NFTの「チュートリアル」を作り、安心・安全な市場形成を目指す 「NFTリテラシー検定」のチャレンジ|株式会社ディー・エヌ・エー
業界大手「株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)」様のWeb3領域への新たな試みとして、「NFTリテラシー検定」がリリースされました。
サービス内容や、見据える目標について、デジタルエンターテインメント事業部企画部の石岡様と陶山様にお話を伺いました。
NFTリテラシー検定とは
――本日はよろしくおねがいいたします。
――まずは『NFTリテラシー検定』の概要を教えていただけますでしょうか?
石岡様(以下、石岡と表記)「『NFTリテラシー検定』は、NFTに興味を持っている方や、これからNFTを触っていこうと考えている方に向けて提供させていただいているサービスです。」
石岡「本サービスでは、ブロックチェーン活用サービスを利用する上で必要なウォレットや詐欺被害対策の知識を、クイズ形式で学ぶことができます。」
石岡「具体的には、暗号資産やNFTはどういうものなのかという解説の後に問題が用意されており、eラーニング形式で答えていく仕様となっています。」
石岡「今回の検定の問題数は全部で16問。これら全てに合格すると『合格証NFT』が手に入ります。」
石岡「また、他のNFTプロジェクトの施策として、そのプロジェクトのユーザー様にNFTリテラシー検定を受講していただくことも可能です。」
石岡「具体的にお話すると『合格証NFT』を手に入れたユーザー様へ、他のプロジェクト様が特典を用意したり、保有者限定でNFT販売の優先権を与えたりすることなども可能ですので、ぜひこのサービスを自由に活用していただければと思っております。」
――単なる「検定」ではなく、非常に運用の自由度の高いサービスだと感じました。
――NFTプロジェクト様や企業様サイドで、色々な活用方法がありそうです。
NFTの詐欺被害を防止
――「NFTリテラシー検定」は、「ユーザーのリテラシーを上げる」という非常に独特なサービスだと感じます。
――「NFTリテラシー検定」を作ったきっかけを教えてください。
石岡「まず前提からお話すると、弊社は元々LINE様のプラットフォーム上(LINE Blockchain)で3つのNFTサービスを運営しております。」
石岡「LINE Blockchainでは、『パーミッションドブロックチェーン(これは許可された人のみがブロックチェーンを操作できるシステム)』を採用しています。」
石岡「なので、LINE Blockchainでは、悪意を持った第三者がNFTを提供することが出来ません。」
――今まではLINE様のプラットフォーム上でNFTの事業をされていたのですね。
石岡「はい。ただNFTプロジェクトの多くはイーサリアムをはじめとした『パーミッションレス』な形態を採用しています。DeNAもそこへチャレンジしようと考えていました。」
――『パーミッションレス』ということは、LINE様のプラットフォームと異なり、悪意のある第三者が介入してくる可能性もあるということですね。
石岡「そうですね。そこでNFT市場の全体を見てみると、『詐欺被害』という言葉だけが先行して広まり、NFTのイメージそれ自体が悪くなってしまっている状態がありました。私たちがチャレンジするには、この状況(NFT≒詐欺被害)を改善しないといけません。」
石岡「そこでまずはユーザー様へ最低限の知識提供を行うサービスが最初に必要だと感じ、本プロジェクトが立ちあがりました。」
――NFTによる詐欺被害をなくしたい。そのためには、広くユーザーに知識を持っていただくことが大事。NFTリテラシー検定はそのような流れで始まったのですね。
石岡「そうですね。最低限のリテラシー知識を提供することが第一です。」
石岡「ですが一方で、既に多くの企業がNFTを発行していますので、そういった既に発行されている魅力的なものに触れるためのきっかけにしていただければ良いなと思っています。」
――なるほど。NFTに触れるユーザーが一番初めに『NFTリテラシー検定を受けよう』となれば、既に発行されているNFTに触れる窓口にもなりそうです。
NFT中級者でも「意外と知らない」事がある
ーー初心者の方だけでなく、NFTの知識がある方も利用対象になるのでしょうか?
石岡「はい。NFTがブームとなった際に、早くから購入や販売をされていた方にリテラシー検定を受けていただいたところ『意外と知らないことがあった』というご意見をいただきました。」
石岡「やはり、どうしても機会がないと学べないですし、学べないまま気がついたら詐欺被害に遭ってしまった、というようなことが少しでも減らせればいいなと考えています。」
――NFTに限らず、「知っているつもり」であることが一番危ないですからね。
「チュートリアル」に代わる存在へ
――サービスをスタートされた後、評判はいかがでしょうか?
石岡「多くのお客様から、『非常に楽しく学べた』というご意見をいただきました。また今回、イラスト制作をさいとうなおき先生にお願いしておりますので、さいとう先生のファンの方からもご好評の声をいただいております。」
――広い範囲で反響があったのですね。
石岡「そうですね。リリースした後に、こういう反響があるのだな、と思うことが多くありました。」
石岡「例えば、ある事業者様は、NFTの詐欺被害対策として、Discord上でチュートリアルを実施していました。」
石岡「しかし、こういったチュートリアルはユーザーに確認してもらえないことが多く、困っていたそうです。」
――確かに、そういったチュートリアルは「読み飛ばし」がちです。
石岡「はい。すでに事業者様は、チュートリアルに代わるものとして、NFTリテラシー検定の利用を検討いただいております。」
――貴社のサービスでしたら、単なる検定ではなく「合格証」としてNFTが貰えるので、そこが普通のチュートリアルとは違う所ですよね。ユーザーにとってのインセンティブが付く。
陶山様(以下、陶山と表記)「そうですね。あとは、NFTプロジェクト以外のWeb3プロジェクトを行う事業者様からも反響をいただきました。」
陶山「プロジェクトの運営意図をユーザーさんに理解してもらいたい、または我々と同じく、ユーザーさんにより安全にブロックチェーンの世界を楽しんで欲しいと願う事業者様より、『独自クレデンシャルの発行場所として検定を利用したい』というお声を数多くいただいております。」
――非常に幅広く貴社サービスが使われていることが分かりました。
NFT市場全体へ貢献したい
石岡「NFTは、一部で『二次流通の相場がプロジェクトの盛り上がりを図る指標』とする考え方があります。そのため、プロジェクト内で流出や詐欺被害が起き、盗難されたNFTが二次流通で安く売買されると、プロジェクトの価値が下がったと思われてしまうようです。」
石岡「そういったプロジェクトのネガティブなリスクを解決することが、各企業の課題としてあります。NFT詐欺被害はその中の一つです。リテラシー検定は、その課題を解決する手段としても使っていただけます。」
ーーNFTリテラシー検定には社会的意義もあるのですね。
石岡「私自身ブロックチェーンが好きなので、好きなものを勿体ない形やネガティブなものにしたくないと思っています。」
石岡「NFTを発展させることで、そこからまた新たな技術が産まれる可能性もあるので、それを潰したくないとも思っています。陶山も同じ想いです。」
陶山「はい。プロジェクトを始めたきっかけのお話に戻ってしまうのですが、パブリックチェーンでサービス提供をしようと考えたときに『ユーザーさんや事業者にとって何が一番深い問題なのだろうか?』と考えました。そのときに真っ先に考え付いたのが詐欺被害の問題でした。」
陶山「詐欺被害により、ユーザーさんはもちろんですが、事業者側にも損害が生じてしまいます。詐欺に遭われた方が一人でも出てしまうと、そのプロジェクトの信用毀損に繋がる可能性があるのです。」
陶山「実際に話を伺ってみると、NFTプロジェクトのオーナーさんや事業者の方が困ってらっしゃる事実が明らかになりました。」
陶山「一企業として利益を創出することも重要ですが、この業界は数多のビルダーが集団的利益に貢献することで成長してきた歴史があります。そのため、我々も重要なそこ(NFT詐欺被害の問題)をまずは解いて、経済圏に貢献したいし、するべきである、という気持ちです。」
ノンストレスな構造
ーーNFTリテラシー検定の制作を行った際に一番意識した所を教えてください。
石岡「検定をブロックチェーンで、しかもパーミッションレスでやるとなると、答えが丸見えになってしまう問題がありました。そこでまず、『ゼロ知識証明(ZKP:zero knowledge proof)』の技術を使うことが最初に決まりました。」
石岡「次に、どうすれば受講者にテストを楽しんでもらえるかということを、色々な方式で検討しました。その結果、ゲームのレベルデザインにおけるストレスと報酬の考え方(※)をなるべく検定の中でも活かせるように、効果的にリズムを作っていこうということになりました。」
※乗り越えるべき負荷(ストレス)と報酬のバランスをデザインすることでプレイヤーのモチベーションを維持するようなレベルの作り方
石岡「その中で考えたものが、2ページ程の短いテキストを読んで回答をする、というリズムを繰り返す形式でした。」
――確かに、短い文章の後にすぐ回答ができる構造はノンストレスでできそうですね。
石岡「自分はゲーム開発出身でして、数回の会話イベントがあったら1回は操作を入れる、ということを意識した制作を当時行っていました。」
――そのご経験を活かして、検定でもUXに配慮をされているのですね。
石岡「そうですね。全体の構造を決めるために、まずはUXの方針をしっかりと定めました。」
石岡「その後、どういう導線が良いのかを考えました。NFTリテラシー検定のサイトのトップにはウォレット接続ボタンが表示されているのですが、ウォレットを持っていなければ接続自体ができません。」
石岡「なので、まず『はじめに』のような(サイト利用方法やウォレット接続方法の説明に誘導する)ボタンが必要になります。そのようにユーザーさんにとってわかりやすい導線を工夫していきました。」
――Web3プロダクトに初めて触れる方でも容易に受け入れられるような、非常にわかりやすい導線になっているのですね。
――こういった「手触りの良さ」を設計されるのは、今までモバイルゲームの世界で培ってきたDeNA様のノウハウが活きていると感じます。
――ユーザー目線だと、さいとう先生のNFTが手に入るのも一つの魅力ですよね。
石岡「はい。非常に可愛らしいイラストを描いていただきました。更に色々な表情やパターンのあるSDキャラクターを節々に入れることによって、なるべく文字だけの画面を作らないようにしています。」
【NFTリテラシー検定 サービス スタート!】
— 【公式】NFTリテラシー検定 by DeNA (@NFTCollect_DeNA) October 26, 2023
『リテラシーをミントしよう!』
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石岡「リリース当初は、ガス代の問題でサービスを一時停止する事態となってしまいました。その際はお客様にご迷惑をおかけしてしまい、申し訳なかったと思っております。」
石岡「ですが、今はガス代問題を解決するためにポリゴンチェーンを利用しています。ポリゴンチェーンであればガス代は大きく下げることができます。」
石岡「さらに、ポリゴンチェーンのMaticをお客様がゼロから調達するハードルも高いので、ガスレスにしました。」
石岡「それにより、お客様に費用面の負担がかかることなく、暗号資産も用意せずに、まずは気軽に検定を受けてNFTを知ることができるようになりました。このような現在の状態を作ることができ、結果的には良かったと思っております。」
石岡「現在の状態であるからこそ、お客様も安心してミントしてくれていると思います。」
多くのステークホルダーと連携し、NFTを盛り上げる
ーーこれまでのサービス展開と、今後の展開についてお聞かせいただけますでしょうか?
陶山「リテラシー検定に関しては、『ちょん*』さんに描いていただいた、シーズナルギフトNFTを配布させていただきました。
陶山「これは合格証NFTを持っている方に対してのプレゼントとして、イラストレーターさんとのコラボという形で送らせていただきました。」
陶山「また、MEGAMIさんとの『Giveaway企画』でNFTを抽選で5名様にプレゼントさせていただきました。」
――イラストレーター様やNFTプロジェクト様との連携を進めているのですね
陶山「この先はスマートフォンへの対応を進めております。X(旧Twitter)から情報を見られている方が多いのですが、検定を受けるにはPCから接続しなければならない状況です。」
陶山「スマートフォンにおけるdAppsの体験は、急激に快適になりつつあります。次の10億人にサービスの価値を届けるべく、リテラシー検定もトライするべきと思い、進めております。」
石岡「また、slothさんやMEGAMIさんといったパートナーさん、他にもご相談をくださる企業もいらっしゃいますので、企業やNFTプロジェクトとのコラボレーションを通じて、NFTリテラシー検定を多くの方に利用していただければと思います。」
石岡「リテラシーはどこでも大事です。自分たちのプロダクト以外でもNFTユーザー全体として盛り上がっていただくことが大事だと考えています。」
石岡「リテラシー検定を受けた方が、今度は例えば『slothさんやMEGAMIさんのプロダクトが魅力的なので試してみよう』と思えるように、繋がりを作ることが我々の一つのミッションだと思っています。」
ブロックチェーンの「そもそもの価値」とは?
陶山「ここ1年半〜2年で、ブロックチェーンのインフラ周りの開発が非常に進んでいます。ガス代も安くなり、より多くのトランザクションを捌けるようになってきています。」
陶山「次のステップとしては、発展したインフラを使ってどのようなコンテンツを届けていくか、ブロックチェーンだからこそ届けられる価値が何なのかを、手を動かしながら具体的なプロダクトを作って考えることが必要だと思っています。」
陶山「例えば、NFTリテラシー検定の合格証をユーザーさんが保有する。それは、自分のオンチェーンでの知識を、永続かつ改ざんされづらい形で証明、検証できることを意味します。」
陶山「今後は、DeNAが得意としてきたソーシャル領域や、『稼げる』を過度に強調せずとも楽しめるオンチェーンゲームの領域で、ブロックチェーンとその周辺技術に向き合いながら、絶えずネイティブな(ブロックチェーンそのものの)価値が何かを考え、実験していくことが我々の役目だと思っています。」
――非常に高い志でお取組みされていると感じます。
陶山「ありがとうございます。DeNAは、創業からずっとサービスを作っている会社です。成功もしましたし、失敗もしてきた歴史があります。」
陶山「そのためWeb3に関わるメンバーだけでなく、執行役員から部長などの管理職まで、ユーザーさんの喜びに向き合う姿勢や、言動に寄り添い改善するアプローチについての深い知見を有しています。」
陶山「そういった知見をサービス展開に活かすことや、企業の垣根を超えて知見を共有する場を育てることも、我々の役目だと思っています。」
ーー業界大手のDeNA様が、ユーザー目線に立って主導を行うことで、業界自体が健全化し、広がり、マーケットが作られていくように思います。
陶山「そうですね。今はまだブロックチェーンが持つポテンシャルを享受できる人口が少ない状況です。その中では、大企業もスタートアップ企業も一緒に開発していく姿勢が大事だと思います。」
陶山「投資額やブロックチェーントークン価格が上下動しても、事業者や開発者の熱量により維持成長し続けていることからも、産業そのものに大きな可能性を感じています。」
陶山「コストの低下、セキュリティや速度の向上に伴って、熱量だけではなく合理的にも、ブロックチェーンを開発プラットフォームとして選択するケースは今後増加していくと、私は見込んでいます。」
――陶山様のブロックチェーンにかける熱い想いを感じました。
わくわくするエンターテイメントを作り続ける
――最後に、読者の方へメッセージをお願いいたします。
石岡「暗号資産の取引量は冬の時代と言われておりますが、技術は常に進歩しています。私はこの業界を注目するようになってから3年程ですが、常に新しいニュースや新しいニーズ、新しい技術が出続けていて衰えを見せません。」
石岡「ブロックチェーンでできることはまだまだ増えていくと思います。その中でわくわくするエンターテイメントを作っていくことが、私達のミッションだと思っていますし、DeNAがそういった会社であることを是非知っていただければと思います。」
陶山「鉄道や携帯電話、初期のインターネットなど、これまでの革命的な発明の歴史を考えてみると、最初にその業界を盛り上げたのは、投機的な『お金』の流入と、ピュアに技術の可能性に心を躍らせた野心的な人材でした。」
陶山「経済圏に悪影響を及ぼす悪い投機と、長期で発展をもたらす投資の区別を先人から謙虚に学びながら、プロダクトを通して意見を示すこと、また、技術的な本質も考え続けることが我々の役目だと思っています。」
陶山「例えば、あるゲーム世界でできた友人との繋がりやアイテムといった資産を、他のゲーム世界にそのまま引き継いで遊ぶことや、永続的に資産を積み上げていくことがブロックチェーンでは可能です。」
陶山「プロダクトの実装を通して技術的な限界を測りながらも、今この瞬間『どんな新しい遊び方ができるだろう』と考え、(プロダクトに)落とし込み続ける活動をしていきたいです。」
石岡「これからもチャレンジを続けていくので、是非ご期待いただけましたら幸いです。」
――DeNA様のWeb3領域の今後が非常に楽しみになりました。
――本日はお時間いただき、誠にありがとうございました。
DeNA石岡様・陶山様
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