【ゲームプロデューサーを目指す学生がクリエイターにインタビュー】シングルプレイとマルチプレイ、制作で意識することの違いは 齋藤健治#3

【ゲームプロデューサーを目指す学生がクリエイターにインタビュー】シングルプレイとマルチプレイ、制作で意識することの違いは 齋藤健治#3

【ゲームプロデューサーを目指す学生がクリエイターにインタビュー】シングルプレイとマルチプレイ、制作で意識することの違いは 齋藤健治#3

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  1. 1シングル、マルチ、運営それぞれでの課題
  2. 2ビルドの幅
  3. 3今回のお話をうけて

シングル、マルチ、運営それぞれでの課題

福山「シングルプレイならプレイヤーは一人なので、その人への遊びを考える。マルチなら別のプレイヤーがいて、プレイヤー同士のことも考えないといけない。といったようにゲームの性質によって制作上の課題になる点も変わると思いますが、意識されていることはありますか?」

齋藤様(以下、齋藤と表記)「シングルプレイのゲームデザインを考えるうえで、僕がいつも大事にしているの課題が二つあって、『プレイヤースキルの成長』と『少し難しい挑戦』のバランスです。」

齋藤「まずひとつは、プレイヤースキルの成長をきちんと感じられること。プレイヤーが自分の操作に手応えを感じたり、練習を重ねることで『自分はこのゲームが上手くなった』と実感できることが、アクションゲームの根幹にあると考えています。」

齋藤「操作に慣れていく中で、自然と高度なプレイができるようになっていく過程――その気持ちよさや達成感を、しっかりとゲームの中に組み込むようにしています。」

齋藤「そしてもうひとつは、少しだけ難しい挑戦を常に用意しておくこと。これは、プレイヤーがただ作業のようにプレイするのではなく、常に少し背伸びしたり、工夫を求められる状況にいることが大切だという考え方です。敵の配置やギミック、地形などを工夫して、これまで通りのプレイでは乗り越えられないようなシチュエーションを、自然な流れの中に差し込んでいきます。そうすることで、プレイヤーの中に『今回はちょっと違うな』と感じてもらえる瞬間が生まれ、ゲーム体験にメリハリが生まれます。」

齋藤「この“成長と挑戦”のバランスを、ステージ単位だけでなく、ステージの中の細かいセクションごとにも意識的に作っていく。そうすることで、プレイヤーが遊んでいて飽きず、常に新鮮な手応えを感じ続けられるような、リズムのあるゲームプレイが実現できると考えています。これがシングルプレイのゲームを作るうえで意識している事かと思ってます。」

齋藤マルチプレイの設計については、ゲームのジャンルや狙いによって大きく変わってくる部分ですが、他プレイヤーとの“連携感”の作り方と運営型のゲームになった際に発生するビジネススキームとゲームデザインの関係性という大きく分けて2つ意識しています。」

齋藤「まず、他プレイヤーとの“連携感”の作り方ですが、連携といっても、全員で緻密にコンボを決めるような協力だけが正解ではなくて、むしろ『シングルプレイの延長線上にあるマルチ体験』を意識することが多いです。」

齋藤「一人ひとりが自分のポジションや役割を持ちながら、緩やかに他のプレイヤーと関わることで成立する楽しさですね。たとえば、戦闘の中で自然と役割分担が生まれたり、自分の立ち回りがチーム全体の流れに影響を与えるような仕組みを重視しています。」

齋藤「そしてもうひとつは、運営型のゲームになった際に発生する『ビジネススキームとゲームデザインの関係性』です。継続的に遊んでもらうゲームでは、武器や装備の性能、プレイヤーのビルド(育成・強化の方向性)といった部分が非常に重要になってきます。このビルドの幅や自由度がプレイヤーのモチベーションや個性になっていく一方で、それに合わせて『スキルの難しさ』や『チャレンジの設計』を調整していく必要があると思ってます。」

齋藤「周回プレイが前提となるゲームで、毎回高度な操作や高難度チャレンジが求められると、テンポが悪くなってしまいます。そういったケースでは、快適な周回体験を設計するために、スキル的な要求値を下げたり、効率よく報酬を得るための“ビルドの工夫”に面白さの軸を置いたりと、アプローチを変える必要が出てきます。」

齋藤「その中でも一度はしっかりとした“大きなチャレンジ”を設けるべきだとも考えています。問題はそこに“どうやって意味を持たせるか”。単に敵が強いだけではなく、ビルドの工夫だけでは太刀打ちできないような、強敵とのぶつかり合いをどう表現するかは、設計上の難しさのひとつだと感じています。ユーザーさんがどこに面白さを感じお金を使いたくなるかという所がゲームデザインにも大きくかかわってくるというのがシングルとマルチ運営ゲームの大きな違いかと思ってます。」

ビルドの幅

福山「ビルドというお話であれば、上位のプレイヤーや知識のあるプレイヤーがビルドの紹介をSNSやインターネット上ですることで、ビルドが偏ることがあると思います。ゲームのアピールポイントとしてカスタマイズ性を挙げることもありますが、その場合だとアピールポイントやコンセプトと反したりしないのかな?と思うのですが。」

齋藤「過去に開発した作品の中で、実際にはそうならなかったアイデアとして、様々なアクションゲームを表現できるようにカスタマイズするというものがありました。例えばですが、ビルド次第で、ベヨネッタにもなるし、メタルギアライジングのようなアクションもできるし、デビルメイクライもできるみたいな様々なアクションがつくれるというアクションゲームツクール状況にしたかったんですが、時間とお金と技術の壁から難しいという判断になりました。」

齋藤「少し方向性は違いますが、近いものとしては、最近のモンスターハンターXXやライズがあると思っていて、武器の種類でアクション性を変えていって、ビルドの幅はサポート寄りか周回寄りか、防御か攻撃かというように自分の好きな方向性が持てるという状態になれば、ビルドが幅広く感じられる状態になるのかなと思います。」

齋藤「なので、このビルドがおすすめですよっていうのは悪いことではなく、良いことだと思っていて、SNSやインターネット上に上がっているビルドを自分なりにどう解釈して落とし込んでいくか、自分の中の幅を広げるのかをユーザー自身が楽しむかどうかというところになるので。僕も参考にすることもありますし、結局どこか1箇所とか変えたりすると思うんですよ。なので、一個の方向性の指標なのかなという形で良いものだと思ってたりします。」

今回のお話をうけて

「装備の組み合わせは○○通り!」といったアピールをしているゲームを見かけることがあり、実際にプレイしてみることもあります。でも、実際にその数の組み合わせ全てが有効なわけではないし、装備のレベル帯や装備ごとのコンセプトの違いなどから実用的な組み合わせは限られていることが多いと感じています。それは果たしてアピールとして正しいの?と思っていました。

今回のお話から、実際の組み合わせ数の大小ではなく、方向性がいくつか存在していることの方がカスタマイズ性の用意の仕方として良いのだろうと感じました。仮に、膨大な組み合わせの中から最終的に4,5個程度の組み合わせに集約されてしまったとしても、それぞれの組み合わせが向いている方向が異なっていればカスタマイズ性が高いと感じられる。実際に幅があるという事実よりも、幅があると感じられるというユーザーの感覚を見たほうが良いこともあるということなのかなと思います。

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