ゲーム企画書でターゲットを設定するには|ターゲットを明確にする重要性やメリット
ゲーム企画書を作成するにはいくつかのポイントを押さえておく必要があります。
その中でも特に重要なのが、ターゲットを明確に設定する事です。
本記事では、ターゲット設定のメリットと留意すべき点、実際に企画書を書くときのコツを、具体例を用いながら解説します。
コンテンツ [表示]
- 1ゲーム企画書のターゲットとは?
- 2ゲーム企画書のターゲット設定のやり方
- 2.1ポイント①|裏付けがあると良い
- 2.2ポイント②|ペルソナ設定でより詳細なユーザー像ができあがる
- 3ゲーム企画書でターゲットを明確にするメリット
- 3.1ビジネスとしての大失敗を回避できる
- 3.2ユーザー離脱につながる課題を回避できる
- 3.3価格が決めやすくなる
- 3.4設計やデザインが決めやすくなる
- 3.5PR・広告の手法が決めやすくなる
- 4ターゲット設定の注意点
- 4.1良くないターゲット設定の例
- 4.2ターゲットを「自分」にする場合
- 5ソーシャルゲームの場合のターゲット設定
- 6アプリゲームの場合のターゲット設定
- 7企画書へのターゲットの書き方
- 8まとめ
ゲーム企画書のターゲットとは?
ゲーム企画書のターゲットとは、そのゲームを遊んでくれる人を指します。「誰に向けたゲームなのか」を企画段階から明確に設定することで、実際にゲームを手にするユーザーの気持ちや行動を想定しながら開発に落とし込むことができます。
どの年齢層・性別・趣味嗜好のユーザーに遊んでもらうのかを土台として考えることから始めましょう。
開発初期の段階で決めたターゲットに基づき、ゲーム開発が進められます。そのため、ターゲット設定が曖昧なままプロジェクトをスタートしてしまうと、開発が進んでから作業の遅延やその他の大きなトラブルを生む要因にも繋がります。
ターゲットを明確にする事によって、開発者同士の認識の齟齬による失敗が起こりにくくなります。
ゲームの企画を立てるプランナーだけでなく、実際に制作を行うデザイナーやプログラマー、シナリオライター、サウンドクリエイター、それぞれが一貫したユーザーイメージを共有できていれば、ゲームの世界観や各要素にブレが生じません。
ゲーム企画書のターゲット設定のやり方
ゲーム企画書を作成するにあたり、以下の2点に注意しながらターゲット設定を行うと良いでしょう。
ポイント①|裏付けがあると良い
「市場調査」や「ユーザーインタビュー」「アンケート」「顧客データ分析」などの客観的データに基づいた統計を根拠に、ターゲットを絞ることはとても有効です。
「実際に製品を市場に流した時」と「開発段階で想定した売上数」の乖離を抑えることができる他、開発における力の入れどころや、コストカットすべき点をあらかじめ擦り合わせることが可能です。
開発段階に入ってからも細かな仕様変更が施されることが頻繁にありますが、そのような時でも開発初期から関係者間で、目指すものとゴールが共有されていれば、円滑な開発進行が望めます。
また、裏付けがなく仮説によりターゲットを設定する場合もあります。この場合でも、その後に仮説検証を行うことで、前述の「裏付けに基づいたターゲットの選定」と同様の成果を得ることができます。
ポイント②|ペルソナ設定でより詳細なユーザー像ができあがる
ターゲット設定から、さらにペルソナまで踏み込むことで、より詳細なユーザーへのアプローチが実現できます。
そもそもペルソナ(Persona)とは、心理学で用いられる用語で、マーケティングや企画書作成の際は「商品やサービスを使用する架空の人物像」の意味として使用されます。
ターゲットと混同されがちですが、実際は大きく異なるものです。
例えば、ターゲットは「年齢・性別・居住地」などざっくりとした分類で調整されます。対してペルソナは、「人物像・生活環境・家族構成」といった、小説の中に登場するキャラクター像を設定するかのように立てた仮説です。
ペルソナを設定することで、ユーザーのニーズを適切に収集できたり、ユーザーの目線で商品開発ができたりするメリットがあります。
特に、多くのユーザーが共通して求めているものではなく「特定の層」に求められる商品、いわゆるニッチな製品の開発においては、ペルソナ設定が大きな効果を生みます。
デメリットとしては、コストがかかることが挙げられます。また、ペルソナを意識しすぎることで、製品開発の可能性を萎縮させてしまう場合もあるため、適切な塩梅での活用が好ましいと言えます。
ゲーム企画書でターゲットを明確にするメリット
企画段階でターゲットを明確にすることは、プロジェクトの成功に必要不可欠です。
本項では、ターゲット設定の代表的なメリットを5つ紹介します。
ビジネスとしての大失敗を回避できる
ターゲットを定めずに製品を開発することは、ビジネスとしての失敗の可能性が高いと同時に、最悪の場合は製品の完成に至らないケースが考えられます。
これを日常生活でわかりやすく例えるならば、「目的地を設定せず、闇雲に車を走らせている状況」と同じです。
目指している目的地を定めなければ、開発の目的や方向性が定まらず、結果ユーザーに求められず売上の立たないゲームに着地してしまいます。
それだけでなく、開発者同士でのすり合わせもできません。
ビジネスとして成功を収めるためには、チームワークが必要不可欠です。情報共有を適切に行うことがサポートできる道標としても、共有の目的地は必須です。
つまり、ターゲットを明確にし、共通の目的地をきちんと定めることが、大きな失敗のリスクを軽減するために重要となるのです。
また、開発においてどこまで作り込むかを明確化しておくことで、ペース配分やコストの割り当ての指標に活用することもできます。
ユーザー離脱につながる課題を回避できる
ターゲットを明確に設定せずに開発を進めると、「製品のPRが適切に行えないことによるユーザーの離脱」が起きてしまう場合があります。
例えば、「クイズゲーム」を開発しようとした場合、どの年齢を対象にするかによってゲーム性に違いが出ます。
具体的には、「若者を対象とした知識問題を問うゲーム」なのか「高齢者を対象とした認知症を予防するゲーム」なのかといった違いです。
また、開発段階でこのあたりのターゲットがまとまっていない場合、開発者間でも混乱が発生し、まとまりのないゲームが完成してしまうリスクもあります。
ゲームに軸がなく、またPRも適切に行えないとなると、ユーザーの離脱が進行してしまいます。
ターゲットを明確に設定することで、これらの懸念材料を払拭し、クオリティの高いゲームの制作につながります。
価格が決めやすくなる
目標となる開発のゴールを設けることで、ゲーム開発にかかるコストや期間を逆算しやすくなります。
トータルコストの算出をせずに闇雲に時間と労力をかけて開発した場合や、市場の規模を考えずに不適正価格での販売を余儀なくされてしまう状況を作ってしまうと、製品の売れ行きとの側面にとどまらず、会社経営として大きな問題を抱えます。
また、市場は常に動いていると同時に、新しい技術は目まぐるしい勢いで開発され続けています。
そのため、開発前に見積もった試算の通りに販売価格を決められる事はまずあり得ません。
そのような不確定要素が色濃い一面があるからこそ、おおよその開発コストと完成後の販売価格を調整し、それに応じてゴールから逆算する形で開発環境を整えることが必要です。
設計やデザインが決めやすくなる
ターゲットを絞ることで、充実させるべき機能やデザインを具体的に知ることができます。
必要な箇所に多くの時間とコストを割り当てることができることで、経済的メリットも生み出します。
さらに、「誰に」「何を」「どのようにして」提供するのかをイメージしやすく、顧客の目線に立ったゲーム開発を実現することができます。
また、前項で説明した通り、開発にかかるトータルコストから逆算し、開発と設計を行うことがゲーム開発の基本です。
そのため、どのくらいの制約の中で開発を行うのかが開発の始めの段階で明確化されるので、逆算の観点からも設計やデザインが決めやすいと言えます。
PR・広告の手法が決めやすくなる
ターゲットとした「年齢」「性別」「居住地」などのデータにより、PRや広告の手法が決めやすくなる点も、ターゲットを設定することの代表的なメリットの一つです。
例えば「30代・女性」であれば、女性週刊誌への広告掲載であったり、「会社経営者・出張が多いユーザー」であれば空港施設や新幹線の車内への広告掲載とい言ったように、手法の選定が必要です。
「20代・大学生」へ向けた商品を新聞に広告掲載しても効果は低いでしょう。
広告は商品販促における有用な手段の一つですが、闇雲に広告枠を埋めても最大限の効果は得られません。
製品開発時に設定したターゲットのデータに基づき、適切な広告手法を用いることで、コストを抑えつつ大きな経済効果を生むことが期待できるのです。
ターゲット設定の注意点
ターゲットを設定する際に注意すべき点は、具体的に以下の例が挙げられます。
本章では具体例を用いながら説明します。
良くないターゲット設定の例
良くないターゲット設定の例として、「曖昧な予想に基づくターゲット設定」が挙げられます。
ターゲットは、基本的には大まかなもので問題ありませんが、あまりにもざっくりしすぎたものだと、ターゲットとしての意味を成さなくなってしまいます。
ターゲット設定の目的は、製品開発の方向性をある程度定める為にあります。しかし、曖昧すぎるターゲット設定では、この目的を達成することができません。
また、「市場のニーズが期待できないものに対するターゲット設定」も、よくないターゲット設定の例の一つです。
販売後の売れ行きが見込めない商品を開発しても、開発者・消費者双方にとってプラスになりません。
当然、商品が売れなければ開発費を回収することができないため、会社の経営にも支障をきたします。
開発する商品が市場でどれくらい求められているのか、そして最低限開発費を回収できるほどの市場規模があるのかを入念に調査することが必要です。
個人的な趣味の範疇で、利益を求めない開発スタイルは別として、ビジネスとしてゲーム開発をする上では利益を求めることが最も重要になります。
「自分の好きなゲームの業界で、自分が理想とする完璧なゲームを作りたい」といった熱意も大切ですが、「面白そう・楽しそうな企画」というだけでビジネスが成立するとは限らないことを理解しましょう。
作りたいゲームを、事業としての見込みがある企画として進めるために、「市場の中での適切な規模」「競合タイトルとの関係性」「ユーザーからの支持を得る合理的な方法」を調査・模索することで、ターゲットを設定する必要があります。
ターゲットを「自分」にする場合
ターゲットを「自分の属性」に設定することも手法の一つです。
自分自身がゲームをプレイするユーザーの代表として「欲しい機能」や「プレイしたいゲームのコンセプト」を考えることで、市場のユーザーが求めている製品の開発に近づくことができます。
ただし、「自分が面白いだろうと推測しただけの独りよがりなゲーム」となってしまっては、ビジネスとして成立するゲームを作る事はできません。
つまり、サンプルとなる自分自身が、開発するゲームの分野に精通している必要があることに注意すべきです。
分野のことを良く理解し、その市場のユーザーが求めている基本的な骨組みを加味して考えることができるからこそ、魅力的な製品開発が可能になるのです。
ソーシャルゲームの場合のターゲット設定
ソーシャルゲームにおけるターゲット設定では、「無課金ユーザー」と「課金ユーザー」のバランスを考慮することが重要です。
一般的にイメージされるように、課金ユーザーはそのゲームに多くの時間を割き、離脱することなく長期間にわたりゲームをプレイしています。
逆に無課金ユーザーは、一部ユーザーは課金ユーザーと同じく長期間プレイするものの、多くは短期間で離脱してしまう傾向にあります。また、無課金ユーザーは課金ユーザーに比べ、運営企業における利益の元となりにくい点が特徴です。
以上より、ソーシャルゲームにおけるターゲット設定では、課金ユーザーをベースにして開発して行くことが効率的と言えます。
アプリゲームの場合のターゲット設定
アプリゲームにおいては、コンピューターゲームやポータブルゲームソフトとは違う視点からのターゲット設定が必要です。
ゲーム市場は、日々めまぐるしく変化しており、それは技術的な面に限らずユーザーのメンタリティや属性に関しても同じように言えます。
そのため、1人の同じユーザーでも、インストールする時期がゲームのリリース直後か半年後かでは、動向に大きな乖離が見られる場合があります。
このような事態を防ぐためには、企画段階であらかじめ将来的なユーザー属性の変化を計算しておく必要があります。また、ユーザー属性を固定化して考えるのではなく、ある程度の「範囲」を含めたターゲット設定ができると良いでしょう。
企画書へのターゲットの書き方
企画書にターゲットを記述する際にもポイントがあります。
グラフや図などの視覚的にわかりやすく工夫した書式を用いることが大切です。
文字列だけの説明ではイメージが湧きにくく、そのような時に視覚的に優劣または大小を把握できるグラフや図は大きく活躍します。
成功するゲームは、市場で差別化できる要素を有しています。
企画書では、そのゲームが他とどのように異なり、どの点で凌駕できるのかを強調することが重要です。
これらのエビデンスをしっかりとアピールできるような企画書作りを心がけることで、開発に漕ぎ着けやすくなります。
ゲーム企画書の書き方については、以下の記事で詳しく説明しているので併せて参照してください。
まとめ
- 1
- 2