DMMグループが手がけるweb3経済圏『Seamoon Protocol』|DM2C Studio CEO 加嵜様
DMM.comの子会社であるDM2C Studioは、昨年web3経済圏『Seamoon Protocol』を発表しました。
独自のトークン・独自の経済圏を設計し、「サステナブルなエコノミクス」をテーマにした本プロジェクト。今回はプロジェクトの鍵を握る加嵜様に、『Seamoon Protocol』について、詳しくお話を伺いました。
グループの強みを活かして構築するweb3経済圏『Seamoon Protocol』
ーー本日はよろしくお願いいたします。
ーーまずは、御社が先日プレスリリースされた『Seamoon Protocol』について、概要を詳しくお聞かせください。
加嵜(かさき)様(以下、加嵜と表記)「もともと、DMMグループでは以前より取引所やマイニングなど、様々な暗号資産関連のプロジェクトを進めておりました。」
加嵜「その流れの中で今回、独自の暗号資産を発行し、経済圏の形成を主な目的とするプロジェクトを立ち上げました。その構想をまとめたデジタル経済圏が『Seamoon Protocol』です。」
ーーDMM様といえば、日本の中ではかなり大手のプラットフォーマーでいらっしゃいますが、従来の知見やアセットもフル活用して『Seamoon Protocol』を展開されるのでしょうか?
加嵜「はい。そもそもグループとして様々な事業を展開しておりますので、多様性を活かした展開を行おうと思っています。」
『暗号資産』だけでなく『外貨』と『サービス内通貨』も活用する経済圏
ーーweb3経済圏を作る際には、継続性に注目される方が多いかと思います。『Seamoon Protocol』では、どのような方法で持続可能性を形成するのでしょうか?
加嵜「前提として、経済圏の持続性を考える時には『経済圏の中に入ってくるお金』と『経済圏から出ていくお金』のバランスが大事だと思います。」
加嵜「その前提のもとに既存のweb3経済圏のプロジェクトを見てみると、『入ってくるお金』の部分をNFTや仮想通貨などの暗号資産で全てを賄おうとしていたプロジェクトが多いように感じられます。その結果、価格が安定せずに崩壊してしまうケースが多いかと思います。」
――暗号資産のボラティリティの大きさ(価格の変動が大きいこと)は、大きな成長をもたらすメリットでもありますが、崩壊をもたらすトリガーでもありますからね。
加嵜「そうですね。『Seamoon Protocol』では、暗号資産で経済圏の全てを賄おうとは考えていません。多様な方法で、経済圏に入ってくるお金と出ていくお金のバランスを保とうとしています。」
加嵜「こちらは『Seamoon Protocol』のホワイトペーパーに、『国際金融のトリレンマをカバーする経済圏の構築』というテーマで書いた表です。」
加嵜「『暗号資産』は何も担保せずに発行ができ、様々なところで相互交換ができる自由度の高い通貨です。しかしその反面、価値の安定が困難という特徴があります。」
加嵜「そこで、無理に一つの通貨(暗号資産)のみで全てを賄おうとするのではなく、既存の『外貨』やサービス内の『ポイント(サービス内通貨)』を組み合わせた経済圏にすることで、サステナビリティを保つ戦略にしています。」
ーーなるほど。今仰った『ポイント』は、御社が手がけているポイントサービスとの連携もできるのでしょうか?
加嵜「はい、そうですね。『ポイント』もですし、ゲームの『課金石』など、弊社がコントロール可能な『サービス内通貨』を組み合わせて展開する予定です。」
ーー『Seamoon Protocol』はただのプロダクトではなく、大きな経済圏であることが実感できました。色々な通貨を組み合わせることで、サステナブルな経済圏を構築していくのですね。
加嵜「はい、そうですね。あとは、色んな人の『暗号資産を作る』ことに対する意識を変えたい想いもあります。」
――『暗号資産を作る』ことの意識、ですか。
加嵜「はい。ブロックチェーンが誕生し、ビットコインをはじめとする各種の暗号資産が生まれました。そしてそれらの暗号資産が、各種交換所や取引所で法定通貨、つまり円やドルに交換できるようになりました。」
加嵜「このムーブメントを突き詰めると、暗号資産の誕生は自分たちで新しい通貨を作れるということに他なりません。これは『お金』という概念に対する大きな変化です。」
――なるほど。
加嵜「現代のお金に対する考え方として、誰かが儲かれば誰かが損をするような設計が前提としてあると思います。お金の総量は一定で、努力した人や勝った人が多くを得られる、というモデルです。」
加嵜「でも、これは少し事実とは異なっていると思います。『日本円』も、『アメリカのドル』も、上限発行額などはなく、国の判断で世の中に供給されます。世界のマネーサプライはどんどん増えているのです。」
加嵜「しかし人々の感覚としては、財産やお金は限られているもので、持っている人からもらわなければならない、という考えが染み付いてしまっています。」
加嵜「私は、デジタル経済圏『Seamoon Protocol』を構築すること、暗号資産を発行することによって、財産やお金の本来のあり方を世の中に今一度示したい。そういう想いを思っています。」
――世界の財産の総量を、テクノロジー的に増やせることが、web3やブロックチェーンの大きな強みであることを改めて理解できました。
汎用的な『モデル形成』を狙う
ーー『Seamoon Protocol』を通じて実現したいことについてお聞かせください。
加嵜「私たちが『Seamoon Protocol』を通じて行うチャレンジが、今後、新しく独自の暗号資産を発行したい方たちにとってのロールモデルになれば良いなと思っています。」
加嵜「サステナビリティの問題はweb3業界共通の課題だと思いますので、解決法を一緒に模索したいと思っています。『我々ではないとできない』といった特殊性を狙うよりも、汎用的なモデルの形成を模索しています。」
――企業様がweb3を導入するにあたっての、『モデル形成』を目指されているのですね。
――『DMM様だからこそできる仕組み』ではなく、多くの企業様が参考にできる汎用的なものを生み出そうとしていることが分かりました。
ーー汎用的な『モデル形成』のために、多くの方が参入できるような環境作りは意識されていますか?
加嵜「はい。我々はプラットフォーマーですので、多くのサードパーティのゲーム会社さんを『Seamoon Protocol』へ誘致しようとしています。ですが、サービス内で我々のトークンを使うことは強制していません。」
加嵜「既に各社のゲーム内で、独自通貨を発行されているケースも多くあるかと思います。そのような企業も幅広く受け入れられるような設計にしています。」
web3の入口として「ゲーム」を据える
――『Seamoon Protocol』は、巨大な経済圏構築を目標としつつも、まずはGameFi、つまりは「web3×ゲーム」の領域から着手することを発表しております。
――敢えてGameFiを入口として据えた理由をお聞かせください。
加嵜「DMMのこれまでのノウハウと、web3ゲームの親和性が高いことが、最初にゲームから着手を始めた理由です。前提として、私たちDMMは、『ブラウザ』中心のゲームを提供してきました。」
加嵜「一方、GamFiはどうか。現行のGameFiのほとんども、ブラウザで遊ぶタイプのゲームです。これは色々な理由があってブラウザでのリリースになっているのですが、とにかく実態としては、ブラウザゲームが多い。」
加嵜「この、ブラウザゲームとDMMの親和性が、私たちがゲームから着手する理由の一つ目です。」
――仰る通り、現在のブロックチェ-ンゲームの多くは、Webブラウザで動くゲームですね。
加嵜「加えて申し上げると、私たちは今までのゲーム事業の経験の中で、ユーザーの行動分析をずっと行ってきました。」
加嵜「特に、ユーザーの行動を促進させる設計手法である、『エコノミクス設計』や『レベルデザイン』のノウハウは、『Seamoon Protocol』のトークン経済圏を構築するにあたって、とても有用です。」
加嵜「その知見を活かしたいという意味でも、『Seamoon Protocol』の導入としてゲームを用いることに決めました。」
――なるほど。ユーザー分析における高いノウハウをお持ちである御社ならではの活用法ですね。
加嵜「そしてもう一つ、理由があります。それは、ユーザーが『web3に触れる最初のタッチポイント』として、ゲームは効果が高いと考えているためです。」
加嵜「『Seamoon Protocol』では、既にweb3のゲームを遊んでいる方だけではなく、ウォレットを作った経験のない方や、web3のことがわからない方もターゲットにしています。」
加嵜「ゲームを入口にして、web3に気軽に参入してもらうことと、簡単に遊べる環境を提供することを重視しています。」
――web3に触れた経験のない方たちを、経済圏の中に取り込んでいこうと考えた理由をお聞かせください。
加嵜「今の日本の人口の中で、暗号資産を買った経験のある方や、自分でウォレットを作った経験がある方は3%程度しかいらっしゃいません。」
加嵜「その3%のユーザーを、web3事業者の間で奪い合うよりも、web3のプレイヤーさんたちとタッグを組み、web3に関わるユーザーの総数自体を広げていきたいからです。」
加嵜「現状のweb3の状況を見ていると、限られたパイを奪い合う競争は、限界を迎えていると思っています。」
――web3市場全体を見たときに、非web3ユーザーを取り込んで、ユーザーの母数自体を上げることが重要だと考えたのですね。
多彩なゲームジャンルを展開し、新規ユーザーを増やす
――新規ユーザーを多く『Seamoon Protocol』に誘致するために、GameFi(ゲーミファイ)の領域から着手されるとのことでしたが、具体的にはどのような流入経路を作られるのでしょうか?
加嵜「ゲームバリエーションを豊富にすることを軸に考えています。ゲームには様々なジャンルがあると思います。カジュアルなゲームが好きな人もいれば、RPGが好きな人、対戦や対人ゲームが好きな人もいるかと思います。そのため、様々なジャンルのゲームをラインナップする方向性で進めています。また、ゲーム以外のプロダクトへも参入しやすくなる仕組みも考えています。」
――ゲームを入口にして、ゲーム以外のエンタメプロダクトにも拡大していく方向性なのですね。
加嵜「具体的には、ゲームとの親和性が高い『アニメ』『漫画』『フィギュア』などのプロダクトへの展開を計画しています。なぜなら、経済圏を構築するためには『価値の交換』が必要だからです。」
加嵜「親和性の高いジャンルから拡大していくことで、ユーザーにとってわかりやすく、浸透しやすい環境を提供できると同時に、経済圏を拡大しやすくなると考えています。」
エンタメに費やした価値は"半永久的"
――『価値の交換』というワードが出ましたが、具体的にはどのようなイメージでしょうか?
加嵜「この『価値の交換』は、『価値の移転』と言い換えることもできます。具体的には、今まで一つのプロダクト内でしか使用できなかった価値や財産を、異なるプロダクト間で自由に往来できるようにする、という発想です。」
――つまり『Seamoon Protocol』では、特定のゲームのキャラクターNFTは他のゲームでも利用でき、特定のトークンを持つユーザーは他のサービスでも特典を享受できるということでしょうか?
加嵜「おっしゃる通りのイメージでエコノミクスを開発しています。」
加嵜「例えば、教育系ゲームなどでは、ゲームを遊びながら身につけた知識やスキルを、現実世界で活用できるかと思います。それと同様に、ゲーム内で培ったことを現実世界に活かせる仕組みづくりを、ブロックチェーンの技術(『Seamoon Protocol』)で促進させたいと思っています。」
加嵜「ゲーム内アイテムは、自分が培った経験や費やしたお金、時間の結果を表すものであると思います。それが一つのゲームに閉じ込められてしまうことや、サービスの終了とともに消えてしまうことを解決したいと思っています。」
加嵜「これはアイテムに限った話ではなく、例えば、ゲーム内でフレンドになった人たちと外でつながることなどもできるようになります。」
――なるほど。私も一人のゲームユーザーとして、ゲームやエンタメに費やした時間やお金が、半永続的に担保できることは嬉しいな、と率直に思いました。
――加嵜様は、web3のみではなく、経済にも非常にお詳しいようにお見受けします。
加嵜「実は私は元々、経済学部を志望しておりまして、貧困問題やフェアトレードを専門に研究したいと思っていました。」
加嵜「しかし、自分が得意だったのは、コンピュータサイエンスやプログラミングといった領域でした。そのため、まずはそれらの領域で専門的なスキルを身につけることを選択しました。」
加嵜「その上で自分が学んだ専門技術を活かし、元々興味のあった貧困問題や経済の課題を解決したいと考えていました。」
加嵜「そんな折に暗号資産という概念が登場し、『プログラム可能なお金』であることにとても惹かれました。」
――元々は経済にご関心があったうえに、エンジニアでもいらっしゃる。
――加嵜様は『Seamoon Protocol』のプロジェクトに最適な素養を全て持っていらっしゃる方だと感じました。
多様な事業を持つDMMならではの強み
――『Seamoon Protocol』は、非常に壮大なプロジェクトであるとお見受けします。web3のプロジェクトでは、壮大な計画を描いたものの、軌道に乗らないことも多く、ユーザーが懐疑的な姿勢をとることもあると思います。
――そのような背景を踏まえつつ、『Seamoon Protocol』ではどのような展開が期待できるのか、具体的なビジョンや想いをお聞かせください。
加嵜「はい。もし個人でweb3のプロジェクトを始める場合であれば、私ももっと小さなスケールから始めるかと思いますが、最初から壮大なスケールでビジョンを描けることが、DMMがプロジェクトを行う意義です。」
加嵜「多様な事業展開によるDMMの既存のアセットや、それを背景とするユーザベース、資本などを活用すれば、『Seamoon Protocol』は十分に実現可能なチャレンジです。」
――ユーザー数が既に多くいらっしゃることは、御社の大きな強みであると感じます。
加嵜「はい。ただ、やはり弊社だけ、1社だけだと難しいことも当然あります。なので、パートナーシップの強化には力を入れており、今後もどんどん『Seamoon Protocol』へ参画する企業を増やしていきたいと思っています。」
加嵜「そのためにも、『Seamoon Protocol』のトークン設計が活きると思います。『お互いのトークンを持ち合いながら、価値を上げていける』そういったメリットのある設計が『Seamoon Protocol』の特徴です。」
加嵜「DMMの強みを皆さんにも提供しながら、お互いにユーザーのパイを広げていければと思います。」
『人と人が支え合う経済圏の構築』を目指す
――最後に、『Seamoon Protocol』の今後の展望をお聞かせください。
加嵜「こちらもホワイトペーパーに記載しておりますが、将来的にゲーム以外に『Seamoon Protocol』の領域を広げる際に、(ゲームだけではない)エンタメ領域への展開を構想しています。」
加嵜「エンターテイメントは元々、『お互いの間を取り持つ』『お互いに支え合う』という意味が語源としてあり、そこから今の娯楽という意味に派生しています。」
加嵜「我々はそのエンターテイメントの語源に立ち返り、単純な娯楽としてだけでなく、その先で、地方創生やエネルギー事業、教育事業まで手がけたいと思っています。私たちのサービスは『人と人が支え合う経済圏の構築』を目指して、今後も取り組んでまいります。」
――御社が幅広い視野で世界を見られていることがとてもよく伝わりました。サービスのローンチを楽しみにしております。本日はありがとうございました。
各種リンク
・『Seamoon Protocol』公式ページ:https://seamoon.dmm.com/
・『Seamoon Protocol』ホワイトペーパー:https://docs.seamoon.dmm.com/whitepaper
・『Seamoon Protocol』日本公式 X(Twitter):https://twitter.com/Seamoon_JP
・『Seamoon Protocol』グローバル公式 X(Twitter):https://twitter.com/SeamoonProtocol
引用元:https://docs.seamoon.dmm.com/whitepaper/vmv