なぜBybitは日本居住者向けサービスを「クローズオンリー」にするのか? その裏にある規制とWeb3の構造理解

なぜBybitは日本居住者向けサービスを「クローズオンリー」にするのか? その裏にある規制とWeb3の構造理解

なぜBybitは日本居住者向けサービスを「クローズオンリー」にするのか? その裏にある規制とWeb3の構造理解

Bybitが日本居住者向けサービスを「クローズオンリー」に移行する理由を、金融庁規制とWeb3の構造から解説。海外取引所撤退の背景、日本市場への影響、Web3参加機会の縮小が意味する本質と今後の選択肢を整理します。

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  1. 11. 規制強化と「ライセンス主義」の現実
  2. 22. クローズオンリーが意味するもの
  3. 33. Web3の核心と「取引所依存」の矛盾
  4. 44. 日本がWeb3で置いて行かれると言われる背景
  5. 55. 規制は悪か? 冷静に読み解く
  6. 66. 日本が取るべき選択肢
  7. 7Web3は制度の中で育つのか?

2026年3月23日、日本居住者のBybitアカウントは「クローズオンリー」モードに切り替わります。つまり、新規ポジションの建玉は作れず、既存の資産を取り崩す以外のことができない状態です。7月22日にはすべての未決済ポジションが強制決済され、残るのは出金と暗号資産間コンバートのみとなります。これは単なるサービスの縮小ではなく、海外カンパニーが日本市場から事実上撤退する手続きです。

この動きは「予想の範囲内」と述べられている通り、ここ数年、多くの海外暗号資産取引所が日本の規制環境のもとで苦戦してきた延長線上にあります。

しかし この事象を「Web3から日本が置いていかれる」という文脈で考えると、単なる一企業の退場以上の意味が見えてきます。

1. 規制強化と「ライセンス主義」の現実

日本は金融庁の定める規制が世界でもトップクラスに厳しい国です。暗号資産取引所が日本居住者にサービスを提供するには、FSA(金融庁)の厳格な登録を受ける必要がありますが、Bybitはその登録を取得していません。これが根本原因です。

日本政府はここ数年で以下のような方針を打ち出してきました:

  • 無登録の海外取引所への規制強化
    日本居住者を受け入れる海外取引所に対し、警告やアクセス規制(IP規制やダウンロード制限)まで求める動きが強まっています。
  • 国内ライセンスの適用範囲の拡大
    日本国内でユーザーを受け入れる事業者に対して、高度な内部管理体制、顧客資産の分別管理、自己資本規制など厳格な基準が求められます。
  • KYC/住所証明(KYC2)強化
    居住者判定が曖昧な場合でも、日本居住者と見なされれば制限がかけられるという新たな運用が広がっています。

こうした規制強化は、暗号資産の利用者保護やマネーロンダリング対策というポリシーとしては整合性があります。ですが Web3の原則とされる「グローバルなアクセス性」や「非中央集権」とは明確に対立する部分も含んでいます。

2. クローズオンリーが意味するもの

Bybitのケースで特に注目すべきは、単なる「サービス停止」でないことです。「クローズオンリー」は、既存のポジションを取り崩す以外の事業活動ができない状態を指します。具体的には:

  • 新規ポジションの建玉・追加は不可
  • ほぼすべての金融商品・機能が停止
  • 一部銘柄間での資産コンバートと出金のみ可能
  • 7月には強制決済で全ポジションが整理される

これにより、日本居住者は実質的にBybit上での 投機的取引・流動性提供・デリバティブ取引 などWeb3投資の中心的なアクティビティを失います。一方で、出金と限定的なコンバートは残されているため、資産自体は取り戻せる設計ですが、日本居住者向けの活動機会は抑圧されてしまいます。

3. Web3の核心と「取引所依存」の矛盾

Web3はしばしば次のように定義・理解されています

  • インターネット上の資産・価値交換を分散化する
  • 中央管理者に依存しない金融サービス(DeFi)を実現する
  • グローバルな参加が可能で、参加障壁が低い

しかし現実には多くのユーザーが取引所(CEX)に依存しています:

  • 利便性が高く、オン・オフランプ(法定通貨↔暗号資産)が容易
  • 高い流動性とプロダクト(スポット/デリバティブ)を提供
  • スマホアプリ/UIの親和性から個人参加が拡大

日本居住者の多くもこのCEX依存の恩恵を受けてきました。ところが、規制によりCEXのアクセスが制限されると、そのままWeb3への参入障壁が上がり、ユーザーの排除が起こるのです。これはWeb3の“理念”と現実のルールがぶつかる典型例といえます。

つまり、Bybitの撤退は、単純に日本のユーザーが1つの取引所を失う出来事ではなく、
日本における「Web3参加機会」の縮小につながる制度的な変化でもあります。

4. 日本がWeb3で置いて行かれると言われる背景

ここで「Web3に日本が置いていかれる」という表現の意味を整理します。

(a)グローバル市場からの相対的退出

世界の多くの市場では、規制とイノベーションの両立を目指しつつも、海外カンパニーが国内利用者を受け入れています。日本ではこれがほぼ例外的に厳格なレベルです。
これが意味するのは

  • ユーザーは海外取引所を使えなくなる
  • 国内取引所だけが合法的に取引を提供できるようになる
  • 国内取引所は金融庁の厳しい基準を満たす必要がある

結果として、日本のユーザーはグローバルな取引量やプロダクト提供の中心地から物理的に離れた立場になる可能性があります。

(b)イノベーションと規制環境のアンバランス

多くの国はWeb3を成長戦略の一部と位置づけ、規制緩和・実証実験・サンドボックスなどで産業育成を図っています。一方で日本は、既存の金融制度を守る観点から規制を強化する方向へ舵を切っています。

この差が、日本のWeb3エコシステムを規制重視の枠内に閉じ込めるロジックを生んでいます。

(c)ユーザーエクスペリエンスの低下と国外資本の流出

Bybitのようなグローバル・プラットフォームが撤退することで

  • 利用者は流動性の低い国内取引所に移行せざるを得ない
  • 一部ユーザーは海外のプラットフォームやDeFiプロトコルを越境で使う(非居住IPによるアクセス等)
  • 日本国内のWeb3スタートアップやプロジェクトは資本・人材の流出が起こる可能性

といった「生態系全体への影響」が懸念されています。

5. 規制は悪か? 冷静に読み解く

ここまで規制の影響を中心に述べましたが、規制がすべて悪いわけではありません。 実際、投資家保護、マネーロンダリング対策、税制の明確化などは必要です。日本の厳格な基準は、海外で発生したハッキングや詐欺事件を背景に強まってきた事情もあります。

ただし問題は 「ルール設計が必ずしもWeb3の革新性と調和していない」 という点にあります。これが結果として、ユーザーの利便性や市場の競争力を削ぐ方向に働いてしまうリスクがあるのです。

6. 日本が取るべき選択肢

この現実を踏まえ、日本がWeb3で置いて行かれずに戦うためには、次のような包括的なアプローチが求められます:

  1. 規制とイノベーションの両立のための対話プラットフォームの形成
    事業者、学界、ユーザー、規制当局が建設的な議論を継続する仕組み。
  2. 国内ライセンス取得の簡素化とサンドボックス制度の活用
    海外企業が日本市場へ再参入しやすい制度設計。
  3. DeFiや分散型アプリケーションに対する技術中立的なルールの策定
    参加者が相対取引所以外で価値交換できる経路を保障。
  4. 教育とリスク管理の強化
    一般ユーザーがWeb3プロダクトのリスクと利便性を理解できるリテラシー普及。

Web3は制度の中で育つのか?

Bybitの日本居住者向けサービス終了は、一つの企業が市場から撤退した出来事ですが、同時に 制度・文化・経済がWeb3という新しい技術潮流とどう交わるのかという問いを突き付けています。

Web3そのものは規制の外にあるのではなく、制度設計と共進化する必要があります。

日本がイノベーションの恩恵を享受しながら利用者を守るには、今回のようなショックを単なる「失われた機会」として終わらせず、次のルールとエコシステムのあり方を再構築する契機とすることが不可欠でしょう。

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