効果的なゲームUIをデザインするための基礎ガイド|役割やポイント、作り方などを解説

ゲーム開発において、UIデザインは重要な要素の一つです。
本記事では、ゲームUIデザインの役割や考え方、作り方、制作ツール、参考サイトなどについて解説します。
UIデザイナーだけでなく、さまざまな職種との連携が必要なプランナーの方にとっても参考になるでしょう。
コンテンツ [表示]
- 1ゲームのUIデザインとは
- 1.1ゲームUIとゲームUXの違い
- 2ゲームのUIデザインと一般的なUIデザインの違い
- 3ゲームにおけるUIデザインの役割
- 3.1ユーザーへの適切な情報伝達
- 3.2ゲーム進行の導線設計
- 3.3ゲームのウリとなる要素を伝える
- 3.4ユーザー離れを防ぐ
- 4ゲームUIデザインに必要な要素
- 4.1要素①|プレイヤーだけに見える情報
- 4.2要素②|ゲーム世界の空間上にある要素
- 4.3要素③|誘導のための演出
- 5ゲームUIデザインの考え方
- 5.1ポイント①|ターゲットやジャンルに合わせたデザイン
- 5.2ポイント②|ゲームコンセプトに沿ったデザイン
- 5.3ポイント③|見やすさ・わかりやすさ
- 5.4ポイント④|情報量のバランスを最適化
- 5.5ポイント⑤|魅力的なビジュアル
- 6ゲームUIデザインの作り方
- 7ゲームUIデザインの制作ツール
- 8ゲームUIデザインのスキルを習得する方法
- 8.1ゲームUIデザインに必要なスキル
- 8.2ゲームUIデザインの勉強方法
- 9ゲームUIデザインの参考サイト
- 10まとめ|UIデザインがゲームの魅力と体験の質を向上させる
ゲームのUIデザインとは
UIとは「ユーザーインターフェース(User Interface)」の略称で、製品・サービスとユーザーの接点となる部分を指します。
ゲームにおけるUIは、プレイ画面やボタン、アイコン、マップ、体力ゲージ、テキストなど、プレイヤーが情報を得たり操作したりする部分となります。
それらのレイアウトやグラフィック、アニメーションを最適化することで、プレイヤーのゲームプレイを快適なものにすることがUIデザインの目的です。
ゲームUIとゲームUXの違い
ゲームUIとよく一緒に語られるのが、ゲームUXです。
UXとは「ユーザーエクスペリエンス(User eXperience)」の略称で、ユーザーが製品・サービスを通して得られる体験のことを指します。
ゲームにおけるUXは、プレイヤーがゲームで遊ぶことで楽しんだり、「面白い」「買ってよかった」「また遊びたい」などと感じたりすることが該当します。
狙った感情をプレイヤーに抱いてもらえるように、シナリオやストーリー・ゲームサイクルなどを通じ、質の高いUXを設計する必要があります。
「ゲームUI」と「ゲームUX」の2つの意味をおさらいすると、下記の通りです。
- ゲームUI:プレイヤーとゲームの接点
- ゲームUX:プレイヤーがゲームで得られる体験
UIはUXの質に関わる
UXの質を高めるためには使いやすいUIが必須となります。
例えば、バトル画面や操作がわかりやすいUIであれば、バトル本来の面白さを体感してもらいやすくなります。しかし、操作感が悪いとバトルによる臨場感や達成感をさまたげ、UXの評価を下げてしまうでしょう。
もちろん、UIさえ良ければ良いUXになるとは限らず、優れたUXを設計するためにはゲームの企画自体が魅力的なものでなければいけません。
とはいえ、UIはUXの質を左右する大きな要素となるため、「このUIを通してプレイヤーはどのような体験(UX)をするか?」という部分までを視野に入れて考えることが大切です。
ゲームのUIデザインと一般的なUIデザインの違い
ゲームのUIは、その他の一般的なサービス・製品のUIと比較すると、よりインタラクティブ性が高くユーザーの感情を揺さぶりやすいデザインとなっています。
(インタラクティブ: 「対話型」や「相互に作用する」といった意味で、一方的に情報を提供するのではなく、双方向でのやり取りができることを指す)
まず、一般的なサービス・製品におけるUIの例を挙げます。
- 通販サイト:欲しい商品が探しやすい・買いやすいような配置や、カテゴリ分け・おすすめ商品の表示などで購買意欲をあおる設計
- カーナビ:的確に目的地に到着できるよう、見やすくシンプルに最適なルートを提示する設計
いずれも、ユーザーの目的に応じて無駄のない行動ルートを提供するよう、機能性や使いやすさを重視したデザインが求められます。
一方、ゲームにおけるUIには以下の特徴があります。
- 特有の操作を活かした設計:コントローラーなどの入力デバイスでのボタン対応・振動、モバイルゲームであればタップ・スライド・ドラッグ・プルなどにより、ユニークな操作感を提供
- ユーザーの感情を動かす仕掛け:より印象的な動きや画面遷移・ビジュアルにより、ワクワク感や達成感のほか、あえて緊張感や適度なストレスを与える場合も
- ガイドやチュートリアルの提供:ユーザーがゲームの世界に入り込みながら、操作や方向性を理解できる仕組み
ゲームUIの場合は、ユーザーを惹きつけ飽きさせないために、より体験(UX)を重視したデザインが求められます。
ゲームにおけるUIデザインの役割
ゲームにおけるUIデザインには、さまざまな役割があります。
具体的には、以下の通りです。
ユーザーへの適切な情報伝達
ゲームUIデザインには、ユーザーに適切かつタイムリーに情報を伝達する役割があります。
プレイヤーがゲームの進行状況やキャラクターのステータスなどを簡単に把握できるようなUIデザインは、ユーザーがゲームの機能をより良く理解し、効率的に操作する手助けをします。
ゲーム進行の導線設計
ゲーム制作においては、ユーザーが迷わず行動できるような導線設計も重要です。
効果的なUIデザインは、視覚的な手がかりやガイドラインを提供し、プレイヤーが次に何をすべきかを直感的に理解できるようにします。
これにより、ユーザーはゲームの目的を達成するために必要なアクションをスムーズに取ることができ、ゲームプレイの流れを中断せずに進行させることができます。
ゲームのウリとなる要素を伝える
UIデザインにより、そのゲームならではのウリとなる要素を伝えることができます。
例えば魅力的なキャラクターがウリであれば、会話パートは立ち絵を使用したり、ゲームパートでストレスを与えないUIデザインが良いでしょう。
逆にアクションバトルがウリのゲームの場合は、バトルパートの操作性やシステムを充実させるのが好ましいと言えます。
ユーザー離れを防ぐ
ゲーム進行において、単調さや作業感が新鮮さを欠いたり面倒になったりすると、ユーザーも飽きてしまいます。
それらの要因をUIの面からも軽減できれば、ユーザー離れの防止につながります。
2020年に発表された「継続したゲームプレイからの離脱理由に関する調査分析」によると、ゲーム内容とは関係ない要因である「ブランク」「生活変化」を除いた場合、「単純作業」や「繰り返し」が離脱理由の上位に含まれています。
もちろんゲームバランスやゲームシステムの問題もありますが、UIデザインでも飽きさせない工夫を講じることが大切です。
また、ユーザーが直感的に操作できるUIデザインを心掛けることで、「操作が不便で遊びにくい」「次に何をすればいいか分からない」という状況からの離脱を防ぐことも可能です。
ゲームUIデザインに必要な要素
ゲーム画面においてUIデザイナーが担当する範囲は下記の通りで、わかりやすく表現すれば「キャラクターや背景以外の全て」と言えるでしょう。
UIデザイナーの担当範囲
- 各種素材のデザイン(アイコン、ボタン、枠、アイテムなど)
- 画面のレイアウト(各種素材の表示位置・サイズなど)
- アニメーション用素材のデザイン(操作に対し何らかの動きがあるパーツ)
これらのレイアウトや素材は、具体的には以下のような要素に適用されます。
3つの要素について、以下で詳しく解説します。
要素①|プレイヤーだけに見える情報
プレイヤーだけに見える要素は、ゲーム世界から切り離された、情報提供のための表示です。
体力ゲージやスコアなどのステータス、マップ、メニュー画面などがこれにあたり、こうした UI には戦略や戦術を強化する効果があります。
例えば、体力ゲージの容量が少なくなると、「このタイミングで回復アイテムを使うべきだ」 「もっと素早く行動しなければ」などと判断しやすくなります。
あわせて警報の音や赤く点滅するなどの演出を加えることで、ユーザーに緊張感を与え、体験を効果的に盛り上げる場合もあります。
HUD(ヘッドアップディスプレイ)
ゲーム画面上で常にオーバーレイ表示(画面上にさらに画面を重ね合わせ、表示すること)される情報のことを、「HUD(Head Up Display/ヘッドアップディスプレイ)」と言います。
ゲーム世界のキャラクターに追従する形でステータスを表示する場合もありますが、直接キャラクターの行動に影響を与えるわけではなく、あくまでプレイヤーの状態に関する情報を知らせるためのものです。
要素②|ゲーム世界の空間上にある要素
ゲーム世界の空間に存在する要素とは、キャラクターが触れることができ、何らかの動きや反応があるものです。
例えば、フィールド上で拾えるアイテムなどがこれにあたります。
ダイエジェティックUI
多くの場合にゲーム世界に影響を与えない形で表示する情報を、あえてゲーム世界の一部として組み込む手法もあります。
このように、ゲーム世界に存在している要素をそのままUIとして使うものは「ダイエジェティックUI(Diegetic UI)」と呼ばれ、没入感を高める役割を果たします。
例えばドライビングシミュレーションゲーム『グランツーリスモ』シリーズのコックピットビュー(ドライバー視点モード)では、車のダッシュボードや計器盤がそのままゲームのUIとして機能します。
画像出典:グランツーリスモ7 オンラインマニュアル|グランツーリスモ・ドットコム