2026年、Jリーグは何を変えるのか ――秋春制、60クラブ、そして“第二のJリーグ元年”

2026年、Jリーグは秋春制への移行と60クラブ体制を軸に「第二のJリーグ元年」を迎える。本記事では、制度変更の全体像と狙い、昇降格構造、欧州市場との整合性、雪国クラブや経営面の課題までを整理。Jリーグが地域リーグから産業リーグへ進化できるのか、その本質を解説する。
2026年、日本サッカーは静かに、しかし決定的な転換点を迎える。
Jリーグのシーズン制が、誕生以来30年以上続いてきた「春秋制」から「秋春制」へと移行するからだ。
一見すれば、欧州リーグとの足並みを揃えるための制度改革に過ぎない。
しかし、その本質は単なる日程変更ではない。
それは、Jリーグという産業構造、競技環境、地域社会との関係性を根底から書き換える「構造転換」である。
2026年は、そのための助走期間として位置づけられている。
2月から6月にかけて開催される特別大会では、J1とJ2・J3がそれぞれ別形式で戦うものの、昇降格は行われない。
リーグの時間軸を切り替えるための、いわば“空白の半年間”だ。
そして2026年8月、Jリーグは初めて「秋開幕」のシーズンを迎える。
2026/27シーズンは翌年5〜6月まで続き、冬季にはウインターブレークが設けられる。
欧州型のカレンダーを採用することで、移籍市場や国際大会との整合性を高める狙いがある。
60クラブ体制という「巨大リーグ」の意味
J1、J2、J3はいずれも20クラブで構成される。
合計60クラブという規模は、世界的に見ても例外的だ。
この巨大リーグ構造は、Jリーグの特異性を象徴している。
欧州の多くのリーグが、少数精鋭のトップクラブを中心に成立しているのに対し、Jリーグは「全国分散型」のモデルを選んできた。
それは単なるスポーツリーグではない。
地域社会、自治体、企業、教育機関を巻き込んだ“社会インフラ”に近い存在だ。
昇降格制度は、その構造を支える血流である。
J1では下位3クラブが降格し、J2からは上位2クラブが自動昇格、3〜6位のクラブがプレーオフを経て最後の昇格枠を争う。
J2とJ3の間でも昇降格が行われ、J3ではクラブライセンス制度が昇格の条件となる。
この「3昇格・3降格」を軸としたモデルは、リーグ全体に緊張感をもたらす。
優勝争いだけでなく、残留争い、昇格争いが常態化し、ほぼすべての順位に意味が生まれる。
Jリーグは、競技としての魅力を最大化する構造を選んだと言える。
秋春制がもたらす競技的メリット
秋春制の最大のメリットは、国際市場との接続性である。
これまでJリーグは、欧州リーグと異なるカレンダーで運営されてきた。
その結果、移籍市場のタイミングがずれ、選手の流動性やクラブの戦略に制約が生じていた。
秋春制への移行により、欧州の移籍市場と整合性が高まり、
日本人選手の海外移籍、外国人選手の獲得、ACL(アジア・チャンピオンズリーグ)への対応がより合理的になる。
また、代表チームの強化という観点でも、シーズンと国際大会の連動性が向上する。
Jリーグは、国内リーグであると同時に、グローバルなサッカー経済圏の一部として再定義される。
見過ごせない現実――気候と経営の問題
しかし、秋春制は万能ではない。
むしろ、日本特有の課題を露出させる側面の方が大きい。
最大の論点は、気候条件である。
北海道、東北、北陸、山陰といった雪国地域において、冬季の試合開催は重大な負担となる。
芝生管理、スタジアム運営、交通インフラ、観客動員――
そのすべてが、これまで以上に高いコストを要求する。
影響を最も強く受けるのは、J2・J3のクラブだ。
潤沢な資金を持たない地方クラブにとって、冬季運営は経営リスクそのものになり得る。
さらに、日程の過密化も避けられない。
リーグ戦に加え、カップ戦、ACL、代表活動が重なることで、選手の負荷は増大する。
戦力層の薄いクラブほど、その影響は深刻になる。
もう一つの課題は、ファン文化の再設計である。
日本のスポーツ観戦は、春の開幕と夏の集客に強く依存してきた。
学校行事、地域イベント、観光需要との連動も、春秋制を前提に構築されてきた。
秋春制は、その前提を崩す。
クラブは、観客動員モデルそのものを再構築する必要に迫られる。
競技リーグから産業リーグへ
それでも、Jリーグが秋春制を選んだ理由は明確だ。
国内市場だけでは、成長の限界が見えている。
放映権ビジネス、スポンサーシップ、選手移籍、国際大会。
すべてがグローバル市場と連動する時代において、
Jリーグだけが独自のカレンダーに留まり続けることは、競争力の低下を意味する。
Jリーグは、もはや単なる国内スポーツリーグではない。
アジア市場、さらには欧州市場と接続する“輸出産業”である。
秋春制は、その覚悟の表明だ。
第二のJリーグ元年
1993年、Jリーグは誕生した。
プロサッカーリーグという概念を、日本社会に根付かせた。
そして2026年。
Jリーグは、もう一度生まれ変わろうとしている。
60クラブ体制、3昇降格、秋春制。
それは制度変更ではなく、未来への設計図である。
成功すれば、Jリーグはアジア随一のリーグとなる。
失敗すれば、地方クラブから崩壊する。
2026年は、日本サッカー史における“第二の創業年”となる。
Jリーグは今、
「地域リーグ」であり続けるのか、
それとも「グローバルリーグ」へ進化するのか、
その岐路に立っている。



