ゲーム会社への転職 | ゲームシナリオライターの仕事とは
近年、モバイル端末の普及により、ゲーム業界は市場拡大の一途を辿っています。
ゲームの種類もシンプルなものから、複雑なストーリーを追って進めていくものまで様々です。
その中でも、ゲームシナリオライターは、ストーリーの作成に特化して物語を作り上げます。
本記事では、ゲームシナリオライターの仕事内容や必要なスキル、未経験からの目指し方について解説します。
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- 1ゲームシナリオライターとは
- 2ゲームシナリオライターの仕事の流れ
- 2.1①ゲームプロデューサーとの打合せ
- 2.2②プロットを作成
- 2.3③シナリオの執筆
- 3ゲームシナリオライターに向いている人
- 3.1①リサーチ力がある人
- 3.2②粘り強く物事に取り組める忍耐力のある人
- 3.3③流行に対して知見を持っている人
- 3.4④チームワークを重んじることができる人
- 3.5⑤自分の世界観を持っている人
- 4ゲームシナリオライターになるために必要な資格・スキル
- 4.1ゲームシナリオライターになるために必要な資格
- 4.2ゲームシナリオライターの特徴|他のシナリオライターとの違い
- 4.3結論|ゲームシナリオライターに必要なスキル6選
- 5未経験からゲームシナリオライターを目指すには
- 5.1①専門学校へ入学する
- 5.2②ゲーム会社に別職種で入社する
- 5.3③過去の作品を持ち込み、実績をアピールする
- 6ゲームシナリオライターとしてのやりがい
- 7ゲームシナリオライターの今後の需要と展望
- 8まとめ
ゲームシナリオライターとは
ゲームシナリオライターは、ゲーム内のストーリーや登場するキャラクターの設定、セリフなどの「シナリオ」を書く仕事です。その他にも、ゲーム内の舞台設定やミニゲームの筋書きなど、ゲーム開発において発生するテキストにまつわる業務は、ゲームシナリオライターが担当します。
以前までは、ゲームプランナーやゲームディレクターが業務を兼任することが多かったものの、最近はシナリオ考案専任のゲームシナリオライターを配置する会社が増えています。
ゲームのシナリオは、ゲームそのもののクオリティを左右する重要な要素です。
シナリオが単調だったり、面白くないものだったりすると、ゲームのプレイ体験が損なわれるだけでなく、ユーザーの離脱に直結します。
最後までユーザーに没入感を感じてもらうためにも、しっかりと構成を考え、執筆することが重要です。
さらに、昨今のゲームは複雑なストーリーで構成されていることが多く、ゲーム内でプレーヤーが選択したことによってエンディングが異なるケースが増えています。このような場合、各々の筋書きに沿って違和感のないストーリーを書き上げることが求められるため、情報を整理する力が求められます。
ゲーム業界は近年、VRなどの最先端技術や優れたグラフィックを採用するゲームが多く、目覚ましい進化を遂げています。今後もゲーム開発の幅が広がることに疑いの余地はなく、市場のトレンドも日々刻々と変化しています。
その中で、以前と変わらないゲームの重要な要素が「ストーリー展開」です。
いくら最先端技術を活用し、莫大な開発費用をかけたとしても、ストーリーが確固としたものでないと、プレイ体験として評価されるゲームは作ることができません。
シナリオライターはゲームの根幹をなすシナリオの制作に当たる職種故、ゲーム制作において非常に重要な役割と言えます。
ゲームシナリオライターの仕事の流れ
シナリオを考える上で、思いついたことをただ闇雲に書くだけでは、優れたシナリオを書き上げることはできません。
そのため、ゲームシナリオライターは、手順に沿って計画的に道筋を考える必要があります。
本章では、ゲームシナリオライターが一般的に行う業務の流れを紹介します。
①ゲームプロデューサーとの打合せ
まず最初に、ゲームプロデューサーやゲームクリエイターなど、ゲーム制作に関わるチーム全体で打ち合わせを行います。ここで開発に着手するゲームのコンセプトやターゲット層などの重要項目を相互に確認し、それぞれの担当箇所や押さえておくべき注意点のすり合わせを実施します。
②プロットを作成
①で行った打ち合わせの内容に基づき、プロットと呼ばれるものを作成し、シナリオ執筆に向けた準備を行います。
プロットとは、ストーリーの設計図のようなものです。ストーリーをステージごとに細かく分け、各項目ごとに背景や世界観を記述することで、直感的に全体像を把握することができます。
完成したプロットをゲームプロデューサーをはじめとした開発陣と共有し、修正点があれば変更を加えて、より正確なものを作ります。
③シナリオの執筆
②のプロット作成で十分な確認をしたのちに、シナリオの執筆を開始します。
ト書き(※)やセリフの他にも、背景映像や挿入する音声などの情報も併せて執筆します。
執筆中に物語の内容を正確に把握するため、必要に応じてフローチャートを活用し、執筆を進めます。
シナリオ作成は、ゲームの規模により複数のシナリオライターが携わる場合があります。
プレイヤーの選択によりエンディングが異なるゲームの場合、多くの場合で分担してシナリオ作成が行われます。その場合、最後までキャラクターの設定や世界観にずれが生じないような工夫と調整が必要です。
シナリオが全て完成したら、シナリオライター同士で何度もチェックを行い、修正点を見つけます。この作業を修正点がなくなるまで繰り返し、納品となります。
ト書き(※):ゲームシナリオにおいて、音響などの演出を書き入れたもの
ゲームシナリオライターに向いている人
ゲームシナリオライターは、チームでの連携が必須の職種です。
加えて、視覚的情報と聴覚的情報を組み合わせて、ゲームへの没入感を得られるような設計や、キャラクターに対して愛着を持ってもらえるように工夫することが求められます。
このように、ゲームシナリオライターには緻密な作業をこなす力と豊かな想像力、情報処理能力、そして高いコミュニケーション能力が求められます。
これらを踏まえ、本章では、どのような人がゲームシナリオライターに向いているのかを具体的に紹介します。
①リサーチ力がある人
ゲームシナリオライターにおいて、同業他社を含めたヒット製品のリサーチは必要不可欠です。これはコピー製品を作るためではなく、ヒット作の特徴を分析することで、ユーザーが求めているものや市場のトレンドを詳細に分析することが可能だからです。
また、物語の世界観は制作するゲームによって異なります。
ゲームのテーマによっては、例えば「古代もの」「戦闘もの」といったように、一部専門知識が求められる場合があります。
物理法則や、ゲームの舞台となる地域の文化に対する知識が乏しいと、ユーザーが違和感を抱く原因ともなり得ます。
そのため、開発や執筆作業に入る前に、必要な情報をしっかりとリサーチすることが必要です。
趣味や興味の幅が広く、好奇心旺盛な人はリサーチ力に長けているため、ゲームシナリオライターに向いていると言えるでしょう。
②粘り強く物事に取り組める忍耐力のある人
ゲームシナリオライターは、違和感なくゲームをプレイしてもらうために、入念にシナリオの作り込みを行います。
少しでも違和感が生じる箇所があれば迅速に修正作業を行い、また新たな問題点が見つかれば同様の作業を繰り返します。このように、細かな作業が求められるため、粘り強く物事に取り組める忍耐力がある人が、ゲームシナリオライターに向いていると言えます。
③流行に対して知見を持っている人
ゲームのヒットには、流行のトレンドに関する知識を持っておくことが重要です。
少し前に流行したスタイルのゲームを開発したとしても、製品がリリースされるときに流行が終わってしまっていれば、ゲームの売れ行きは期待できません。
ユーザーは、流行に乗りたい心理を持っていることに加え、目新しい製品に惹かれる傾向があります。
そのため、流行が始まってから時間が経っているもの一辺倒で開発を進めるのではなく、これから流行するであろうコンテンツを盛り込むことも有用です。
ゲーム開発には時間がかかります。現在のトレンドを追いかけるだけでは、製品が完成したときには既に流行が終わってしまっているリスクもあります。
そのため、製品が完成するときにも流行が続いているかを見極める先見の明も求められます。
このように、ゲームイラストレーターには、流行を的確に把握し、さらに先見する力を持っている人が向いていると言えます。
④チームワークを重んじることができる人
ゲームシナリオライターは、ゲームプロデューサーをはじめとした開発チームとの連携が必要不可欠です。
開発初期段階、いわゆる上流工程からチームの一員として開発に携わるため、意見交換や情報共有などのコミュニケーション能力に長けていることが求められます。
並行して別のシナリオやストーリーを担当しているゲームシナリオライターとの打ち合わせも密に行う必要があるため、伝えたいことを明確に言語化できる力や素早い情報処理能力も必須と言えます。
このように、ゲーム開発はチームワークで行うものです。チームワークを重んじることと、その意味をきちんと理解することができる人が、ゲームシナリオライターに向いている人と言えます。
⑤自分の世界観を持っている人
ゲームシナリオライターは、ゲームの世界観そのものを0から書き上げる必要があります。
本項③で紹介した、「トレンド(流行)の解析」に加えて、シナリオライターが持っている独自の世界観を反映することも、ヒット作誕生への近道となります。
シナリオライターが日頃から興味を持っていることや趣味としていること、今まで経験してきたことなどがベースとなったシナリオならば、よりリアリティの増したシナリオとなる上に、他社作品との差別化ポイントにともなり得ます。
これらを市場の流行とユーザーのニーズに合わせて柔軟に変更を加えることで、より深みのある作品誕生につながるでしょう。
このように、ゲームイラストレーターには、自分の世界観を持っている人が向いていると言えます。
ゲームシナリオライターになるために必要な資格・スキル
大前提として、ゲームシナリオライターは文字通り「シナリオ」を「ライティング」する仕事です。そのため、基本的なライティングスキルを有していることは必須条件です。
それに加えて、「小説」のような「作品」を執筆できる能力が求められます。
ゲームシナリオライターになるために必要な資格
ゲームシナリオライターになるために必須となる資格は特にありません。
ただし、パソコンを用いた作業が基本となるため、パソコンの使用に関する知見や、Word・ExcelといったMicrosoft Officeシリーズを支障なく使用できると良いでしょう。
ゲームシナリオライターの特徴|他のシナリオライターとの違い
本記事では、シナリオライターの中でも、ゲーム内のシナリオを作成するゲームシナリオライターに特化して記述してきました。
ゲームシナリオライターが手がけるゲームシナリオが、一般的なドラマや漫画、アニメなどのシナリオ作成と異なる点は、いくつかあります。
2つの違いとして特筆して言えることは、「ゲームはステージが分かれている」ことと「キャラクターにそれほど多くのセリフを割り当てることができない」点であると言えます。
流れるようにストーリーが進むことを望むドラマや漫画とは異なり、ゲームはステージが分かれているため、状況が刻一刻と変化します。
キャラクターの性格やゲーム全体の世界観は統一されているものの、ステージごとに細かな心情変化を「端的に」表現する必要があります。
これは、ゲームをプレイしていてキャラクターのセリフが流れる場面をイメージするとわかりやすいです。セリフが何行にもわたって続き、画面のスクロールのためにゲームのプレイが中断されてしまうと、プレイヤーにとってストレスになります。
そのため、ゲーム内でのキャラクターのセリフにおけるシナリオライティングでは、「必要最低限の描写とセリフの挿入」にとどめることが一般的です。
長い文章で心情を細かく描写することは比較的容易ですが、限られた文章量という制約の中で同様の表現をすることは、非常に難易度の高い作業です。
キャラクターの心情のキーとなる、重要な要素を分析し、違和感のないセリフに落とし込むことが必要です。
ゲームシナリオライティングのコツ
・数多くの作品に触れる
ゲームのシナリオライティングをスムーズに実現するためには、多くのボキャブラリーを蓄積しておくことが有用です。日頃から小説を読んで登場人物の心情把握の練習をしたり、論説文を読んで日本語の語彙を増やしたりできると効果的でしょう。
・ゲーム制作の知識を付ける
ゲームシナリオライターは、一般的なシナリオライターと比べて特殊です。
ゲームの制作の一部に関わるため、ゲームに関する知識は必要不可欠です。
・柔軟性を持つ
既にヒット作として認知されているゲームの分析を緻密に行える、丁寧な作業ができる人は人材として重宝されるでしょう。
1つのゲームの開発が終わり、新しいゲームの開発に移るごとに、毎回テーマとなる世界観が変わります。
このような変化にも「柔軟に対応できる適応力」と、どのような条件を与えられても支障なく仕事をこなせるような「幅広い知識」も必要不可欠です。
結論|ゲームシナリオライターに必要なスキル6選
これらを踏まえ、ゲームシナリオライターに必要なスキルは以下の6点と言えます。
ゲームシナリオライターに必要なスキル
- 基本的なライティングスキル
- パソコンに関する基礎知識
- 端的に情報をまとめるスキル
- 日本語の語彙を使いこなせるスキル
- 緻密な作業を正確にこなせるスキル
- 様々なゲームジャンルに対応できるような幅広い知識
未経験からゲームシナリオライターを目指すには
ゲームシナリオライターは、未経験からでも応募することが可能です。
しかし、前章で記述したように、一般的なライティングスキルやシナリオライティングとは異なる点が多々あるため、ある程度の下積みと専門的な知見を持っておく必要があります。
また、入社前には経験者、未経験者を問わずシナリオ作成の試験またはドキュメントの提出を求められることが一般的です。
未経験からゲームシナリオライターになるには、主に以下の3つの方法があります。
①専門学校へ入学する
最も効率的な方法は、専門学校へ通学し、ライティングスキルを学ぶことです。
しかし、ゲームシナリオライターを専門にしている学校は多くは存在しません。
作家や小説、ライトノベル向けの講座を受講し、まずはシナリオライティングについて学び、知識をつけると良いでしょう。
②ゲーム会社に別職種で入社する
ゲーム会社に別職種で入社後、配置転換を申し出てシナリオライターになることも手段の一つです。
一旦ゲーム業界の他業務を経験することで、ゲーム開発の流れを知ることができる上、その間にシナリオライターの仕事を近くで勉強することができます。
①の専門学校経由ルートと比較して実現難易度はかなり高くなりますが、方法の一つとして頭に入れておいても良いでしょう。
③過去の作品を持ち込み、実績をアピールする
小説のシナリオコンテストは頻繁に開催されています。
そのようなコンテストでの受賞歴や誌面への掲載経験をポートフォリオとして直接持参することで、自身のライティングスキルをアピールすることも手法の一つです。
ただし、高いクオリティーが求められる他、既に作家としてのノウハウを蓄積している人でないと受賞自体が難しい傾向にあります。
会社からどのような評価をされるのかは、それぞれの会社方針によりますが、一定水準以上の実力が求められることは必然です。
しっかりとした下積みと学習を重ね、実力を確固たるものにすることが望ましいでしょう。
ゲームシナリオライターとしてのやりがい
ゲームシナリオライターとしてのやりがいは、、なんといっても自身が作成したゲームのストーリーが世界中の人にプレイされ、評価を得られる点です。
例えば、「A」というドラマがあったとして、そのドラマが大ヒットすれば、それは作家冥利に尽きるでしょう。
ゲーム作品が大ヒットを遂げれば、ゲーム作品のシリーズ化が期待できるだけではなく、アニメ化やグッズ化など、さらに幅広く世間に愛されるものになります。
緻密な作業が求められる点や、忍耐力が必要な点、広い視野が必要な点など、ゲームシナリオライターには苦労がつきものです。スランプに陥ったとしても一人で解決し、納期に間に合わせなければならない重役でもあります。
しかし、作品が世にリリースされた時には大きな達成感と充実感を得ることができるでしょう。
ゲームシナリオライターの今後の需要と展望
ゲーム業界は、現在も右肩上がりに成長を続けている産業です。その分、求人数も多く、希望する企業の選択肢も十分にあります。
ゲームシナリオライターの平均年収は300~500万円ほどと、安定した生活を送ることのできる水準であることも魅力です。
また、ゲームシナリオライターは実力が重視される職種のため、ヒット作を生み出すことができれば、更なる年収アップやステップアップが見込まれます。
まとめ
本記事では、ゲームシナリオライターの仕事内容、未経験から目指す場合の道筋、今後の展望をまとめました。
ゲームのシナリオは、プレイヤーのゲーム体験に直結する重要な要素です。まさにゲームの基幹といっても過言ではないでしょう。
そんなシナリオを考案するゲームシナリオライターには、大きな責任と知識が求められますが、同時にやりがいと達成感を感じられる魅力ある仕事です。
本記事が、ゲームシナリオライターを目指す方の参考になれば幸いです。