海外法人を使わずに日本でトークンを発行する方法 日本法の枠組みの中で可能なスキーム整理

海外法人を設立せず、日本企業主体でトークンを発行する方法はあるのか。本記事では、日本の暗号資産規制を踏まえながら、トークン発行と販売の法的な違い、DEXを活用した流通の仕組み、国内企業が取り得るトークンモデルを整理。Web3プロジェクトを日本で進める際の法制度のポイントと実務上の注意点を分かりやすく解説する。
これまで多くの日本発Web3プロジェクトでは、シンガポールやケイマンなどの海外法人を設立し、その法人がトークンを発行するスキームが一般的とされてきた。理由は、日本の暗号資産規制が厳格であり、国内での販売や流通に多くの法的リスクが伴うためである。
しかし、海外法人を設立せず、日本国内の企業主体のままトークンを発行することが完全に不可能というわけではない。重要なのは、日本の法制度の枠組みを理解した上で、どの行為が規制対象となるのかを整理することである。本稿では、海外法人を使わずにトークンを発行する方法と、その際の注意点を解説する。
トークン発行そのものは違法ではない
まず重要な前提として、日本法ではトークンの技術的発行自体は違法とされていない。
トークン発行とは技術的には以下の行為を指す。
・スマートコントラクトの作成
・ブロックチェーンへのデプロイ
・トークン供給量の設定
例えばEthereumのERC-20規格などでトークンを作る場合、スマートコントラクトをデプロイすればトークンは自動的に発行される。
この行為はプログラムの公開行為に近く、日本の資金決済法では直接規制されていない。
規制対象になるのは主に以下である。
・暗号資産の売買
・売買の媒介
・顧客資産の管理
つまり問題になるのは
発行ではなく「販売」と「仲介」
なのである。
国内企業が発行主体になるケース
海外法人を使わず、日本企業がトークンを発行主体となる場合、最もシンプルな構造は次のようになる。
① 日本企業がトークン設計
② スマートコントラクトを作成
③ ブロックチェーン上で発行
この段階では特に規制対象とはならない。
例えば
・ゲーム内トークン
・コミュニティトークン
・NFTエコシステムトークン
などである。
ただし、この段階では単にトークンが存在するだけであり、金融商品としての販売は行われていない。
DEXを利用した流通
トークンを流通させる方法として最もシンプルなのがDEXである。
DEXとは分散型取引所であり、代表例には
・Uniswap
・PancakeSwap
などがある。
DEXでは、中央管理者が存在せず、ユーザー同士がスマートコントラクトを通じて取引する。
DEXで流通させる仕組み
DEXでは、取引のために
流動性プール
を作る必要がある。
例えば
TOKEN / ETH
というペアを作る場合、
・TOKEN
・ETH
を一定量プールに預ける。
これによってトークンの売買が可能になる。
DEXには上場審査がないため、技術的には誰でもトークンを流通させることができる。
日本企業がDEXを使う場合のポイント
日本企業がDEXを利用する場合、重要なのは
販売行為に該当するかどうかである。
例えば以下の行為は慎重な判断が必要になる。
・トークンを販売して資金調達する
・日本居住者に購入を勧誘する
・販売価格を設定して売る
これらは場合によって
・暗号資産交換業
・金融商品取引法
の問題となる可能性がある。
一方で、次のようなケースは比較的リスクが低いとされる。
・ゲーム報酬として配布
・コミュニティ報酬
・NFT購入に使用
つまり販売ではなく利用設計が重要になる。
海外CEX上場の可能性
日本法人が発行主体のままでも、海外中央取引所に上場すること自体は理論上可能である。
海外CEXには例えば
・Bybit
・KuCoin
などがある。
ただし、実際には多くの取引所が
・法人所在地
・法規制
・トークン販売履歴
などを確認するため、日本法人主体のトークンは審査が厳しくなる場合がある。
そのため、現実には
・海外財団
・海外法人
を設立するプロジェクトが多い。
日本国内取引所への上場
日本国内の暗号資産取引所にトークンを上場させる場合は、さらにハードルが高い。
国内取引所は
・金融庁
・日本暗号資産取引業協会
の審査を受ける必要がある。
代表的な国内取引所には
・Coincheck
・bitFlyer
・Zaif
などがある。
日本の上場審査は世界でも厳しいと言われており、新規トークンが上場する例は非常に少ない。
日本で可能なトークンモデル
海外法人を使わずに成立しやすいモデルは主に次の三つである。
① ゲームトークン
ゲーム内通貨として利用。
BCGやNFTゲームで多い。
② コミュニティトークン
DAOやファンクラブなどで使用。
ガバナンス投票などに使われる。
③ NFTエコシステム
NFT売買の決済通貨。
クリエイターコミュニティなど。
これらは投資商品として販売するよりも、サービス利用トークンとして設計することが重要になる。
日本企業のWeb3戦略
近年、日本企業のWeb3戦略は
IP × NFT × ゲーム に集中している。
日本は
・アニメ
・ゲーム
・キャラクター
といったコンテンツ産業が強く、トークンはそのエコシステムの一部として設計されることが多い。
まとめ
海外法人を使わず、日本企業主体でトークンを発行することは技術的には可能である。
基本的な流れは以下の通り。
① トークン設計
② スマートコントラクト作成
③ ブロックチェーンで発行
④ DEXで流通
⑤ 必要に応じて海外CEX上場
ただし、日本の法制度ではトークン販売や投資勧誘が規制対象となる可能性がある。
そのため、日本企業がトークンプロジェクトを行う場合は、
・利用用途の明確化
・販売方法の設計
・法務チェック
が不可欠となる。
Web3プロジェクトは単なる技術ではなく、法律・金融・テクノロジーの複合ビジネス
として設計する必要があるのである。



