ゲーム業界に20年。コンテからキャプチャまで手掛ける一気通貫の3DCG開発|株式会社D1-Lab様 インタビュー
モーションキャプチャー技術による高品質な3DCGを数多く制作し、誰もが知る有名タイトルを世に送り出してきた株式会社D1-Lab様。
CG制作の秘訣やXR(AR)事業の詳細や、同社の強みを、同社取締役の古賀様と堀口様に伺いました。
※株式会社D1-Lab様は、2024年10月に株式会社ディーワン様と株式会社MetaLab様が合併・社名変更した会社です。
ゲーム×3Dムービーのスペシャリスト
ーー本日はよろしくお願いいたします。
ーー古賀様と堀口様は、御社の柱としてご活躍されているとお伺いしております。お二方の経歴についてお伺いさせてください。
古賀様(以下、古賀と表記)「ディーワン代表の半澤と私は学生時代からの友人でして、ディーワン立ち上げ当初は、ゾンビで有名な某ゲームのリメイクを出すにあたって、イベントムービー制作などを行わせていただいた経験があります。もう20数年前の話にはなりますが、そのムービー制作の途中でディーワン社を立ち上げました」
ーー誰もが知る有名タイトルですね。20年も前のお話とのことでしたが、逆に言うと、それほど前からムービー制作という部分に携わっているということですし、御社の業界内での歴史を感じました。
ーー古賀様は当初から、大手ゲーム会社からお仕事を受注できるくらい凄腕だったのですね。
古賀「ありがとうございます。その後も、先ほど説明しましたタイトルの運営会社さんとのお仕事を継続させていただきつつ、様々な会社さんのゲーム開発に携わらせていただきました。なかでも、中国の三国志や日本の戦国時代を舞台とした合戦ゲームのシリーズに多く関わらせていただきました。」
ーー当時も3DCGの制作をされていたのですか?
古賀「はい。当時はまだ競合が多くない分野だったのですが、弊社は立ち上げ当初から、モーションキャプチャーによるイベントムービー制作をしていることが特徴でした。」
古賀「私が3D制作を始めた当初は、『光学式』の機材が登場した頃でしたが、当時はまだ試行錯誤しつつ、モーションキャプチャーによるCG制作のお仕事を受けていました。」
ーー20年以上前からモーションキャプチャーの技術があったことに驚きました。その他にも関わった作品はございますでしょうか?
古賀「今でも根強い人気のある、任侠を題材にしたゲームシリーズには、かなり初期の作品から近年まで継続して携わらせていただいております。」
ーーやはりお話を伺っていても、ゲーム業界の中で幅広くご経験を積まれている方なのだな、と感じました。
国を問わずチームを拡大できるマネジメント力
ーー堀口様のご経歴もお聞かせください。
堀口様(以下、堀口と表記)「はい。私がディーワン社に参画したのは2015年です。以前は別の会社で、スマートフォン向けアプリの開発を日本とタイで行っておりました。」
堀口「ディーワン社も当時からタイにCG制作チームを持っており、『現地を取りまとめられる管理監督の人材を探していた』ことに加え、『アプリケーションの開発やARを使ったシステム作りをやりたい』という意思が、(ディーワン社代表の)半澤と私で一致したため、参画いたしました。」
堀口「ディーワン社では、ゲーム開発と親和性の高い『Unity』でAR/VRのイベントや店頭のデジタル什器、スマホアプリなどの開発を行っています。」
ーーありがとうございます。タイでは何名のチームを動かされていたのでしょうか?
堀口「最初は4〜5名程度だったチームに私が入り、アプリケーション開発のチームを立ち上げました。その後間もなく、15名程度のチームになりました。」
ーーとても早くチームを拡大されたのですね。
ーー堀口様がお力を入れていたのは、AR領域とアプリ開発、どちらになのでしょうか?
堀口「私は、モバイル端末でインターネットコンテンツを楽しめるサービスが始まった時代から開発の経験があるので、主に携帯向けのWebサイトやアプリ開発から体制を作っていき、徐々にAR/VR等の開発に範囲を広げていきました。」
上流工程から一貫して対応できる制作力
ーーそんなお二人が柱としてご活躍されている、D1-Lab社のサービス内容をお伺いできますでしょうか?
古賀「ゲームのイベント制作や、ソーシャルゲームのダンスモーションなど、CG制作の業務がメインとなっています。また、それに関連して『モーションキャプチャースタジオ』を立ち上げまして、そちらでも事業を行っております。」
ーーなぜ『モーションキャプチャースタジオ』を立ち上げられたのでしょうか?
古賀「スタジオを立ち上げたのは、3DCG制作の上流からご一緒させていただくことで、デザイナーがクライアント様の希望する演出をより深く捉えられるようにするためです。」
ーー上流工程から携わるとなると、具体的にはどのような形になるのでしょうか?
古賀「モーションキャプチャーの収録時には役者さんへの演出の伝達があるのですが、収録時に参加できてない場合、本来意図したものとは異なる動きになっているのかどうかがわからなかったり、情報にタイムラグが出たりしてしまうことがあります。」
古賀「そこで、モーションキャプチャーを撮るところから携わらせていただくことによって、『この動きには、こういう演出意図があるんだ』と私たちの理解が進みやすくなると同時に、それらを役者さんとも共有することができます。」
ーーCG制作の流れとして、モーションキャプチャーを撮る工程が上流にあるのですね。
古賀「はい。まず最初に字コンテがあり、それを絵コンテ化したものを、撮影でモーションキャプチャーデータにします。その後、CG制作会社に発注が行われていくことが主流となっております。」
古賀「キャプチャースタジオを持っていない時は、撮り終えたデータから制作を行なっていましたが、スタジオを持つことによって、より開発の全体像を捉えられるようになりました。」
ーーCG制作では、前段階のモーションキャプチャー撮影から行うことが重要なのですね。勉強になりました。
企画からUI設計まで、一貫した制作力が強み
ーー以前に比べ、3DCGの開発を行う企業が増えてきたと思います。その中でも御社の強みとなる部分について、詳しく教えてください。
古賀「弊社はモーションキャプチャーをベースにしたCG開発を得意としています。それに伴い、イベント系のムービーや、ソーシャルゲームのダンスモーション制作においては、他社にはないノウハウを持っています。」
ーーありがとうございます。堀口様からもありますでしょうか?
堀口「はい。私からはシステム開発の視点からお伝えします。一般的なアプリケーションでは、比較的シンプルかつ単調でややわかりにくいユーザーインターフェースが多いと思います。しかし弊社では、Unityやゲームで使われるようなハイクオリティのCGを活用し、よりグラフィカルで直感的な、親しみやすいユーザーインターフェースを提供できます。」
堀口「また、常に新しい技術は積極的に取り入れる姿勢でいます。制作するアプリケーションやコンテンツは、AI等の新しい技術や、センサーなどのハードウェアを組み合わせて新しい驚きや体験を提供できるようなものにしたいと思っています。」
ーーありがとうございます。『高品質なUI』と『新しい技術を積極的に活用されていること』が、システム開発における御社の強みなのですね。
ーーこれまでのお話を聞いていて、企画設計からCG制作、UI設計を上流から下流まで一貫して行えるのは、御社ならではの強みだと感じました。
3Dの技術力を活かした多方面への展開
ーー一方で、御社はAR開発など、システム開発についても深い知見をお持ちかと思います。
ーーそちらの事業のお話についてもお伺いできますでしょうか?
堀口「システム開発にはいくつかのジャンルがあります。一つは、先ほど申し上げたARやVRなどのXR系のアプリケーションの開発です。これはスマートフォンやPC、VRゴーグルを使って楽しむコンテンツになります。」
堀口「また、イベント向けのデジタルアトラクション開発も行っています。『体を動かして楽しめる、インタラクティブなアトラクションをイベント会場でやりたい。』というお客様向けに対し、イベント会場や、結果を持ち帰ってイベント終了後も来場者の方に楽しんでもらえるような体験型コンテンツを制作しています。」
堀口「ARに着手した当時は、ちょうど携帯電話がスマートフォンに代わりつつある時代でした。モバイル端末の性能やカメラ機能が向上したことで、現実世界とデジタル世界の融合ができるようになった時期でしたので、ARには私もとても興味がありました。」
堀口「スマートフォンを通してARを実施することも多いので、モバイルコンテンツの制作とは親和性が高いですし、反対に、イベントで大がかりな機材を通して提供できることにも魅力を感じています。」
堀口「さらに、店舗向けのデジタル什器開発も行なっています。お店の商品陳列の什器にインタラクティブな仕組みを入れることで、商品の販売促進につなげたり、DXの観点から顧客の行動履歴を分析できるソリューションを開発し提供しています。」
堀口「ご紹介したシステム開発の事業は、先ほどの『ゲームCG開発』とはだいぶ印象が異なるかと思いますが、UI(ユーザーインターフェース)やコンテンツの作成は3Dで行っておりますので、非常にシナジーは高いです。」
堀口「お店に置いてあるデジタル什器も、グラフィックを綺麗にして印象に残りやすくしたり、直感的に操作できるUIをUnityを使って実装したりしています。」
ーーARのシステム開発以外にも、多くを手がけられているのですね。
堀口「はい。システム開発事業のスタートは、AR・VR系のアプリケーション開発でしたが、新しい技術を利用することで、様々なシステム開発事業にもアプローチしています。」
堀口「Unityで開発できるアプリケーションやハードウェア、センサーなどを組み合わせて、『何かできないだろうか?』と試行錯誤しているうちに、作れるものの幅が広がりました。」
ーー御社はエンターテインメント領域のご経験を多くお持ちだと思いますが、それだけでなく、様々な領域でのご経験が豊富なのだと思いました。
社内外のコミュニケーションを重視する社風
ーー御社は『制作意図をくみ取り、自力でアウトプットすることのできるスタッフ』を増やすために、『コミュニケーション』に力を入れているとのことですが、それについて詳しくお聞かせ願えますでしょうか?
古賀「コミュニケーションが必要な理由の一つとして、『多様性に対応する』ことがあります。毎日同じ案件をやっているわけではなく、ある日突然、これまでと全く異なる案件に対応するスタッフもいます。」
古賀「その場合、コミュニケーションが取れないと理解が追いつかず作業が進まない状況になってしまうことがあります。そのような自分の置かれている状況をチームで理解するためにも、コミュニケーションはできるだけ多く取りたいと思っています。」
古賀「『全て上から指示を出す』というコミュニケーションはある程度簡単だとは思うのですが、『作業者本人が制作の意図や内容』を理解できていない状態でそれを続けると、お互いストレスになってしまうと思います。」
古賀「『自分自身が作品を作っているという感覚(自覚)』をスタッフ全員が持てるような会社を目指しているため、立場に関係なく、対等に物事をやり取りできることが、弊社の目指しているところです。」
ーー他社からお仕事を受注する際のコミュニケーションと、社内で取るコミュニケーションは異なる部分も多いかと思います。その違いについても詳しく教えて下さい。
古賀「はい。お仕事を受ける際には、先方から様々な手段で伝えていただけることが多いです。言葉だけではなく、絵を書いていただいたり、動画で見せていただけたりします。」
古賀「しかし、先方から受託したものを社内でそのまま見せるだけだと、コミュニケーション不足に陥りがちです。それを解決するため、社内では口頭でのコミュニケーションを大事にしています。」
古賀「これは、コミュニケーションの受け取り手側(スタッフ)の経験不足などにより、偏った印象を持たせてしまうことを防ぐためです。」
古賀「クライアントさんに寄り添うお仕事をするためにも、制作の方向性は社内でなるべく均質化し、『何を作ろうとしているのか』をきちんと情報共有することが重要だと考えています。」
ーー御社は多様な工程や領域のお仕事をされているからこそ、各担当者と認識をすり合わせる必要性が多く発生するのだと思いました。
ユーザーに「届く」エンタメづくりを
ーー御社は10月から新会社として改めてスタートされるということですが、それに合わせて、今後目指していきたいことなどはございますでしょうか?
古賀「気持ちを新たにしつつも、『ユーザーの方にエンターテイメントを届けること』は軸にし続けたいと思っています。」
古賀「これまでも私どもは、多くの有名作品に携わらせていただき、様々な監督やプロデューサーの方々と共に、『ユーザーの方に楽しんでもらえるエンターテイメントを作ること』を軸に活動してきました。」
古賀「野望として、自分たちでIPを立ち上げることも考えていますが、今後も『エンターテイメントをしっかりと作ること』を信条にしていきたいと思っています。」
古賀「社員一丸となって、作品を作っている自覚を持ちながら、ユーザーの方々にしっかりと届くようなエンターテイメントを作りたい想いでいます。」
堀口「はい。アプリケーション開発は日進月歩です。例えば最近では、AI技術が拡大しています。そういった新技術を都度取り入れ、かつ弊社の強みであるCG制作のノウハウを活用することで、より良いコンテンツを、より多くのユーザーの方に届けられるようにしたいと思っています。」
ーー本日はお時間いただき、誠にありがとうございました。
株式会社D1-Labの詳細・各社リンク
- 株式会社D1-Lab 公式:https://d1-lab.com/
古賀 祐次 様
大学在学中にダブルスクールで専門学校にてCGを学びながらティーチングアシスタント業務に従事。
その後、フリーランスとしてアニメ制作の業務に従事した後、株式会社ディーワン(現、株式会社D1-Lab)に参画。
メインデザイナーとして、同社のほぼ全てのコンテンツ制作に関わり、取締役に就任後も全CGコンテンツの監修および制作の陣頭指揮をつとめる。