実績証明NFT「JobPOAP」が生み出す未来の働き方【Web3インタビュー】
株式会社プロタゴニストより、スキル・キャリアの実績証明をオンチェーンデータで発行できる「Job POAP」のβ版が12月にリリースされました。今回は「実績証明NFT」としての「Job POAP」というサービスについて、またオンチェーンデータの社会実装がもたらすHR事業の未来について、CEOである吉田CEOにお話を伺いました。
株式会社プロタゴニスト 吉田 将人 CEO
本インタビューのポイント
- ブロックチェーン技術で「努力や経験を見える化」する
- 誰でもWeb3人材を見極められるサービスの開発
- オンチェーンデータを用いて、地道な努力を評価できる世界へ
真に求められるWeb3人材とは
――本日はよろしくお願いします。
――まず最初に、DesumeやJob POAP等の『Web3×HR』のサービスを開発するに至った経緯について教えてください。
吉田「一番の想いとしてはWeb3の分野でチャレンジしている企業や人を、HRの側面から応援したいという点です。」
―――具体的にはどういった事なのでしょうか?
吉田「今のWeb3業界では人事面(HR)が大きな課題になっていると感じています。Web3企業の採用のサポートを行う中でSNSを用いた人材発掘をしていたのですが、候補者の中には実績が不透明な方や、いわゆるプロフィールの『盛り』がある方もいらっしゃって、苦戦しました。」
吉田「Web3に取り組まれている会社様が最も求めるのはWeb3経験のある優秀な人材です。例えば、私がお手伝いしたGameFi企業を例にすると、企業はゲーム開発のエンジニア経験だけでなくGameFiで遊んだ経験のあることを求めていました。」
吉田「GameFiの企業だったら、実際にGameFiを遊んだことがある人材が欲しい訳ですが、そういった人材を見極めるには、従来の職務経歴書等では分かりませんでした。」
――実際に企業の立ち上げのサポートをしていく中で、Web3×HRへの課題認識や想いが高まっていったようにお話聞いていて思いました。
吉田「そうですね。私の場合は、たまたまGameFi企業の立ち上げに採用面で携わることになり、より企業側のニーズに合った形で人材を見極められないかと思ったのが、きっかけです。」
――ですが、先ほど仰っていただいた課題は、中々解決が難しい問題なようにも思えます。
吉田「この課題はブロックチェーンを使えば一部解決できる部分があります。例えば、海外のNFTプロジェクト等の採用事例を見てみると、ウォレットアドレスを用いてNFTやトークンの保有を見て、その人材のWeb3経験を参照していたんです。」
――なるほど、ウォレットアドレスさえわかれば、ブロックチェーンに記録されているデータを参照して、その人がどんなWeb3経験を有しているかが誰でも分かりますね。
「Desume」はWeb3の経験を可視化する
吉田「ただし、これらの作業は専門的な知識が無いと理解できない、非常に属人的なものでした。」
吉田「具体的にはまず、候補者からウォレットアドレスを教えてもらい、それをEtherscan等で調べます。そこに出てきたトランザクションが何を表すのかであったり、コントラクトの意味をある程度理解した上で、その方が良いのか悪いのかを確認していました。」
――お話を聞いているだけで、非常に難易度の高いことだと想定ができます。
吉田「はい。ですが、属人的なものでは意味がないので、このWeb3の経験を調べるにあたって、誰でも使えるフォーマットを目指して作ったサービスがDesumeです。」
――Desumeを使うことで、そうした専門的な知識が無くてもweb3のスキルや経験を可視化できるのですね。
吉田「はい。エンジニアやデザイナーみたいに特定のスキルを求められる職業だと、Githubのスコアリングだったり、ポートフォリオをわかりやすくまとめるサービスがあったりしますよね。それらのサービスのように、一目見ればWeb3のスキルが分かる。そんなWeb3特化のサービスを意識して作りました。」
実績証明NFT「JobPOAP」の新しさ
――実績証明NFTであるJob POAPはDesumeと地続きのサービスだと認識しています。そのようなサービスを開発するに至った理由を教えてください。
吉田「Desumeではオンチェーンの(ブロックチェーンに記録された)データを可視化できるようにしましたが、そのデータを活用するためにもWeb3の知識が必要だという点が次の課題でした。」
吉田「例えば、Web3のことを良く知っている方から見たら、そのNFTを持っていることでどんなユーティリティがあり、DAO等でどんな活動をしているのかが分かります。」
吉田「個人的にはそれだけの情報でも採用の決め手にできると思っています。ですが、ビジネスとして考えたときに、採用を担当する人事の方が求めているものはより実用的な証明でした」
――「A社のインターンに合格した経験」や「コンテストに入賞した経験」等ですね。
吉田「そこで調べ始めたのがPOAP(Proof of Attendance Protocol)です。イベントに参加した人が、実際に参加したことを証明できるような実績証明です。」
吉田「例えば、Web3の勉強会やイベントへの参加証明などの情報をPOAPとして閲覧できれば、採用する側としては助かりますよね。」
――どんなイベントや勉強会に参加したかは、その人のWeb3の適性を見るにあたっての一つの尺度になりますね。
吉田「POAPに留まらず、オンチェーンでより実用的な情報を増やそうとした際に、採用に直結するようなスキルを実績証明のNFTという形式で見れるようにしたのがJob POAPです」
――イベントに参加した、という情報よりも踏み込んだ「経験」を証明するNFTにしたもの、ということでしょうか。
吉田「そうですね。通常のPOAPはイベントの参加証明なのですが、Job POAPはアチーブメントのトークンだと思っています。成果物や、その人が実際にやったことを表すトークンにしたいです」
――実績証明NFTを使えばどのようなことが可能になりますか?
吉田「例えば○○という活動をしていた人、履歴書にのらないようなプライベートの経験を持っている人など、より具体的な条件でスカウトアクションを出来るようになります。個人の方も自身に紐づく形で実績証明を受けることが出来るので転職の際に自分のアピールポイントとして活用が出来るようになります」
――確かに、そうなると人事としては非常に判断しやすいですね。
吉田「そのためサービスの内容は非常にシンプルです。要するに誰でも誰かに対して、何ができるかを証明できるサービスなんです」
――証明する内容に制限はないのでしょうか?
吉田「ありません。Job POAPはフリーテキストで全部書くことができるので、なんでも証明できます。AのウォレットがBのウォレットに対して、人となりやできることなどを自由に証明できる形になっています」
――閲覧しやすくて、汎用性が高いサービスなんですね。
――誰かが証明をする、という点で非常に透明性の高いサービスであることがポイントだと思っています。客観性のある情報が得られるようになるのかなと思いました。
当たり前の日常を評価対象に
――聞いている限りだと汎用性が高く、Web3経験者の採用時以外でも様々な場面で活躍するサービスにように思われます。
吉田「そうですね。将来的には例えば新卒採用にも取り組んでいきたいと思っています」
――直感的に、Desumeは経験者採用と特に相性が良い印象があります。逆に、新卒採用ではどのように活用できると考えていますか。
吉田「いわゆるガクチカ(学生時代に力を入れたことの説明)が無くなる世界を作れる可能性があると考えています」
吉田「例えばWeb3の経営者と何回会ったかという情報は、僕ら採用する側にとっては興味深い情報です。同じ新卒でも経営者や営業の方と年間100人会ったことがある人と、そういった経験が無い人とでは配属の考え方も変わります」
吉田「そうした日常的な経験を実績の証明とすることで、採用側はより実際に求める人材に近い人を採用することができるようになると考えています。
――採用側が得られる情報が多くなる、ということですね。
吉田「はい。それに加えて情報の信頼性を高められる点も非常に大きなメリットです」
吉田「採用する際にガクチカであったりエントリーシートでの情報を精査するには限界がありますが、オンチェーンデータで実績を証明できれば採用側は安心して採用でき、学生側も自分の努力や実績を簡単に証明することができます」
真面目に努力する人が報われる社会へ
――プロタゴニスト様はオンチェーンデータの社会実装を重視している印象があります。
――オンチェーンデータの普及がどのような意味を持つのか、という点についてお聞きしたいです。
吉田「シンプルに言うと、やったことで人を見るように、見れるようになるのが一番大きいです」
吉田「私がよく考えているのは、努力や経験が見える化したい、ということですね。」
吉田「真面目に積み上げてきちんとやる方が好きなのもあるのですが、真面目に頑張った人が誰でも報われるような、スポットライトが当たるような仕組みを作ることに意義があると思い、積極的にそういった事業に取り組んでいます」
――得意分野に焦点を当てた人材評価ができるようになる事業、ということですね。
吉田「そうです。将来的にメタバースが普及したら顔も名前も場所も国も言語も関係なく、意気投合した誰かと何かを始めるときがあると思っています。そうしたときであっても相手を評価する基準としての役割を果たすのがオンチェーンデータだと思っています。」
吉田「実績がわかって、それが信頼できるものであれば、名前も顔も必要がなくなり、一緒に仕事をしたいとお願いすればいいだけになる、数年後の未来にそういう世界が来ると信じて、そのためにオンチェーンデータを使ったサービスを作っていきたいと思っています。」
――本日はお忙しい中お時間いただき、ありがとうございました。
埼玉県熊谷市に生まれる。
立教新座高校、立教大学異文化コミュニケーション学部卒業。
在宅主婦を活用した人材系・組織コンサルティング会社を経験。
2018年よりシード特化独立系VCに参画。
新規投資責任者として累計9.5億のファンドの運用、2019年には24社の投資実行に携わる。また、年間で2,000人以上の起業家ソーシングを実施し相談にのる。
2020年3月に独立し、スタートアップの採用労務支援を得意とする株式会社プロタゴニストを創業。