東京ゲームショウ2025、過去最大出展の光と影:ゲーム業界の未来を照らす希望の祭典【02】

【02】東京ゲームショウ2025は過去最大規模で開催され、インディーゲームやメタバース、UGC、そしてNintendo Switch2などが注目を集めました。ロブロックスの成功事例や非ゲーム企業の参入も話題となり、産業構造の変化と新しいビジネスモデルを示しています。本連載4部作ではTGS2025の詳細分析を通じて、ゲーム業界の未来と成長の好循環を読み解きます。
第2部:ゲームの未来を形作る「ロブロックス」と「Nintendo Switch 2」がもたらす革新
東京ゲームショウ2025の会場で、特に大きな議論と注目を集めたのは、コンテンツを創造するプラットフォームの代表格「ロブロックス」と、新たなゲーム体験の形を提案するハードウェア「Nintendo Switch 2」でした。
これらは、ゲーム業界の「創造性」と「普及性」という二つの側面を同時に拡大する、ポジティブなエンジンとなります。
1. ロブロックス:創造性の民主化と日本のゲーム文化への浸透
「ロブロックス」(Roblox)の出展は、昨年の技術紹介の枠を超え、今年は「日本のクリエイターによる成功事例」を前面に押し出す形で、大規模に行われました。
これは、UGC(ユーザー生成コンテンツ)モデルが、ついに日本のゲーム文化と市場で本格的に根付き始めたことを象徴しています。
A. 「ゲーム開発者」の定義の拡張
- 教育と人材育成: ロブロックスは、プログラミングや3Dモデリングの専門知識がなくともゲームを制作できる環境を提供することで、「ゲーム開発者」の裾野を爆発的に広げています。TGSでは、実際に日本の学生や若い世代が制作した、クオリティの高いオリジナルゲームが多数展示されました。これは、未来のゲームクリエイターを育成する「インキュベーション・プラットフォーム」としてのロブロックスの価値を高めています。
- IP(知的財産)活用の新たなフロンティア: 既存の日本の人気アニメやマンガのIPホルダーが、ロブロックス上に公式のバーチャル空間(体験)を構築し、グローバルなファンベースとの新たな接点を作り出している事例が多く紹介されました。これにより、日本のIPは、従来のゲーム化(販売後終了)ではなく、「継続的なコミュニティ運営」という形で、世界中のファンと長期的な関係を築くことが可能になります。
B. グローバル市場への「直販」チャネル
ロブロックスは、日本のクリエイターが、言語や地域に縛られることなく、自身の作品を世界中の1日当たりのアクティブユーザーに直接届け、収益化できる強力なツールです。
TGSでの成功事例の提示は、「世界にゲームを売りたい」という日本の開発者の長年の夢を、現実的かつ手軽なものに変える、ポジティブな影響を与えています。
2. Nintendo Switch 2:ゲーム市場の「パイ」を再拡大する力
TGS2025で、最も大きな期待と関心を集めたのは、任天堂の新型ハードウェアに関する情報でした。たとえ具体的な発表がなくとも、その存在感が会場全体に与える影響は計り知れません。
A. 「遊び」の場の再定義と「非ゲーマー」の取り込み
- ハイブリッド機の更なる進化: Switch 2は、現行機が成功させた「リビングでも、外出先でも」というハイブリッドな遊び方をさらに深化させることが期待されます。性能向上により、よりリッチな体験が可能になる一方で、任天堂らしい「直感的で誰もが楽しめる」操作性やコンセプトが継承されることで、一度ゲームから離れた層や、これまでゲームに触れてこなかった層を再び市場に引き戻す「呼び水」となるでしょう。
- 新たなインターフェースの可能性: 任天堂のハードウェアは常に、新しい入力装置やインターフェースを通じて、新しい「遊び」の形を提案してきました。Switch 2がもし、VR/AR技術やモーションキャプチャなどの最新技術を、任天堂独自の解釈で取り入れた場合、それはゲーム業界全体の可能性を広げる、極めてポジティブな起爆剤となります。
B. 開発者へのポジティブな影響
新型ハードの登場は、開発者にとって、表現の自由度を高め、新しいアイデアを実現するための「キャンバス」が拡大することを意味します。
特に、インディーゲーム開発者にとっては、最新技術へのアクセスと、世界的な販売プラットフォームの両方を同時に手に入れられるチャンスです。
Switch 2は、ロブロックスのUGCとは異なる軸で、ゲーム市場全体の規模と質の両方を引き上げる、不可欠な存在です。
この第2部では、TGS2025における二大潮流、すなわち「創造性の民主化」(ロブロックス)と「ゲーム体験の革新」(Switch 2)が、いかにして業界全体を明るい未来へと導く可能性があるかを論じました。
両者の存在は、ゲーム業界が「コンテンツ供給の停滞」という危機を乗り越え、新しいユーザーとクリエイターを絶えず生み出す「持続可能な創造サイクル」を構築しつつあることを示していると思います。