基礎から解説|魅力的なゲームシナリオの書き方
ゲームの世界を創り出す第一歩となるゲームシナリオ。本記事では、ゲームシナリオの基礎知識から、具体的な書き方を初心者にも分かりやすく解説します。
ゲームが好きな方、ゲームシナリオの執筆に興味がある方はぜひ参考にしてください。
ゲームシナリオとは?
ゲームシナリオとは、ゲームの物語の骨格となるものです。
シナリオを制作する人を「シナリオライター」と呼びます。
ゲームシナリオの制作では、映画や小説の脚本と同様に、登場人物のセリフや行動、そして物語の展開などを詳細に記述します。
しかし、ゲームシナリオはプレイヤーが物語に能動的に参加できるという点で、一般的な脚本とは大きく異なります。
ゲームシナリオとはどのようなものか、解説します。
ゲームシナリオの主な役割
ゲームシナリオは、ゲーム全体の設計図のような存在です。
シナリオに沿って、ゲームのレベルデザインやキャラクターデザイン、音楽などが作り上げられていくため、ゲームのクオリティを左右する重要な要素と言えるでしょう。
ゲームシナリオの主な役割を以下に挙げます。
- 物語の進行
ゲームのストーリーを順序立てて説明していきます。例えば、RPGでは「魔王を倒す」という明確な目標を提示し、プレイヤーを冒険へと駆り立てます。
- ゲームシステムとの連携
アクションゲームでは、シナリオの展開に合わせて敵の強さが変化したり、新しいアクションが使えるようになったりするなど、シナリオとゲームシステムが緊密に連携することで、プレイヤーに新鮮な体験を提供します。
- 世界観の構築
ゲームの世界の背景、歴史、文化などを設定します。ファンタジー世界では、魔法やモンスターが存在する理由や、世界の歴史などを詳細に設定することで、プレイヤーがその世界に没入できるようにします。
- キャラクターの描写
登場人物の性格、外見、バックグラウンドなどを詳細に描きます。キャラクターの作り方については、後述する「ゲームシナリオを書く流れ」で解説します。
- 感情の喚起
プレイヤーにさまざまな感情を体験させ、物語への共感を深めます。感動的なストーリーでプレイヤーを感動させたり、ハラハラドキドキする展開でプレイヤーを興奮させたりすることで、プレイヤーの感情を揺さぶります。
シナリオライターは、ゲーム制作に関わる職種の1つです。
文章を書くだけではなく、ゲーム全体の面白さを考えながらシナリオを書くことが求められます。
ゲームジャンルごとのシナリオの違い
ゲームジャンルは多種多様であり、それぞれのジャンルに合ったシナリオが求められます。
ゲームシナリオを書くには、各ジャンルの特徴を理解し、プレイヤーが楽しめるような物語を作成することが大切です。
本項目では、数あるゲームジャンルの中から、代表的なジャンルのシナリオの特徴について解説します。
RPG(ロールプレイングゲーム)
RPGのシナリオでは、プレイヤーが主人公となって冒険する物語が展開されます。
主人公以外のキャラクターにも個性を与え、シナリオではプレイヤーが感情移入できるようなバックストーリーを構築します。
ゲームの進行としては、プレイヤーが自由に世界を探索し、物語を進めることができます。ファンタジーやSFなど、広大な世界観が描かれることが多いです。
アクションゲーム
アクションゲームでは、プレイヤーが爽快なアクションを体験できるような設計が重要です。
アクションそのものを楽しむことに重点を置くため、ストーリーはシンプルで分かりやすいものが好まれます。
ステージクリア型の進行では、各ステージのクリア目標を明確にし、プレイヤーが達成感を味わえるようにします。ボスの特徴や攻撃パターンを考え、プレイヤーが戦略を立てて戦うことができるようなボス戦の設計も大切です。
アドベンチャーゲーム
アドベンチャーゲームでは、プレイヤーが謎を解きながら物語を進めていくという、謎解き要素が重視されます。
難易度やヒントの出し方など、プレイヤーが楽しめるような謎解き設計が鍵となります。謎解きやゲームの世界の雰囲気を、言葉や描写で作り出す必要があります。
他にも、プレイヤーの選択によって物語が大きく変わるような複数の選択肢の用意や、物語が深まるようなキャラクターとの会話も重要です。
シミュレーションゲーム
シミュレーションゲームでは、プレイヤーが現実世界の一部を模倣した世界で、さまざまな活動を行うという特徴があります。
プレイヤー自身が達成したい目標に向かって動き、自由に戦略を立ててゲームを進められるようなシステムを設計します。
シナリオでは、シミュレーションする対象となる現実世界の要素を、可能な限り忠実に再現します。
ゲームシナリオを書く流れ
ゲームシナリオの作成は、アイデアの創出から、具体的な文章の作成、そしてゲームシステムとの連携までを行います。これらのステップを踏むことで、魅力的なゲームシナリオを作成することができます。
シナリオを書く流れを一つずつ解説していきます。
物語の構造を決める
ゲーム全体のストーリーの流れを把握するため、大まかな筋書きを立てます。
代表的なシナリオの構造として、「起承転結」や「三幕構成」があります。
「起承転結」は日本の伝統的な物語構成で、多くの人が馴染みのある構造です。シンプルで分かりやすい物語を作りたい場合に適しています。
「三幕構成」は、ハリウッド映画などで多く採用されている構造です。よりドラマティックな展開を作りたい場合や、複雑な物語を構成したい場合に適しています。
シナリオの構造を理解することで、無駄な描写を省き、効率的にシナリオを執筆できます。
また、明確な構造があれば、読者や視聴者は物語の流れを把握しやすく、迷うことなくストーリーに没入できます。
今回は「起承転結」を簡単に紹介します。
- 起:物語の始まりとなる部分です。世界の解説、主人公の現状、問題の発生などを設定します。
- 承:問題解決に向けての行動、登場人物の出会い、事件の発生など、物語が展開していく部分です。
- 転:物語の転換点となる出来事、主人公の決意、新たな問題の発生など、物語に変化をもたらします。
- 結:物語の最終的な解決、主人公の成長、世界観の変化などを描きます。
最初から詳細に「承」と「転」を決定するのは難しく感じるかもしれません。その際は、物語がぶれないように「起」と「結」だけでもしっかりと決めましょう。
シナリオを書き進める中で、問題の発生やキャラクターの言動によって変わっていく要素もあるので、柔軟に修正していくことも大切です。
キャラクターを作る
物語を動かす登場人物を設定します。主人公、脇役、敵キャラクターなど、登場人物を詳細に作り込みます。
それぞれのキャラクターに個性的な名前、外見、性格、バックストーリー、成長、他のキャラクターとの関係性などを設定することで、物語に深みが出ます。
プレイヤーは、キャラクターに感情移入し、そのキャラクターの視点で物語を体験します。魅力的なキャラクターであれば、プレイヤーの記憶に長く残り、ゲームへの愛着を深められます。
キャラクター作りは、創造性と分析力が求められる作業です。
さまざまなキャラクターを研究して、キャラクターを生み出していきましょう。
プロットを作成する
プロットとは、物語の骨格、つまりストーリーの大まかな流れを指します。
ゲームシナリオにおいては、このプロットがゲーム全体の構成を決め、プレイヤーにどのような体験を提供するかを大きく左右します。
また、チームでゲーム制作を行う際、チーム全体でストーリーの方向性を一致させるために共有されます。スムーズな開発には欠かせない資料です。
プロットの作成の流れは以下です。
- シーン分割
物語を複数のシーンに分け、それぞれのシーンで何が起こるのかを具体的に記述します。
- キャラクターの配置
各シーンにどのキャラクターが登場し、どのような役割を果たすのかを決定します。
- イベント設計
ゲーム内で発生するイベント(戦闘、会話、謎解きなど)を設計します。
- 選択肢の設計
プレイヤーが選択できる部分を設定し、物語の分岐点を作り出すこともできます。
プロットでどこまで書き込んで良いか、何を書けば良いかわからなくなることも多いかと思いますが、プロット作成の段階では、セリフや詳細な描写まで作り込む必要はありません。
次の「シナリオ制作」や「ゲームシステムとの連携」の段階もあるので、プロットの作成では、構造段階で決めた大まかな筋書きに沿って、物語を深掘りしていきましょう。
シナリオを作成する
プロットを基に、分割されたシーンごとに具体的なセリフや描写を加えてシナリオを作成していきます。
シナリオの序盤に後の展開につながる伏線を張ることで、読者の興味を引き続けます。
シナリオ作成の間には、推敲を重ねます。
キャラクターの個性や世界観に合った言葉選びができているか、ストーリーに矛盾や不自然な点がないか、プレイヤーがどのように感じるか、などの視点で推敲を進めることで、後の修正を減らし、シナリオの質も高めることができます。
「ゲームジャンルごとのシナリオの違い」で解説したように、ジャンルごとに求められるシナリオは変わります。
プレイヤーがスムーズにゲームをプレイできるよう、制作したいゲームジャンルに寄り添ったシナリオ制作を意識しましょう。
また、ゲームシナリオ制作に使える「シナリオ作成ツール」を利用することもおすすめです。
プロットのサポートから、シナリオのチェックがしやすい機能を搭載しているツールもあるので、シナリオが書きやすい環境を探してみてください。
以下に、シナリオ作成ツールを2つ紹介します。
ゲームシステムとの連携
シナリオを単なる物語でなく、プレイヤーが楽しむためのゲーム体験の要素とするためには、ゲームシステムと密接に結びつける必要があります。
ゲームシステムとは、プレイヤーがゲーム内で操作できる要素やルールのことです。例えば、RPGであればレベルアップシステムやスキルツリー、アクションゲームであれば、攻撃方法やコンボなどが挙げられます。
シナリオとゲームシステムの連携とは、これらのゲームシステムを、シナリオの物語やキャラクターに結びつけることです。
連携の具体例は以下のとおりです。
- RPG
キャラクターのレベルアップや、特定のスキルを習得することで、ストーリーが進んでいきます。
- アクションゲーム
ボスの攻撃パターンがシナリオに影響していることや、特定のアイテムを使うことでアクションに変化が生まれるなど、シナリオでもゲームの進行をサポートします。
- アドベンチャーゲーム
パズルを解くことでストーリーが進みます。選択肢によってエンディングが変わるよう、シナリオを用意します。
推敲・テストプレイ
書いたシナリオを読み返し、修正を加える推敲作業を重ねることで、ゲームシナリオの質を高めることができます。
ただ言葉の修正をするのではなく、作品の完成に向けて、表現を洗練させることが目的です。
また、テストプレイを通じて、シナリオに矛盾や不自然な部分がないか、シナリオの進行とゲームシステムがスムーズに連携しているかを確認します。
スキルアップの仕方
ゲームシナリオの書き方を学ぶには、専門学校に通う方法と、独学で学ぶ方法があります。
どちらを選ぶにしても、継続的に学習し、実践を重ねることが重要です。継続しやすい環境や、希望する学び方、目標に合わせて選んでみてください。
専門学校で学ぶ
専門学校は、ゲームシナリオについて体系的に学ぶことができる環境です。
在学中から実際にシナリオを作成し、添削を受けることで、実践的なスキルを習得できます。
シナリオ作成に必要な基礎知識のみでなく、ゲームデザインやプログラミングなど、ゲーム制作に関わる幅広い分野を学ぶこともできるでしょう。
卒業後の就職支援体制も整っている学校が多いため、シナリオライターとして働きたい人におすすめです。