『カイジVR』や『竹書房クエスト』など個性的なタイトルを開発する、ソリッドスフィア株式会社取締役社長小島圭介が目指すものとは!?

『カイジVR』や『竹書房クエスト』など個性的なタイトルを開発する、ソリッドスフィア株式会社取締役社長小島圭介が目指すものとは!?

来年10期目を迎えるソリッドスフィア株式会社の社長であり、開発のトップでもある小島圭介氏に、創業にいたる経緯や社名に込められた思い、開発会社を運営していく中での苦労話、さらにはこれからの課題や同社が目指す未来の姿について、大いに語っていただきました。(聞き手:コンフィデンス取締役 竹下和広)

小島圭介氏

ソリッドスフィア株式会社
取締役社長 小島圭介


ソリッドスフィア取締役社長。小学校2年生の時にファミコンと出会いゲームクリエイターを目指す。フォーティファイブ、マイクロソフト、ポリゴンマジック、パオン(当時)等でプランナー・ディレクターとして活躍したのち、2012年10月にソリッドスフィア株式会社を設立。コンシューマーゲームからアプリ、VRやARのツールまで幅広く開発を手掛ける。

竹下和広氏

株式会社コンフィデンス
取締役 竹下和広


ゲーム業界黎明期のSNKに入社し、同社欧州事務所代表に就任。その後、サミー、アクレイム、イグニッション・エンターテイメント・リミテッドで海外での実績を重ね、2011年、スタジオマネージャーとして関わった『エルシャダイ』を発表。現在は、株式会社コンフィデンスでゲームのトータル・ソリューション事業に携わっている。

小学2年生の時に出会ったファミコンが小島少年の人生を変えた!?

竹下和広(以下 竹下):小島さん、ゲーム業界は長いですよね?

小島圭介(以下 小島):ドリームキャストからなので、1998年からですね。
(※ドリームキャストの日本国内での発売は、1998年11月27日)

竹下:1998年ですか。私は1988年から業界入りなので、ちょうど10年違うんですね。

小島:格が違いますね。(笑)

竹下:いやいや… で、ドリームキャストでは何を作られたんですか?
 
小島:「世紀末アドベンチャー」って言っていた、ローンチタイトル4本のうちで、一番有名じゃない『JULY』(注1)っていうゲームです。私が作ったというより、初めて関わったゲームですね。

(注1)JULY …1998年11月27日、ドリームキャスト本体と同時に発売されたアドベンチャーゲーム。現代の日本を舞台に世紀末的なテーマの物語が展開する。発売元はフォーティファイブ。

竹下:なるほど、その当時はどちらの会社ですか?

小島:フォーティファイブ(注2)っていう会社でしたね。

竹下:フォーティファイブ? すみません、私でも聞いた事ないですね…。独立系ですよね?

(注2)フォーティファイブ…日本のゲーム開発会社。パブリッシャーとしては、ドリームキャストで発売され、のちにアーケードゲームやPS2にも移植された都営バス運転シミュレーター『東京バス案内』(とうきょうバスガイド)が有名。

小島:独立系ですね。その当時は、僕もまだ入社したてのぺーぺーだったので、会社の詳しいことはわからなかったですね。

竹下:そこで何をされてたんですか?

小島:プランナーです。

竹下:小島さんはもともとプランナーなんですね? 

小島:プランナーですね。僕は、小学校2年生の時にファミコンが発売されたんですけど 、もうその時からもうずっとゲーム業界に入りたくて。子供の頃からずっとゲーム作るんだって思っていたんですよ。

竹下:じゃあ、ゲームばっかやって親に怒られてたとか?(笑)

小島:でも、それが意外に我が家は寛容でして。(笑)本当はゲームをやってるんだけど、ちょっと賢そうな教育系のものをやったり、パソコンをやったりして、うまくごまかしていました。(笑)

竹下:成績には反映されてなかったんですか? 

小島:そうですね。成績はぜんぜんですね。(苦笑)

竹下:じゃあ、学校は専門学校とかですか?

小島:いや、大学には行きました。当時、ゲームの企画職ってめちゃくちゃ狭き門だったんですよ。倍率100倍とかだったので、アルバイトでも入れないくらい。

でも、プログラマーだったらスキルが必要で募集倍率が低かったので入れるかなと、普通のシステム・エンジニアをやって、プログラミングを覚えてから、プログラムもできる企画職として、入社したんですよ。
 

竹下:C++(注3)とかですか? 

小島:当時はCでした。

(注3)C++…C言語から派生した、汎用プログラミング言語のひとつで、1983年AT&Tベル研究所のビャーネ・ストロヴストルップによって開発された。「シープラ」や「シープラプラ」と読まれることが多い。

竹下:もう熱量を高くもっていたんですね?

小島:はい。熱量は高くもっていましたが、それでも落とされまくりました。

竹下:どちらのゲーム会社志望だったんですか? セガさんとか?

小島:セガにも行きたかったんですけども、一番行きたかったのは、絶対無理ですが、子供の頃からのあこがれの任天堂でした。

竹下:念願のゲーム業界に入って、ローンチタイトルもやりました、で、その会社には何年くらい在籍されたんですか?

小島:それでも2年ぐらいでしたね。

竹下:当時はおいくつだったんですか?

小島:まだ22か23歳ぐらいでしたかね。

竹下:で、そこやめて、その次はどうなったのですか?

小島:次は、マイクロソフトに行きました。Windows CEって、ドリームキャストのライブラリがあって、 その流れからXboxのゲームを作らしてもらえるって話で行ったんですけど、ぜんぜん作らせてもらえなくて。で、マイクロソフトは飛び出して、ポリゴンマジック(注4)さんにお世話になった…という感じです。

(注4)ポリゴンマジック…ゲーム開発のみならず、映像制作、映画の配信、舞台や演劇のプロデュースから最先端技術の研究・開発も行う総合企業。1996年設立。

竹下:ポリマジさんですか! そちらはどんな事をやっていたんですか?

小島:ポリマジではずっと開発やってました。

竹下:またプランナー?

小島:はい、プランナーもやりましたが、メインはディレクター職でした。

竹下:ポリゴンマジックさんは長かったんですか?

小島:いや、ポリマジもそんな長くなくて、3年くらいです。けっこうころころと会社は変わってます。そこからパオン(現在のパオン・ディーピー)さんに移って、次はディーピー(現在のパオン・ディーピー) って会社に移って、モバイル系の仕事をいろいろやらせて頂いたあと、独立して作ったのが今の会社(ソリッドスフィア)ですね 。

竹下:パオン・ディーピー(注5)にはどのくらい在籍されたんですか?

(注5)パオンディーピー…1999年株式会社パオンとして設立され、2015年に株式会社ディーピーと合併し、株式会社パオン・ディーピーとなる。データイーストの多数のタイトルの知的財産権を持ち、ライセンス事業を展開しつつ、多数のゲームやアプリを開発。自社プランドでは『エイリアンのたまご』(iOS/Android)、『ワールド オブ サマナーズ』(iOS/Android)、『日本語検定DS』(ニンテンドーDS)などをリリース。

小島:パオン・ディーピーには(併せて)10年弱在籍していたと思います。

竹下:なるほど。その後、ソリッドスフィアを創業するってことですね?

小島:そうですね。
 

ソリッドスフィアという社名に込めた開発者スピリットとは…!?

竹下:そもそもソリッドスフィアって、なんか名前難しくないですか? 英語に慣れてない人は「sphere」ってすぐに読めないんじゃないかなって?

小島:ソリッドスクエアや、ソリッド「ソ」フィアって間違われます。(笑)

竹下:ソリッドスフィアという社名は、どういうコンセプトから着想を得たのですか?

小島:そうですね。堅そうな単語2個の合体が強そうでいいな、って思っていて。ナリタブライアンとか、ディープインパクトみたいな…。それが元にあって、そこに何かイメージを入れたいって思って、アレですけど、僕の頭の形がsphere(球体)なんで、球体にした、と。会社のロゴも実は僕の頭の形なんですよ。いっそメガネのデザインも入れようかな、と思ったくらいで。(笑)

竹下:ご自身なんですね。(苦笑)

小島圭介対談風景2

小島:(笑)。

でもそんな理由だといろんな人に怒られそうなので、ちゃんと説明すると、僕は数学的なものが好きなんですが、調べてみると円とか球体には意外な性質があって、面白いんですよ。何か知られてない面白い性質を見つけるのはゲーム企画と共通しているな、と思っていたので、「球体」のイメージにしようっていうのは心の片隅にあったんです。

竹下:なるほど!

小島:でも、こういう話をしても「ふーん」って流されちゃうんで、こっち(自分の頭)の方がウケはいいかな、と。(笑)

竹下:いや、今グッときましたよ!

小島:ありがとうございます。

陣形でも円が一番強いとか、円や球体については中学校や高校で習ってすぐ忘れちゃうんですけど、結構おもしろいんですよ。

例えば、球の体積の公式(4/3πr³)を微分すると、球の表面積の公式(4πr²)になるんですが、円についても同様で、面積の公式(πr²)を微分すると円周の公式(2πr)になったりするのを自分で発見したときは「おおー!」となりましたね。(笑)

もちろんこんなのは理系の人には当たり前過ぎる話だと思うんですが、当時の自分の中では自分の知っている何かと何かが、また別のものでつながる、というのは非常に感動できるポイントでした。

なので、やっぱりこの何かと何とかが「つながる」感動というのは、ゲームの企画でも入れなきゃいれないものだと昔から感じていました。

竹下:「ソリッド」の方は、固いってことですか?

小島:もちろん3次元的な「固体」という意味もあるんですが、「固い」というより「信頼性のある」という感じですね。3Dもやりたかったので、2次元感を出したくなかったんですよ。ソリッドスフィアだと、略すと「SS」とか、語呂的にもいいかな、と考えました。

竹下:オシャレな響きですよね、「ソリッドスフィア」って。ただ者じゃないな、と思いました。やばいな、敷居高そうって。(笑) でも、最初聞いた時、僕はYMO世代なんで「ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー」(注6)を思い出したんですよ!

小島:自分もYMOは好きなので非常によくわかります。
ただ「ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー」はSSSですね。(笑)

(注6)ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー…細野晴臣、高橋幸宏、坂本龍一による音楽グループ、イエロー・マジック・オーケストラ(通称YMO)の2枚目のアルバムであり、同アルバムに収録された同名の楽曲でもある。

竹下:なるほど。そういう思い入れっていうか、着想が会社名にあるって言うのはおもしろいですね。今年で創業何年目になるのですか?

小島:来期で10期目ですね。

竹下:おお、素晴らしい! 生き残ってますね!

小島圭介対談風景3

10期目を前に、さらなる飛躍のためにM&Aを決断した理由

小島:生き残ってますね。まあ、かろうじて、ですけど。(苦笑)

今回、10期目に向けて、アイスリーデザイン(注7)っていう会社とグループ会社になって、業務提携とか協力体制でやっていこうといことで、会社の中身をより濃くしてこうという取り組みをしています。今まで泥臭いやり方で、頑張ってきたんですが、もっとスマートに、もっといいものをちゃんと量産できるというところを目指して、絶賛取り組み中です。

(注7)アイスリーデザイン…ソフトバンググループの最年少役員であった芝陽一郎氏が設立した、デザインとテクノロジーで新規ビジネスの創出を行う、グローバルなイノベーション企業。アプリやWebサービスの開発、UI/UXデザインから、組織開発等も手掛ける。2020年6月にソリッドスフィアを子会社化し、VR・ARコンテンツやソリューションを同社と共同で開発・展開していく、という発表を行った。

竹下:なるほど!

小島:そういうタイミングで、ちょうどこのお話を頂いたんで、これはもうカモがネギしょってじゃないですけど(笑)、ありがたいお話です。

竹下:会社の印象っていうか、社名からすると、ソフィスティケイトされた、おしゃれな感じ? ってありますよね。

小島:名前はかっこつけてますけど、実際は泥臭いんですよ。(笑) 

大手の会社とか実績や技術も持ってらっしゃる会社さんが多い中で、じゃあウチはどうしたら勝てるんだろう、と言ったら、できるだけお客様の求めるものに食らいついて、離さない、きちんとお客様が求めるものをホールドしていく、というところになってくる、と思うんです。そういう泥臭さが、ウリっていうと大げさですけど、それがウチの大きなアドバンテージになっているのは間違いないとは考えています。

竹下:泥臭いですね! 嫌いじゃないですそういうの。じゃあ、いまはむしろ、ゲームじゃないものをやってるんですか?

小島:「狭義のゲーム」じゃないものも、やらしていただいてますね。

自分が考えるゲームってエンターテイメントのひとつなんですが、たとえば「ツクール」シリーズとかは厳密にはゲ―ムじゃないゲームだったりしますよね。非ゲームでもエンターテイメントになるものはいくらでもあります。

そう考えていくと、本当に、いわゆるゲームではなくても、人を楽しませる、ワクワクさせる何かを作るっていうのも、広い意味ではゲームだったり、エンターテイメントだという考え方をしています。

そこから生まれたのが、「カイジVR」(注8)だったりするんですが、あれもゲームというよりは、カイジの世界観を追体験する、みたいなところに面白さがあると考えています。

(注8)カイジVR…福本信行氏の大人気マンガ「賭博黙示録カイジ」の「絶望の城編」の、鉄骨渡りのストーリー部分をゲーム化した『カイジVR~絶望の鉄骨渡り~』のこと。PlayStation®VR対応ソフトとして発売されたのち、iOS/Android版もリリースされている。

竹下:なるほど!

小島:こういう状況だったらこんな感じになるんだ、っていうのをプレイヤーに感じさせたいっていうところです。なので、今は、いわゆる xR 系(注9)っていうところ──VRだけでなく、MRや、ARも含めて──を手掛けて、世の中に対してエンターテイメント性のあるxRなども提供していくのが、ウチの役割かなって考えています。

(注9)xR …xR(エックスアール)とは、VRやAR、MRなど、現実世界と仮想世界を融合させる技術の総称のこと。ちなみにVRはVirtual Reality(バーチャル・リアリティー)=仮想現実、ARはAugmented Reality(オーグメンテッド・リアリティ)=拡張現実、MRはMixed Reality(ミックスト・リアリティ)=複合現実 のことを指す。

竹下:王道のゲームらしいゲームを、抑えてるわけじゃないんですよね?

小島:ゲームは、僕のベースにあるものなので、もちろんやっていきます。ただ、そこだけだと広がりがない、ということと、昨今ゲームは個人でも開発できるようになってきていて、ゲーム会社のアドバンテージっていうのが薄くなっちゃってると思うんですよ。

じゃあ、今後ゲーム会社っていうのが何ができるのかっていう時に、一般の人がリーチできないものっていうのを、常に追いかけて、それを応用していく、っていうところが、アドバンテージのひとつかな、と思ってるんで、その中のひとつがxRという感じですね。

竹下:xRのプロジェクトで走ってるものとかあるんですか?

小島:じつはちょうど、argo(アルゴ)シリーズっていう、xRをつかったシステムリューションが我々の製品としてあるのですが、その中で「argoオフィスガイドVR/MR」というプロダクトとをリリースいたしました!

・argo シリーズ (ソリッドスフィア公式サイト)
https://www.s-sphere.jp/argo


こういうコロナ下で、新卒の方や中途採用の方が簡単にその会社に来れない場合など、会社の雰囲気や環境、文字だけでは伝わらない情報を手軽に届ける仕組みとして、「オフィスガイドVR」を用意しております。

また、 会社訪問した時に「ウチの会社はこういうものやってるんですよ」っていうのを、紙でその内容を渡されただけだと、ちょっと味気ないですし、インパクトも弱いので、MR を着けさせてもらうと、3Dのガイドキャラクターが出てきて、演出と合わせて会社の説明をしてくれるという、「オフィスガイドMR」というソリューションもあります。

竹下:なんかそういうのって、動画とかあるんですか? 

小島:あります、あります。

【argo】オフィスガイドMR プロモーションムービー (YouTube)


竹下:なるほどね。最近ゲーム関係で何かやったとかいうのはあるんですか?

小島:ゲームとしては、この年末年始に向けた製品で「ねこパフェ~ねこやま店長の小さなお菓子屋さん~」というタイトルを自社製品としてリリースします。これは以前、LINE QUICK GAMEとして出してたんですが、今回アプリ版になって再登場というゲームになっています。

「ねこパフェ~ねこやま店長の小さなお菓子屋さん~」
https://neko-parfait.com/

竹下:あれ、自社パブもやるんですか?

小島:IPは、ライセンスさせていただいているんで。はい。

竹下:以前も同じ様なことやってませんでしたっけ?

小島:そうですね。なんかちょっと面白そうなネタは拾ってくるみたいなところです。

竹下:御社でライセンスを取りに行くんですよね? そういうことは、ふつう開発会社はあんまりしないじゃないですか。ライセンスを果敢に取りに行くってやりますね!

小島:そうですね。まあ、そこで失敗することも、けっこうあるんですけどね…。

ディスられているか褒められているのかわからない『竹書房クエスト』

竹下:たしか… 竹書房さんの「竹書房クエスト」(注10)でしたっけ? あれはいい味出してましたよね? 

(注10)竹書房クエスト…ソリッドスフィアが開発・リリースしたゲームアプリ。「ポプテピピック」の世界観を活かしたハチャメチャな設定や仕様、意表突く展開など、チャレンジングな内容で、いわゆる“バカゲー”。

小島:あれは、とがりすぎてしまって、誰も分からないところまでいってしまって…。(笑)

竹下:それでもって、けっこうディスられてたりして…。(笑)

小島:ただ、題材が「ポプテピピック」なだけに、ディスってるのか、ほめるためにディスってるのか、見極めができなくて。(笑)ユーザーの本当の声が分かんないんですよ。あれは。

竹下:あの続編とかは出す予定とかないんですか?
 
小島:そうですね、「竹書房クエスト」自体はまだ稼働してますけど、今のところ続編の予定はないです。

竹下:さっきの話に戻りますけど、「カイジ」とか、ああいうものを使って横展開とか、別のものはできないんですか?

小島:「カイジVR ~Eカード編~」とか出しても、誰もおもしろくないんじゃないかな、って。(苦笑)

竹下:それもそうだ。(笑)

小島:ただ、僕自身は作りたいネタがいくつかあるんですよね。

竹下:子供達にも楽しんでもらえる様なコンテンツが出来るとおもしろいですね。

小島:そうですね。ただ、子供の親御さんがどうしてもその眼の問題とか、気にされるんで、そのあたりがクリアになると変わってくるかな、と思いますね。

竹下:ですね…。VRは、目の近くに直接着けますからね。

小島:そうですね。なので、期待してるところとしてはMRですね。かぶって、実際の映像と重ね合わせて遊ばせる、っていうところがおもしろいかな、と思います。MRなら、親御さんが警戒するような健康被害もそこまで影響ないだろうと考えています。

竹下:ちなみに、業界には長くいらっしゃいますけど、ご自身がやりたいってことは、まだまだできてない、っていう感じですか?

小島:ぜんぜんできてないですね。やりたいことの中で少しでも実現できた、っていうのは、会社をやってみて、自分の企画したゲームをリリースできた、っていうことくらいですね。ただ繰り返しになりますが、自分の理想には程遠い状態なので、もっともっとサイクルを早くして動いていかないと、業界の流れが速いんで、ウチとしては、というか、僕としてですね、理想に近づけないと考えています。

竹下:モバイルの方は、ソシャゲが出て、GREE(注11)さん、DeNA(注12)さんのゲームから、「パズドラ」とか、いろんなタイトルが出て、裾野が広がりましたけど、コンシューマーゲームってのは一回下降して盛り返したようなところがありますよね。PS5とかXboxのシリーズX, Sとかが出てきますけど、十年後の目で業界を見た時に、ゲーム会社ソリッドスフィアとしては、どういう波に乗りたいですか? どういう波に乗るのが一番面白いと思いますか? 

(注11)GREE…創業者の田中良和氏が個人で開発したSNSで、2004年創業したグリー株式会社によって本格的に運営されたのち、巨大ゲームプラットフォームとなる。『釣り★スタ』や『探検ドリランド』など多数のアプリが人気となる。ここでは、グリー株式会社のことを指す。

(注12)DeNA…南塲智子氏が1999年に設立した有限会社ディー・エヌ・エーとして誕生。モバイルによるeコマースを手掛け、2006年にゲームサービス「モバゲータウン」を開始。『メギド72』、『マリオカード ツアー』『ポケモンマスターズ』などをリリースしている。

小島:考え方としては、「歴史は繰り返す」じゃないですけど、このプラットフォームやジャンルなど、これが面白いぞ、ってなった時に、だんだんつまらないゲームが出てきて、するとまた別のものが上がってきて、こっち方が面白いぞ、っていう繰り返しがありますよね。

スーファミが面白いって思っていたのに、だんだん満足度が下がってきて、そんなタイミングでPS が出てきたり、あるいはPS3などハイエンドグラフィック全盛の時から、今度はグラフィックレベルが各段に下のスマートフォンが出てきたりしました。こいう動きは長年に渡って見ていると、次々に新しい波が押し寄せて、どういう波が来るかはなかなか予想が難しいというのが正直なところです。

ただゲームの中身、面白さのコアな部分って、昔我々がパソコンとかファミコンとかで実現していた面白さを別の方法で表現し直した、というものが非常に多かったと考えています。

だから、そういう次の流れに乗るためには、ゲームの本質をしっかり押さえた上で、かつ表現手段として新しいものを常にキャッチアップしていかなきゃいけないなと考えているので、まずはウチの軸をxRに置こうと考えています。

小島圭介対談風景4

竹下:興味深いですね〜。

小島:正直、まあxRが現時点で世の中に普及してるかっていうと、全然そんなことはないので。

竹下:あと、コロナですよね。

巣ごもり需要だとかいうのに恩恵を受けて、ゲームだとかサブスクリプション形態の、映画の配信だとかも、いろんなところでパラダイムシフトが起きている。その部分で、たぶん、創業10年目にしていろんな環境も変わって、ご自身の会社の方も、ゲーム一辺倒じゃなくて、いろんな見せ方を提案するような開発とかをやられていて、すごく幅が広い。

その一方で、これがソリッドスフィアだっていう、十八番みたいな、そういう部分っていうのは、今xRなのか、それがどうエンターテインメントと融合して、ゲームとして楽しめるのか、っていうところはどうですか? 

ソリッドスフィアの強みは「泥臭さ」とxR!?

小島:そういう意味では、先ほど言った「泥臭さ」もあるんですが、端的に言えば「小回りの利く開発体制」というところでしょうか。

やっぱり、掴んで離さないみたいなところを凄く重要視したいんですよ。でも、そういうことはプレゼンにならない。実際一緒に仕事してみて佳境に入った時に初めてわかるものであって、まさに最初の取引のタイミングでは分からない状態なんですよね。

それともうひとつが、食わず嫌いをせずに何でも取り組んできた結果としての「幅広い開発実績」ですね。

たとえばVRとかMRのジャンルって、むしろ非ゲームとか、非エンタメの業界で使われていることの方が多く、建設業界だったり、医療だったり、教育関係だったり、いろいろあるんです。

ただ、そういう業界のプロダクトを見ると、システムはしっかり作られているんですけど、そこに、モチベーションを持って使ってもらう要素とか、UIを含めた使いやすさとか、おもしろさや楽しさみたいなものでクオリティをあげる工夫が皆無なものが非常に多いんですよ。

そうすると、そのシステムがせっかくいいものであっても、そこだけで終わってしまって、本当はもっと現場の人たちが使いやすいものだったり、作業効率が上がるものだったり、もっとこういう工夫を入れればスムーズにできたりするのにな、って感じることが多々あります。まさにスマホのアプリなんかがそうなんですけど、仕組みがあれば最も効率よく使えるか、というと、そんなことはなくて、使いやすかったり、ぱっと見のよさだったり、ボタンを押したときのわかりやすさとか、そういう諸々の要素が入って、はじめてプロダクトとして十分に機能していくと考えています。

我々がゲームに限らず、多種多様なデジタルコンテンツを幅広く開発してきたという実績が、結果的に非ゲームを含めたxRプロダクトの開発に大いに応用できると思うし、まさにこれこそがエンターテインメントとの融合だとも考えています。

竹下:なるほど。開発スタジオって、ゲームを企画して、例えば、パブリッシャーさんに持ち込んで、「いいね」って言われてお金もらって作らせてもらって、大ヒットしたら、それがインセンティブとしてお金になるとか、名声として次の仕事にまたつながっていくとか、ありますよね。

そこは、御社的には何を目指すのか? というと、いい開発をしてそれがヒットして、ということだけではなく、目指すところはそれひとつだけではないっていう感じですか?


小島:もちろん作品が売れて収益源になれば、その次の仕事に繋がりやすいとか、余裕ができて企画を考える時間が増えるとか、いろいろありますが、それは結果としての話であって、まずは作ったものを、手前であるパブリッシャーさんに喜んでもらって、その先のユーザーさんにも喜んでいただいてっていうことが大事だな、と。

それがあって初めて仕事として次に繋がっていくと思うので、まずはそこをきっちり固めていかないと、我々としては、最終ゴールである自分たちが作りたいものを作るというところに到達しないんじゃないかな、と思っています。

竹下:レベルファイブ(注13)さんみたいにどんどんどんどんIPを作っていってメディアミックスして、テレビ局や映画会社も巻き込んで、ということをやっている会社もありますし、トーセさんの様に黒子に徹して、どんな案件に対してもフルコミットして成功している会社もありますね。

(注13)レベルファイブ…元リバーヒルソフトの日野晃博氏が中心となり、1998年に設立。PS2用のRPG『ダーククラウド』が海外でヒット。その後『ダーククロニクル』、『ドラゴンクエストVII 空と海と大地と呪われし姫君』等を開発したのち、『レイトン教授』シリーズや『イナズマイレブン』シリーズ、『妖怪ウォッチ』シリーズなど、自社からリリースした作品が大ヒットを記録。本社は福岡。


目指すところっていろいろあるんだなって思うんですが、ゲームの開発会社って言うと、IPを作れる会社か、受託ででも200名300名抱えて、大手のパブリッシャーさんのシリーズものをやっていく、というのも、生き方というか生き様としては、アリなのかなと思うんですけど、御社はどっちを目指していますか? 

小島:最終的には前者を実現したいとは考えています。ただ、会社の安定という点を考えると、きちんとものを作れる開発会社としての側面は必要で、自社IPと受託開発は今は表裏一体だと考えています。

なので、僕としては「ゲームを作る理由」としてのアイデンティティを担わせてもらっているという感じでしょうか。

もちろん、一人で作っていくわけにはいかないので、その会社の基盤ありき、で新しいものもやる。ただ僕は、最後にひとりになっても、新しいものおもしろいものを追及していく側にいると思います。

竹下:なるほど。どちらかと言うと、安定のための仕事を確保して、皆を食わしていく、というより、ご自身はこう、常に旗振って、おもしろいものを探して、見つけたら、なんかこれをやりたい人は一緒にやろうよ、っていうことなんですね?

小島:ホント、そういう感じですね。もちろん皆を食わせていくのが最優先ですが、そうありたいと思っています。

竹下:そうありたい。それが、ソリッドスフィアらしさですね?

小島:社員からすれば、社長がなんかまた妄想語ってるよ、みたいなところは常にあります。(笑)

竹下:(笑)。なるほどね。それも、クリエイティブな会社としては重要でしょうね。

小島:ウチの社内にも、そういう人間がいないわけじゃなくて、クリエイティブな人間もいますし、僕も一緒にディスカッションをさせてもらったりしてるので、そういう意味では、いまウチの会社っていうのは、両方がいます。安定して開発を任せられるチームも当然おりますし、新しいことにアンテナを広げて、次こういうのやっていこうよ、っていうところにリーチしようとする人間もいるんで、そこはすごくバランスがとれてる会社かな、と思っています。

竹下:ちょっと話題としては離れますが、ゲーム業界に入ってびっくりしたこととか…?

小島:びっくりしたこと?

竹下:ゲーム業界にあこがれて入ったわけじゃないですか? これよかったなあって事と、これゲーム業界あるあるだけど、これちょっとやばかったなっていうのはありますか?

小島:やばいことしかないくらいですけどね。(笑)

ゲーム業界で仕事をしていくために必要なのは「熱量」

竹下:(苦笑) 。開発会社さんとして10年やってたら、何度か危機に直面してるはずですよね。たぶん2,3度は。

小島:ええ。そうですね。まさに。やばいかどうかわからないですけど、想像以上に才能というか、熱量が必要な業界だな、と今も感じています。

竹下:才能よりも熱量?

小島:そうですね。才能よりも熱量ですね。才能があれば、熱量はなくても大丈夫かもしれないですけど、才能って、みんなにあるわけじゃないんで、そんな時に「つかんで離さない」というか、「もういいや」にならないで済むためには、自分の中のコアの部分に熱を持ってないと厳しいかな、と。

ゲーム業界って、ゲームをプレイして楽しいからゲーム業界に行きたい、ってなるじゃないですか。でも、実際入るとゲームをプレイするのと作るのって、天と地ほどの違いがある。よく僕が例え話として言うんですが、ゲームって、滑り台で、滑ったら気持ちよく滑れるように出来てるから気持ちいいんだよ、でも、それを作るのって、滑る体験とは全く違うもので、作る過程そものが楽しめないと、やっぱり辛くなっちゃうだろうなぁって。

竹下:そうでしょうね。このギミック、みんな笑うだろうな、とか。にやにやしながら、作るっていうことですよね。

小島:ほんとそうですね。

いろいろな要素があるから、それが結果的にハズれてもしょうがなくて、それをいかに、なんか…まさにウチの「竹書房クエスト」とかがそうですけど、作ってる時に「これ入れたれ、これ入れたれ」みたいな感じになるんで、やっぱり、その過程が面白くないと、続けられないと思います。

それとは別に、企画に限らず、デザイナーさんでもとにかく描いてる時が時間を忘れられるとか、プログラマーさんもコードを書いてる時が俺のこのコードマジすごいなとか、おれすごいなとか思うくらいの熱量がないと、なんかこう、職業労働者になってしまうと、ただただ辛いだけになりがちだなあと何十年も見てきて、本当に感じましたね。

竹下:職業労働者として開発してる会社もけっこうありますよね。言われたとおり作りましたみたいな…。
勿論、いろいろな事情や難しい面もあるんですがね。



小島:我々がやっている、ほかの仕事と大きく違う点というのは、面白いかどうかっていう、この目に見えない要素を扱うところなんですね。その目に見えないものを扱うが故に、言われた通りに物を作っても、それの通りならないことが多いんですよね。

竹下:その通りですね。

小島:それを表現するために、どうするのかっていうのが、すごく難しくて、難しいがゆえに、熱量とか時間をかけないと生まれてこないものだと思っているんで、そこをすごく大切にしてますね。だいたい受託の場合、「言われたとおりに作りました」っていうと、クライアントさん、怒るじゃないですか。そうじゃない、みたいな(笑)。

竹下:逆に心配になりますね。(苦笑)

小島:そうじゃないところを「そうだね」「そのとおりだね」って言わせるためには、やっぱりその濃度をキチっと出して、ちゃんと相手に届けないと、 ユーザーさんにも届かないだろうな、って思います。

竹下:ということは、言われたとおりの話っていうのは、咀嚼して、ソリッドスフィアだったら「こういうふうにした方がおもしろい」っていうのは、あえて摩擦が起きても言うべきである、と?

小島:受託であっても言うのは言いますね。言った上で、それをお客さんが受け入れるかどうかっていう、そこの最終判断は、受託開発という仕事をやっている以上は、もちろんお客さんに委ねます。

竹下:なるほど。まあまあ、そこはちょっと、さじ加減というか、駆け引きがありますよね。おそらくね。

小島:そうですね。

竹下:クライアントさん側も、自信満々でこれが面白くないわけがない、と言われるものが、面白くなかたったりすることがありますからね…。そう言う意味では私も経験者です、はい。(笑)

小島:そうですね。そこは本当にボタンの配置1つとっても議論になりますね。

竹下:その人のプライドを傷つけないように、うまいこと、その人に気づきを与える、みたいな話に…。

小島:(笑)。それができれば、いいんですけどね。

竹下:ですよね〜。

小島:なかなか難しいですね。はい。

竹下:そういう面で開発会社としてのご苦労はあるということですね。

小島:そうですね。ウチに限らず、開発会社はどこも大変だと思います。

竹下:独立といえば、仕事がとれるとれないが厳しいですよね。

小島:僕も独立し立ての頃は、なんにも仕事がとれなくて、やっぱり前の会社ではそれなりに部長職とかやっていたんで、それなりに話を聞いてくれるっていう感じだったんですけど、それが外に出たとたんに…。まあ、よくはしてくれますけど、じゃあ、仕事があるかっていうと、そんなことはなくて。

もう、最初の半年間の売上が40万円でしたから。(笑)

竹下:40万は厳しいですね…。

小島:(笑)。僕は、逆にそれが自分の本質的な価値だなってわかったんで。

竹下:看板落としたとたんにね。ああやっておけばよかったことありますよね。

10期目の前にM&Aをした真の理由とは…!?

竹下:ところで、最近グループになられた、アイスリーデザインさんとはどういう経緯で?

小島:僕らが一緒になってシナジーが生み出せるような会社さんとM&Aをしたいと考えていたんですよ。

竹下:M&Aの会社さんにご相談されたとか?

小島:はい、知り合いの、会社に相談しました。それで、最終的にアイスリーデザインと出会って。そこには、今ウチの代表取締役会長の芝(陽一郎)がいたんですが、元ソフトバンクの最年少役員という経歴も驚きましたが、扱っている実績も大手ばかりで、「これはなんか、すげー、ウチらが持ってない何かを持っている会社だぞ…」と思って決めました。

竹下:一見ソリッドスフィアさんと結びつきにくい会社の様に見えますね。

小島:向こうは向こうでゲームやエンタメ事業に興味があって、一方ウチは彼らみたいな、スマートな仕事のやり方、ノウハウを学びたい、というところがあって、マッチングしたんですよ。

竹下:じゃあ、いい言葉で言うと、相思相愛で!

小島:今まさにその風の中にいるんですけど、ウチとしては、すごくよかったなあと思っているところです。

竹下:ゲーム会社の経営への関与はどの位あるんですか? それとも全く口出されないとか?

小島:いや、むしろ、口出してほしい、っていう感じなんですよ。今までの僕らのやり方では限界があったんで、そうじゃないやり方を取り込まないと、成長しないなと思ったんで。

竹下:良い関係性ですね!

小島:そういうスタンスでいるんで、逆に、モノを作る中身に関しては何も言わないです。会社のあり方とか、経営の仕方とかっていうところに関しては、彼らのやり方っていうのを教えてもらっている感じですね。

小島:うまく言語化できないんですけど、会社の形を、 というか、会社を「かたちづくる」のを今までと違う形で、しっかり立ち上げたいって思っています。

竹下:では、最後に今後のソリッドスフィアの、目標というか、抱負というか、をいただければ、と。

小島:なんか言い尽くした感はあるんですけど、やっぱり今までの単純な開発会社としてのソリッドスフィアから脱却するために、xR っていうところを軸として、ひとまず立ち上げたいというのがあります。

で、さらに、そこから冒頭からずっと話していた、企画としての面白さの付加価値っていうものを、自社でいずれ立ち上げたいと考えております。

竹下:なるほど。お仕事も絶賛募集中ということで!

小島:はい、大絶賛募集中なので、この記事をご覧になって少しでソリッドスフィアにご興味をもって頂けた方がいらっしゃいましたらお気軽にお声掛け頂けると嬉しいです!

竹下:コンフィデンスとしてもバックアップさせて頂きます! 本日はありがとうございました!

小島圭介氏対談風景5

(2020年12月7日 コンフィデンス 社内にて)
編集協力:ハナペン合同会社
 

【竹下&バカタールのアフタートーク】

竹下:加藤さん、ソリッドスフィアの小島さんて今回初めてですか?
加藤:初めてです。面白い方でしたね。あと、ゲーム愛がすごいってこと伝わってきました。
竹下:まさしく!だからずっとおつきあいさせて頂いています。ビジネスも熱いですが、一緒にいて兎に角、楽しい人なんです!
加藤:社長として会社の経営はもちろんやりつつ、根っこにはいつか必ずオリジナルゲームで天下を取るぞ! っていう強いクリエイター魂があるんだなあ、っていうのがよくわかりました。そこがカッコイイなと…。
竹下:なるほど!大絶賛ですね!ほかに何かありますか?
加藤:あと、さすがに表に出せないな、っていう昔の業界内輪トークがいちばんおもしろかったですね。(笑)
竹下:ああ(汗)、●●が××とか、△△が□■とか、それ書きますか?!
加藤:そこ伏字でお願いします!(笑)

加藤竹下アフタートーク
ガメモ編集部
ライター

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ガメモの編集部が持ち回りで取材して記事書いています。

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