新しいものを生み出すジー・モードの挑戦 心に爪痕を残すゲーム「OU」とは?
ジー・モードはフィーチャーフォン時代から多くのゲームタイトルを手掛け、挑戦し続けるメーカーです。今回は、同社の新タイトルである「OU(オーユー)」の魅力や制作背景について、ジー・モード取締役 竹下様にお話を伺いました。
絵画のように美しい。ピクチャレスク・アドベンチャー『OU』
――本日はよろしくお願いします。
――この度リリースされた新タイトル『OU』はどのようなゲームなのでしょうか。
竹下様(以下、竹下と表記)「私達はこのゲームの魅力を端的に伝えるにあたって、『ピクチャレスク・アドベンチャー』というジャンル名を作りました。ピクチャレスクという言葉には、絵画のように美しいという意味があります。」
竹下「また『OU』は、いわゆる2Dの横スクロールタイプのアドベンチャーゲームという形ですが、普通のアドベンチャーゲームとは違います。最後までプレイしていただくと、まるで1冊の絵本を読み解いたかのような体験を得られる作品となっています。」
竹下「絵本や文学作品の中で語られる出来事はファンタジーであっても、読み手はそれを現実の自分自身の経験や記憶と照らし合わせて考えたり感じたりすることがあると思います。」
竹下「『OU』にも、この絵本や文学作品が持つ普遍性のようなものがあります。ユーザーに一方的に物語が伝えられるのではなく、ユーザーが自分自身の体験を通して物語を紡いでいく作品になっていると考えております。」
――同じ物語でも、読後感は異なる。ユーザーに強いメッセージを訴えかけるタイトルのように感じました。
『OU』の世界観とこだわり
『OU』は2023年8月31日(木)、Nintendo Switch™およびSteam®︎向けに配信が開始された。
以下は『OU』の世界観を表す公式の説明文である。
どこか遠い日々に見た、 おぼろげな景色のような世界・ウクロニア。
干上がった河原で、記憶を失くした状態で目覚めた少年「OU」。
尻尾に火をつけたオポッサム「サリー」に誘われ、自身の物語を追う旅に出かける。
彼を追う「サウダージゴースト」。
主人公と瓜二つの「ジェミニ」。
悲劇に誘う「泣き女」。
様々な存在と出会いながら、物語とその結末は変化していく。
懐かしい児童書の挿絵のような柔らかなペンで描かれた世界。
どこか郷愁感のある、ギターをはじめとした楽器の演奏による音楽。
そこで展開するのは「だれかのための物語」
現実との接点を持ち、アドベンチャーゲームの形をした「何か」。
「OU」はゲームに対する一つの挑戦でもあります。
キャラクター、背景、その中にある植物や石、昆虫など、その全てが精細な手描きの世界。原画は1本のボールペンで描かれ、懐かしさを感じるセピア調の着彩が施されている。
音楽は、ギターなどの生演奏。それらはゲームの展開やシーンごとに湧き起こる感情に合わせて紡がれる。
不思議だけど懐かしい、暖かみのある世界観。そして、自分が選んだ行動によって変化する展開と結末。
一言で「ゲーム」と定義されない、あなただけの体験を提供する作品である。
Steamストアページ:https://store.steampowered.com/app/1633430/OU/
My Nintendo Store:https://store-jp.nintendo.com/list/software/70010000066765.html
公式サイト:https://gmodecorp.com/cs/ou/
YouTube:https://youtube.com/playlist?list=PLe9fzo_FsHpRkRm-xd24oHbJsO5BpbsTn
クリエイターの作家性と実績を信じ切ったものづくり
――『OU』の独特の世界観は、どういったところから生まれたのでしょうか。
竹下「本作の企画・シナリオ・アートを担当したクリエイターの幸田御魚(こうだ おさかな)さんが一番最初に着想したのが、彼が元々好きだったミヒャエル・エンデという児童文学作家です。『もし、エンデがゲームをつくったら?』という思考からはじまったと聞いています。」
竹下「また、オリジナルのゲームを作るなら今まで誰も手をつけていないようなテーマや表現でやりたいという思いがありましたが、ヨーロッパなどの文学作品の挿絵のようなタッチでいこうというアイデアも最初に幸田さんから提案がありました。」
竹下「そして今回のプロジェクトは『幸田さんが作りたいものを作ってもらう』ということもテーマでした。」
――メインクリエイターに大きな裁量を与えることは、非常にチャレンジングなお取組みだと感じます。
――幸田さんを起用し、任せようと決めたきっかけは何だったのでしょうか。
竹下「小規模でも尖ったものを作りたいと思ったのです。経緯としては、私がジー・モードに参加してから取り組んできた、自社の既存タイトルなどを活用していく事業が軌道に乗ってきたところで、何か新しいことをやってみようということになりました。」
竹下「とは言え、時間も予算も無制限なわけではない。であれば、小規模な作品でもプレイした人の心に強く残るものにしたいと。そこで幸田さんにオファーしようと考えました。」
竹下「幸田さんは、以前からジー・モードのタイトルを開発会社の立場で作ってくださっていた方でした。過去の作品の中でも、ユーザー様から『復活リクエスト』が来るタイトルの多くに、彼の名前がありました。」
――御社の作品の中でも、特にユーザー様に愛される作品を作ってこられた方なのですね。
竹下「入口はそこですね。その後、気になって彼の様々な作品を見ていく中で、その作家性や個性に非常に魅力を感じていました。」
竹下「アーティスティックであることとゲーム作りを完遂させることは別の才能である部分も多いのですが、幸田さんに関しては、非常に限られた時間と予算の中で、フィーチャーフォン時代のゲームを何本も完成させてきた方です。そのような経験が豊富だったことも、幸田さんへオファーし、おまかせして良いと思った理由です。」
――「新しいもの」を体現できると確信したクリエイターの創造性を最大限生かすため、表現について全面的に任せるという挑戦的なご決断をされたのですね。
――私自身もプレイしている中で、素晴らしい世界観の作品に仕上がっていらっしゃると、いちユーザーとしても感じました。
誰の心にも強く爪痕を残すゲーム
――どのようなユーザーをターゲットにして開発されたのでしょうか。
竹下「特にターゲティングは行っていません。『こういうユーザーをターゲットにしたいからこういうゲーム作ってほしい』と幸田さんにリクエストしたわけではないんです。」
竹下「なので『こういう人たちにぜひ遊んでほしい』というよりは、幸田さんの作りたいと思っているものや持っているものありき、というのが前提でした。」
竹下「ゲームの方向性について私が最初に彼に言ったのは、賛否両論があってもいいから、遊んだ人の心に忘れられない記憶として爪痕を残すようなものであってほしいということです。」
――ターゲットを絞っているわけではないので、幅広い層の方に体験してもらえるゲームになっているのですね。
竹下「そうなっていると思います。例えば子供の時に読んだ文学作品は、大人になるとまた違う発見や感想が出てくることもありますが、『OU』もまさにそういう作品になっています。」
竹下「ユーザー自身が経験してきたことにより、最後までプレイした時の見え方や捉え方、感じ方が変化します。」
竹下「ですので、尖っていながらも、是非どのような方にも読み解いてほしい作品になっています。」
――画面の中で起こることは同じであっても、ユーザーそれぞれのバックボーンによって見え方や湧き起こる感情は異なる作品なのですね。
――確かに、Steamのユーザーレビュー等を見ても、見る人によって感想が大きく異なるなと感じています。
――『アートなどは好きだけどゲームはあまりプレイしない』という方でも、『OU』は芸術鑑賞と同じように楽しめそうです。
ジー・モードの歩みとOUの今後について
――ここまで『OU』についてお話を伺ってきましたが、ジー・モード様として伝えたいことなどはございますか。
竹下「2年前に記事にしていただいた時、今後の取り組みについてお話ししました。あの時点ではまだ細かいことは言えなかったのですが、その正体がまさに『OU』でした。」
――以前GAMEMOでインタビューさせていただいた際、新しい取り組みを計画されていることについてもお話しされていましたね。
竹下「今後も『OU』のようなオリジナル作品を手掛けていきたいと思っていますし、『G-MODEアーカイブス』(フィーチャーフォンゲームアプリ復刻プロジェクト)などのプロジェクトにも引き続き取り組んでいきますので、ジー・モードという会社としても是非注目していただけると嬉しいです。」
――『OU』も好評のお声が多いようなので、今後も楽しみです。
竹下「ありがたいことに、最後までプレイした方の非常に熱烈な感想などを読ませていただいております。それを見た限りでは、私たちが作り上げたものはやはり間違っていなかったという確信を得ているところです。」
竹下「他の言語対応やアップデートなども予定しておりますので、是非楽しみにお待ちください。」
竹下「少しでも作品が気になった方は手に取って遊んでみてほしいですし、気に入ったら是非他の人にもおすすめしていただけたらと思います。」
――本日はお時間いただきありがとうございました。
株式会社ジー・モード 取締役 竹下 功一様
ハドソンで『北へ。』などの開発に携わったのち、新規事業としてモバイルゲームの世界へ。
その後クルーズ、ギークスなどを経て、ジー・モードに入社。
現在は取締役兼事業統括本部長を務める。『ぐんまのやぼう あなたもわたしもぐんまけん』、『鳥魂~みんなでチキン度診断~』、『みんなで空気読み。』、『G-MODE アーカイブス』シリーズなどを手がける。
株式会社ジー・モード
PC・モバイルコンテンツ市場を中心に事業展開を行っているゲームコンテンツの企画・開発メーカー。アーケードやコンシューマゲーム機で人気を博した「データイースト」タイトルのライセンス事業も行っており、2018年より、新たにNintendo Switch™️をはじめ、コンシューマゲーム機への自社タイトルおよびインディクリエイタータイトルのパブリッシング事業を開始。
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