WEB X 2025が示す日本のWeb3の現在地と次なる展開

8月25日より東京プリンスパークタワーで開幕したアジア最大級のWeb3カンファレンス「WEB X 2025」。
石破茂首相の登壇をはじめ、SBIホールディングスの北尾吉孝氏、堀江貴文氏、そしてバイナンス創業者のCZ氏といった国内外のトッププレイヤーが一堂に会する光景は、日本のWeb3市場への期待の高さを物語っている。

しかし、来場者の8割以上を海外勢が占めるとも言われるこの熱狂の裏で、私たちは日本の市場が抱える課題を冷静に見つめ、次の一手を考えなければならない。
本稿では、WEB Xの熱気から日本のクリプト・Web3ビジネスの未来を読み解く。

今回のWEB Xにこれだけの海外勢が集結している事実は、疑いようもなく「日本市場への強い関心」の表れだ。
石破首相や担当閣僚が相次いで登壇し、Web3を国家戦略として推進する姿勢を明確に示したことは、海外プロジェクトや投資家にとって何よりの安心材料となる。

度重なる税制改正の議論や、世界に先駆けて暗号資産交換業のライセンス制度を整備した実績など、日本は「ルールが明確で、事業がしやすい国」としての地位を確立しつつある。
アニメやゲームといった強力なIP（知的財産）の存在も、Web3との融合による新たなビジネスチャンスを期待させ、海外勢を惹きつける大きな魅力となっている。

まさに日本は今、グローバルなWeb3プレイヤーたちにとって、無視できない重要な市場として認識されているのだ。

しかし、この世界的な注目とは裏腹に、国内のWeb3市場の拡大は依然として多くの課題を抱えている。
最大の障壁は、一般層への普及、すなわちマスアダプションの遅れだ。

一部のアーリーアダプターを除けば、多くの日本人にとって暗号資産やNFTは未だ「投機的で、よくわからないもの」というイメージが根強い。
複雑なウォレット管理や専門用語の多さも、新規ユーザーが参入する上での高いハードルとなっている。

また、ビジネスサイドに目を向けても、伝統的な大企業はWeb3への参入に依然として慎重な姿勢を崩していない。
法規制や会計処理の複雑さ、そして何より成功事例の少なさが、本格的な投資を躊躇させているのが現状だ。
海外の熱気と国内の冷静さの間には、依然として大きな温度差があると言わざるを得ない。

では、このギャップを埋め、市場を次のステージに進めるための鍵はどこにあるのか。WEB Xの多様なセッションの中に、そのヒントを見出すことができる。

その一つが、カンファレンス内で開催された著名アナリスト「仮想NISHI」氏の「クリプト結婚式」だ。
婚姻の誓いをブロックチェーンに刻み、証明書をNFTとして発行するというこのユニークな試みは、Web3技術が金融や投機の文脈だけでなく、文化やライフスタイルに溶け込む可能性を示唆している。

このような、人々の共感を呼ぶ「ユースケース」の創出こそが、マスアダプションを牽引する力となるだろう。
ゲームやエンターテインメントといった日本の得意分野とWeb3を掛け合わせ、誰もが直感的に「面白い」「使ってみたい」と思えるサービスを生み出せるかが、今後の成長の分水嶺となる。

WEB Xは、日本のWeb3が世界から大きな期待を寄せられていることを再確認させてくれる絶好の機会だ。
政府の力強い後押しを追い風に、グローバルな知見と日本のポテンシャルが交差するこの場所から、新たなイノベーションが生まれることは間違いない。

しかし、この熱狂を一時的な「祭り」で終わらせてはならない。海外勢が持ち込む技術やアイデアと、日本の開発者や企業、そしてクリエイターをいかに結びつけ、国内市場の課題を一つひとつ解決していくか。本当の勝負は、このカンファレンスが終わった後にかかっている。

Web3という新たな産業の夜明けを応援しつつも、その道筋が平坦ではないことを直視し、着実に歩みを進める必要がある。
WEB Xの熱気を、日本市場の確かな成長へと繋げるための正念場は、まさにこれからだ。