CES 2026レポート AIは「機能」から「産業OS」へ──ラスベガスで見えた次の10年

CES 2026レポート。AIが「機能」から産業OSへ進化する潮流を解説。半導体競争の転換、パーソナルAIやPhysical AI、モビリティ・ヘルスケアの最新動向を整理し、日本企業が読み取るべき示唆と実装の要点が分かります。
はじめに:今年のCESは何が違ったのか
2026年1月、米ラスベガスで開幕した世界最大級のテクノロジー見本市「CES」。
会場で感じるのは、AIという言葉の意味合いが明確に変わったという事実だ。かつては「AI搭載」「生成AI対応」といった“流行語”が先行していたが、今年は違う。AIはもはや付加機能ではなく、製品・サービス・産業構造そのものを動かす中核=産業OSとして語られている。
本記事では、CES 2026の取材をもとに、国内のビジネスパーソンに向けて「AIの最新動向」と「日本企業が読み取るべきポイント」を整理する。
第1章:半導体競争の次元が変わった──AIチップは“部品”ではなく“思想”
CES 2026における最大の主役の一つは、間違いなくAI半導体だ。ただし、今年の議論は単なる性能競争ではない。
NVIDIA:AIプラットフォーム企業への完全転換
NVIDIAは基調講演で次世代AIプラットフォームを前面に押し出した。注目すべきは、GPU単体の性能ではなく、開発環境・モデル運用・エッジ実装までを一体化した思想である。
黄CEOが繰り返し強調したのは、「AIはクラウドだけのものではない」という点だ。AIはデータセンター、PC、ロボット、車載、家庭内デバイスへと分散配置され、全体として一つの知能圏を構成する。その設計思想が、CES全体に強く影響を与えていた。
AMD・Qualcommも追随、"AI前提設計"が常識に
AMDやQualcommも、PC・サーバー・エッジ向けにAI専用設計を進めている。重要なのは、もはや「AIに対応するかどうか」ではなく、「AIを前提に設計しているかどうか」が競争軸になっている点だ。
第2章:パーソナルAIの進化──“使うAI”から“察するAI”へ
CES 2026では、個人向けAIの方向性もはっきりと示された。それは、ユーザーが指示するAIではなく、文脈を理解し先回りするAIへの進化である。
ハイブリッドAIという現実解
複数のメーカーが打ち出したのが「ハイブリッドAI」という考え方だ。クラウドAIとローカルAIを用途に応じて使い分け、
- プライバシー
- 応答速度
- コスト
を最適化する。これは理想論ではなく、実装フェーズに入った現実的アーキテクチャとして提示されていた。
AIグラス・ウェアラブルの再挑戦
AIグラスやウェアラブルデバイスも再び脚光を浴びている。過去の失敗と異なるのは、
- 生成AIによる自然な対話
- 翻訳・要約・記憶補助といった明確な用途
が定義されている点だ。画面を持たない、あるいは最小限のUIで成立するAI体験は、スマートフォン依存からの脱却を示唆している。
第3章:Physical AIが本気を出し始めた──ロボットは"動くAI"へ
今年のCESで最も未来を感じさせたのが、Physical AI、すなわちAIが物理世界で行動する領域だ。
家庭用・業務用ロボットの質的変化
展示されていたロボットは、単なるデモ機ではない。
- 周囲環境を理解
- 人の行動を学習
- 継続的に最適化
といった特徴を備え、"使えば賢くなる"存在として設計されている。これは、生成AIとセンサー、制御技術の融合が実用段階に入ったことを意味する。
日本企業にとっての示唆
日本はロボット大国とされてきたが、今後はハードウェア単体では競争できない。AIによる学習・判断・連携を前提にした設計思想が不可欠になる。
第4章:モビリティとAI──クルマは「走るデバイス」から「判断する空間」へ
CESにおける自動車展示も大きく様変わりした。もはや主役はエンジンでもEV性能でもない。
車内体験の再定義
AIは運転支援だけでなく、
- 車内エンタメ
- 健康管理
- 乗員の状態理解
といった領域に広がっている。クルマは移動手段から、知能を持った空間へと変わりつつある。
第5章:ヘルスケアとAI──測るから“予測する”へ
CESでは医療・健康分野も存在感を示した。キーワードは「予測」と「予防」だ。
- 日常データの常時計測
- AIによる異常検知
- 生活改善へのフィードバック
医療機関の外で健康を守るという発想が、現実味を帯びてきている。
終章:CES 2026が示した本質──AIは“選択肢”ではなく“前提”
CES 2026を通じて明確になったのは、次の一点に集約される。
AIは導入するかどうかを議論する段階を終え、どう設計に組み込むかを問われる段階に入った
AIはコスト削減ツールでも、話題作りの装飾でもない。企業の競争力、産業構造、働き方、生活体験を根底から規定する基盤技術になりつつある。
日本企業にとって重要なのは、海外事例を追うことではない。自社の強みとAIをどう接続し、どの体験価値を再定義するのか。CES 2026は、その問いを突きつける場だったと言えるだろう。



