『どんなゲームだかよくわかんないのに、NFTを先に買わないといけない。』と映りますし、しかもそのNFTを買うためには、ゲームによってブロックチェーンが決められていて、そのチェーンのトークンを買わないといけなくて、そのトークンが日本では売ってなくて、海外の暗号資産取引所の口座、例えばバイナンスさんとかに口座開かなくてはならない。これだけでもハードルが高い。」
ーーー手順を聞くだけでもめまいがしますね笑
真田「そうでうすね。それで、更にトークンを買うためには、そこから更に暗号資産取引所で暗号資産を買って、それをゲームに対応した暗号資産に変えてNFTを買う。かなりハードルが高いです。ウォレットを持っていない人は、その前に更にウォレットをダウンロードして使い方を学ぶっていう手間もある。初めてのユーザーは、もうゲームやる前に心が折れちゃうと思うんですよ。」
真田「なので、我々は『ブロックチェーンゲームとかやったことないし、ビットコインのような暗号資産も持ってないし、メタマスクも持ってない』という人が気軽に遊び始めることができて、それでちょっとでもゲーム内通貨を稼ぐことができる、ということを入口にして遊んでいただきたいと思っています。もちろんこの段階では、今までのソシャゲでいう『石』ですね。現実世界に持ち出すことはできない。」
真田「そして、ゲーム内通貨がちょっとたまってきたら、『交換してみたい』と思いますよね。その段階で初めて、メタマスク等のウォレットを作成していただいて、諸々のアカウント作って、ゲームのトークン、つまり仮想通貨と交換していただく。最終的にはそのトークンを上場している暗号資産取引所などで日本円に交換できるようにしていきたいと思っています。」
真田「こういった『まず遊んでみる』ことができる状況を作ることが、ブロックチェーンゲームのユーザー数を増やしていくためには必要だと考えています。」
ーーーユーザーからしても「無料で始められる」ことは、今までのソーシャルゲームで「慣れて」いるので、心理的ハードルが更に下がりそうですね。
学んで稼げる「Learn to Earn」の「外貨獲得力」
真田「次のポイントとして、我々は「外貨獲得」と呼んでいるのですが、経済圏の外からの収入を作っていこうと考えております。」
真田「外貨とは何ぞやという話なんですけど、運営会社である我々でもなく、ゲームのユーザーさんでもなく、その外から稼いでくるお金です。そういった『外貨』を稼いでくる仕組みをしっかり作ろうとしています。」
真田「今でも、いわゆるスーパーカジュアルのゲームって、少しプレイするたびに広告が出てきて、運営会社さんはその広告で収入を得ています。この要素を入れたい。だって、おかしいじゃないですか。我々はNFTを買わない人、一円も払っていない人に先にお金を渡そうとしている。そのお金どこから出すのっていう話になりますよね。」
真田「その一つの答えとして、申し訳ないですけど広告ですと。別の言い方をするとポイ活に近いですね。」
ーーーなるほど、外貨を稼いでくることによって、NFTの売上や通貨の値上がりに依存しない、ある種安定的な「X to Earn」になる訳ですね。
真田「そうですね。そしてここからが面白いところです。なぜ我々が学んで稼げるクイズゲーム、『Learn to Earn』を作るかと言うと、クイズは非常に広告と相性が良いからです。」
真田「今世の中にある広告は、ターゲティングを必ずしています。例えばSNSの広告だったら、そのSNSに登録している情報をもとに、どこに住んでいる何歳の男性にこの広告を表示させる、みたいなターゲティングをする訳です。あとは、普段見ているウェブサイトやどんな広告をクリックしたか等ですね。そういった広告は、ある種その広告を見る人とも親和性が高いから、あんまり不快に思われないことが多い。」
真田「我々は、これを『どんなクイズに正解したか』という切り口でやりたいと思っています。」
ーーーなるほど。どんな種類のクイズに正解傾向なのかが分かれば、その人の興味関心が分かる訳ですね。
真田「そうですね。例えばあるユーザーAさんがいて、Aさんはアニメのクイズはかなり高い精度で正解すると。そういう情報があれば、そのユーザーAさんは、高い確率でアニメが大好きな人な訳です。そういう人には、アニメの広告を流すと。」
真田「逆に、アニメの問題を1問も正解できていない人にアニメの広告流しても、あんまり効果は見込めませんよね。そういったターゲティングと、クイズは非常に相性が良いと考えています。」
ーーー詳しい説明をお聞きすると、クイズと広告の相性が良いというのは、非常に納得できるお話です。
真田「あとは、スポンサークイズ、みたいなものも考えています。例えば、商品Xの広告主さんがいたとします。ある一定の期間に『商品Xについての特別クイズ!』みたいなものを出します。こうすることで、ユーザーに商品Xについて知ってもらうこともできます。」
ーーー確かに、普通に商品の特徴を見るよりも、クイズ形式で自分で考えたほうが記憶に残る広告になりそうですね。
真田「それ以外にも、色々な『外貨獲得』の手段は考えております。いわゆるソシャゲの「アイテム課金」の仕組み、具体的に言えばアバター機能ですね。」
ーーーアイテム課金やアバターというのは本来「Earn」ではなく「Fun」のためであり、「いくら稼げるか」とは別軸ですからね。どんな形で「Fun」と「Earn」が両立するのか楽しみです。
真田「ぜひご期待ください(笑)我々としては、やはりユーザーさんが大事。ユーザーさんが損をして終わる、というゲームにはしたくない。そのために、様々な手段を講じていきたいと考えております。」
全ての始まりは「一回、すべてを疑ってみる」こと
ーーー少しゲームタイトルから離れた、GameFiを生むにあたってのヒストリー的なところもお伺いしたいです。
ーーー新しいことに意欲的なゲームクリエイターさんの中には、いわゆるGameFiに関心がある方もいらっしゃると思います。
ーーーアプリゲーム、いわゆるソシャゲを作ってきた人が、ブロックチェーンゲームの世界でものづくりをするにあたって、どういう壁がありましたでしょうか?
真田「結局、今までのソーシャルゲーム・モバイルゲームと、ブロックチェーンゲームで、違いがある職種って実は限られています。例えば、Web2の世界では存在しなかった『トークンエコノミクス』まわり。トークン周辺の企画をする人とトークン周辺の開発をする人は、深い知見が必要になってきます。ですがそれは、全体の比率からすると大体2割くらいで、他の8割の人はたぶん、今まで通りなんですよ。」
真田「先ほどお話しました通り、私たちのやろうとしていること、特に広告の部分は、いわゆるメディアさんや、スーパーカジュアルのゲームタイトルさんがやっている事に近いことをやろうとしている訳です。」
ーーーなるほど、逆にトークン周りの専門的な部分は、どういった方が担っていかれているのでしょうか?
真田「我々は、今までのブロックチェーンゲームの常識を『一回すべて疑う』ことから始めました。なので、トークンまわりの企画をする人は、いわゆる経済の知見が深い方で、トレーダーみたいな人ではない。経済圏というのは国家に近い部分がありますから、純粋に『国家の貨幣の供給量を増やしたら何が起こるのか』みたいなことをテーマにしてディスカッションして、もっと根本的な経済概念の設計みたいなことをやっていました。」
ーーーそのお話を聞くだけでもう、全く新しい発想で企画されたGameFiなのだと感じます。
真田「あとは、開発の部分については、ブロックチェーンエンジニアがどうしても必要になります。ですがそれも、ゲームタイトルのすべてをブロックチェーンで開発する訳ではないので、特にクイズの部分の開発は、ぶっちゃけブラウザゲームを作れる人でしたら作れてしまうんですよ。」
真田「もちろんオンチェーン部分を触る人、もっと言えばゲームの基本設計を作る人は『ここはブロックチェーンに書こう』『ここはサーバーに格納しよう』という判断をする訳なので、ブロックチェーンへの深い理解が必要です。ですが、基本設計をしたあと、コードを書いて実装する部分は、Unityを使う訳でもなく、ブラウザゲームの知見で作れてしまう。」
真田「我々の会社においては、そういった開発思想でやらせていただいております。だから我々『Web2.5』って言っているんですけどね…笑」
ーーーWeb3とWeb2の中間、といった意味でしょうか?
真田「そうですね。私たちはブロックチェーンゲームを開発しておりますが、別にすべてをオンチェーンで開発しなくてはいけないとは考えておりませんし、ウォレット持っていなければ何も始まらない、というようなゲーム設計にもしたくありません。Web3の発想的にはそっちのほうが純真無垢かもしれませんが、ユーザーさんがついてこれない。」
真田「開発部分でもそうで、何のチェーンを使うかによりますが、フルオンチェーン(すべてをブロックチェーンで開発すること)にするよりもデータベースで記録したほうがメリットがあることもあります。」
真田「仮に私たちのタイトルをフルオンチェーンにした場合、そのチェーンが混雑したら『クイズ答えているのに正解か不正解か返ってこないみたい』なことが発生する訳です。これはもう、私共の努力ではいかんともしがたい。その点、データベースだったら『ユーザーさん増えたからデータベース増やそうか』といった具合に当社側でコントロールできる。(今の開発環境とブロックチェーンの状況だと)オフチェーン、データベースを使うことで、結果的にユーザビリティが良くなることもあると思います。」
ーーー御社のような『Web2.5』の発想でタイトルを開発していらっしゃる会社様は、ブロックチェーンゲームに関心のあるゲームクリエイターにとっては嬉しい環境ですね。
真田「そうですね。既存のゲームスキルがあれば、当社に来ていただいて、オフチェーン部分を開発しながらオンチェーン部分も勉強していく、みたいなことができます。なので、クリエイター側からしてもキャリアチェンジできる可能性はある環境だと思います。」
ーーー本日はありがとうございました。いちゲーマーとしても『Quizo.ooo』のリリースがより楽しみです。
『Quizo.ooo』だけじゃない?! 今後のタイトルにも期待!
現在発表されている情報では、ブロックスミス社はThirdverseグループとWeb3及びブロックチェーンゲームの開発・運営に関する基本合意を締結しております。
ですが一方で、冒頭の『Quizo.ooo』のリリースの中では「Thirdverseグループと開発しているタイトルとは別タイトルです」と記載がございます。
『Quizo.ooo』以外にも、ブロックスミス社が新しいタイトルをリリースする可能性は、非常に高いです。
常識を疑い、ユーザーに寄り添う。ブロックスミス社の今後のタイトルから、目が離せません。
KLab株式会社取締役会長。
関西学院大学在学中の19歳から4回起業。
1997年、ACCESS Inc.在籍当時、iモードの仕様策定や開発を担当した後、1998年に世界初のモバイル専門のコンテンツプロバイダ 株式会社サイバードを設立。
2000年にIPO。株式会社ケイ・ラボラトリー(現KLab株式会社)を設立、代表取締役CEOに就任。
2011年KLab株式会社をIPO。2019年から現職に就くと共に、KLabの非ゲーム新規事業をMBOするなど、スタートアップ企業の設立・経営・育成等にも携わる。