【ゲームプロデューサーを目指す学生がクリエイターにインタビュー】 大作主義と新規IPの不足 小山順一朗#12

前回のまとめ
ゲーム業界の今後について、まずは小山さんが経験してきたアーケードゲームについて伺いました。
家庭用ゲームについて小山さんはどのように考えているのでしょうか。
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大作主義の結果
福山「コンテンツ数が凄い膨大になっていろんなものがありますが、ユーザーの可処分時間はほとんど増えることがないですよね。」
小山様(以下、小山と表記)「そうそう。」
福山「そんなコンテンツ数と時間の比率が釣り合わなくなった時に、コンテンツの傾向としてどうなるのかについて私見とかありますか?」
小山「あるある。んーとね、これネガティブなんですけど、今2種類のゲームの方向が大変なことになっています。」
小山「一つは、ゲームメーカーと言われるものはめちゃめちゃ大作主義になっていて、1タイトル100億円を超えるようになってます。」
小山「昔はその10分の1で出来てたんです。10分の1で出来てたから10倍になって10倍売れてるかって言ったらそんなことないわけです。だから、ビジネスとしてはどんどん厳しくなっていきます。」
─── これはゲーム業界だけの問題ではないでしょうが、出来ることが増えてしまったんだと思います。表現のために出来ることが増える=制作時間が伸びるということなので、制作費が膨れ上がるのは仕方ないような気がします。その制作費を回収し、利益に繋げるためには、買い切りだけのビジネスモデルだけでは難しく、運営型になるのかもしれません。
制作費が膨大になる原因とは
小山「なぜ、そんだけお金をかけなきゃいけないかって言うと、タイトルがずっと同じなんです。シリーズが同じになるってことはもうグラフィックと物量を上げるしかないっす。」
小山「ちなみに、一流の美大を出たデザイナーが3年4年と特定のオブジェクトを描いてたりします。着せ替えいっぱいあるやつだと、靴を沢山作ったり。」
小山「でも多分その職業は生成AIに取って代わられる可能性がある思います。そんなとき、その人たちは何するんだろうってちょっとネガティブに思ってます。」
─── これには高度な分業化の影響もあると感じています。昔は色々な領域を担当することで、一つがダメになっても別の武器を持っているという状況になっていたのではないかと想像しています。ですが、担当領域が細分化されて一つを突き詰めるようになると、二の矢となる武器を持ちづらくなり、それが小山さんの懸念にも繋がっているように感じます。
小山「これが100億円ゲームの大量生産の中身なんで、そこに携わっている大手メーカーに入った、またその下請けに行っているデザイナーたちは大変なことになると思います。」
新規IPを産めない現状
小山「ずっと新しいIP産めないのは、またジレンマがあって、100億円かけないと世界と戦えない、となると全く新しいIPができません。」
福山「ギャンブル的になってしまいますからね。」
小山「そうです。なので、CESAの会長の取材記事でIPは大事だよとありました。確かに、ロックマン、バイオハザード、モンスターハンター、ストリートファイターシリーズというように20年以上前に誕生し、現在も人気を維持してます。」
小山「任天堂の画期的な最新タイトルを生み出したと言われるスプラトゥーンでも、もう9歳です。状況が命令している感じです。新規IPに挑戦するよりも世界で存在感を示せるモノで勝負しろ!と。」
小山「あの任天堂が新規IPを出してないんですよ。そしてスイッチ2です。任天堂ハードで2は初めて見た。」
福山「これまで新しい名前を付けてたり、DSでも3DSとかに名前を変えたりとか」
小山「そう、常に別の価値を提供してたのに、ついに任天堂が2来たかって思って結構びっくりしました。」
─── 記事を書いていて、DSと3DSを例に上げてしまったことでショックを受ける人もいそうだなと思いました。ゲームボーイとゲームボーイアドバンスだったか......
─── 別の価値を提供することの一つが新規IPの成長でもあるなと思いました。ただ、作品のファンになってもらって、シリーズ化してIPを育てるということは別の問題として存在するように感じました。新たなIPをヒットさせる、そのIPを育てるの二つは求められることが違うのではないでしょうか。このIP周りについては別の方にも聞いてみたいと思います。
まとめ
少しネガティブな話になってしまいましたが、現状抱えている問題を認識する必要はあります。業界に飛び込むことができた際には、このような問題と向き合うことになるのですから。
一方で、インディーゲームの数が増え、バズって大きな話題となる作品も存在します。
#13ではそんなインディーゲームについてのお話です。