Web3鎖国の完成:なぜBybitは日本人を捨て、国内BCGは死に絶えたのか

2025年、Bybitの日本人締め出しにより「Web3鎖国」が完成しました。なぜ海外CEXは日本市場を切り捨て、国産BCG(ブロックチェーンゲーム)は全滅したのか。金融庁の規制やトラベルルール、重い税制、そして流動性の喪失。最新のD2Cトークン事情まで網羅し、Web3の理想が「国内ポイント経済」へ退化する構造を徹底解説。2026年以降、日本のクリプト市場が辿る3つの末路と生き残り策を提示します。
序章:閉ざされた「自由への窓」
日本のクリプトユーザーにとって、BinanceやBybitといった海外CEXは、単なる取引所ではありませんでした。それは、日本の重い税制(最大55%の総合課税)や、金融庁による「ホワイトリスト制度(上場銘柄の極端な制限)」という国内の不自由な檻から逃れ、グローバルな最先端の経済圏に繋がるための「唯一の窓」でした。
しかし、2025年、その窓が次々と叩き割られています。Bybitの日本人締め出しは、その決定打となりました。後に続くであろうMEXCやBitgetも、もはや時間の問題です。私たちが目にしているのは、日本のクリプト市場がグローバルから完全に切り離され、「いわゆるWeb3」という名の国内専用ポイント経済へと退化していく末路です。
第一章:なぜ海外CEXは「日本人」を締め出すのか?
最大の理由は、日本の金融庁(FSA)による「締め付け」の強化と、それに対するグローバル企業の「コストパフォーマンス(対費用効果)」の悪化です。
1. 規制の防波堤と「トラベルルール」
日本は世界的に見ても暗号資産に対する規制が極めて厳しい国です。顧客資産の分別管理やコールドウォレット運用、そして送金履歴を追跡する「トラベルルール」の徹底。これらはユーザー保護には役立ちますが、取引所にとっては膨大な「コンプライアンス(法令遵守)コスト」を強いるものです。
2. グローバル資本による「日本市場の切り捨て」
海外CEXにとって、日本は「規制が厳しく、手続きが煩雑で、その割にユーザー数が爆発的に増えない市場」と化しました。
- リスクの増大: 日本居住者に無許可でサービスを提供し続けることは、日本政府からの警告だけでなく、国際的なFATF(金融活動作業部会)による制裁リスクを招きます。
- 撤退の論理: 「面倒な日本の規制に従って運営するくらいなら、日本を切り捨てて、より規制の緩い、あるいは成長性の高い他国にリソースを割くほうが利益が出る」という、資本の冷徹な判断です。
3. 「日本法人設立」という名の妥協
Binanceのように、日本に拠点を置き、金融庁の認可を受けて「日本版」を作る動きもあります。しかし、そこにあるのは海外版とは似て非なる、「牙を抜かれた劣化版」です。レバレッジ制限、銘柄の制限。ユーザーが求めていた「自由」はそこにはありません。
第二章:国内クリプト市場の「機能停止」と税制の罠
「売却時の税金を減らす」という名目、あるいは「ユーザー保護」という大義名分のもとで行われている国内の締め付けは、結果として日本のWeb3の呼吸を止めています。
1. 出口戦略の喪失
海外CEXが使えなくなることで、国産BCGやトークンプロジェクトは「出口」を失いました。
- 多くの国産BCGトークンは、流動性を確保するために海外CEXへの上場を前提としていました。
- 日本人が海外CEXを使えなくなれば、トークンの買い手がいなくなり、価格は暴落し、エコシステムは崩壊します。 これが、2025年に『クリプトスペルズ』や『ウィザードリィBC』といったタイトルが実質的に機能停止に追い込まれた裏側にある構造的な死因です。
2. 税制という名の「重石」
日本の分離課税(20%の一律課税)への改正が遅々として進まない中、多くの大口投資家や優秀なエンジニアはすでに国外へ脱出しました。残された一般ユーザーは、海外CEXという「逃げ道」を塞がれ、国内取引所で高い手数料を払い、利益が出れば半分近くを税金で持っていかれる。これでは、新しい産業など育つはずもありません。
第三章:「いわゆるWeb3」への退化:フィナンシエとD2Cの正体
海外との繋がりを断たれた日本の資本が、今、必死にしがみついているのが、FiNANCiE(フィナンシェ)などの「国内完結型トークンプラットフォーム」です。
1. 「応援」という美辞麗句に隠された資金調達
売れるネット広告社が発表した「D2Cトークンエコシステム」などは、その典型です。 海外への窓が閉ざされたからこそ、日本国内の「規制の届く範囲」で、ファンや事業者からお金を集める仕組みを再構築しようとしています。 しかし、これはWeb3の理想である「分散化」や「国境なき経済」とは無縁のものと考えられます。
2. 「打ち出の小づち」としてのトークン発行
彼らがトークンを発行する意義は、技術的な革新ではありません。
- BCGが失敗した「錬金術」: 実態のないゲーム内通貨を売って資金を集める。
- D2Cが狙う「新・錬金術」: 「将来の成功」や「ノウハウの価値」をトークン化して売る。 結局のところ、実業の利益を出す前に「未来の価値」を先食いして資金調達するための道具としてWeb3が利用されているのです。2026年を前に、これを「革新的」と呼ぶには、私たちはあまりにも多くのBCGの屍を見てきました。
第四章:2026年以降、何が起こるのか?(警笛)
海外CEXからの締め出しと国内BCGの全滅を経て、2026年の日本のクリプト界隈は、以下の3つの層に分裂していくでしょう。
- 「完全鎖国」層: 国内取引所とフィナンシエのような国内プラットフォームしか知らない層。彼らは「日本独自のWeb3」という心地よい言葉の中で、実質的には企業に管理された「ポイント経済」の消費者として生きることになります。
- 「DEX/自己管理」層: CEXがダメならDEX(分散型取引所)を使う、というリテラシーの高い層。しかし、彼らもまた、国内での法定通貨への出口(オンランプ・オフランプ)を常に監視され、脱税の疑いをかけられるリスクと戦うことになります。
- 「産業の空洞化」層: 本当に価値のあるプロジェクトや企業は、完全に日本を見捨て、最初からグローバル市場(ドバイ、シンガポール等)へ拠点を移します。「日本発のWeb3」という言葉自体が、皮肉なジョークと化す時代です。
結びに代えて:Web3という名の「無駄」への戒め
この2、3年のブームで私たちが学んだのは、「中身のないトークンは、規制と流動性の消失の前に、一瞬で紙屑になる」という厳しい現実です。
VCや事業主体は、トークン発行を「打ち出の小づち」と勘違いし、ユーザーは「P2E」という幻想に踊らされました。その結果が、現在の「CEXの日本人締め出し」と「国産BCGの大量死」です。
今行われている「D2Cトークンエコシステム」のような試みが、2026年にマッチしているとは到底思えません。それは、崩壊したBCGのモデルを、より巧妙な言葉(応援、共創、D2C)で包み直しただけに見えます。
日本のクリプトが「機能停止」していく様を見ている今の状態は、Web3という名の下に行われてきた「無駄な錬金術」に対する、最も健全なデトックス(毒出し)期間なのかもしれません。私たちは、トークンの価格や発行体の派手なプレスリリースに一喜一憂するのをやめ、「そのプロジェクトは、トークンがなくても価値があるのか?」という、最も基本的な問いに立ち返るべきだと考えます。



