【第1部】なぜ日本の大企業からGAFAは生まれないのか? - プロジェクトマネージャー不在という構造的欠陥 -

【第1部】なぜ日本の大企業からGAFAは生まれないのか? - プロジェクトマネージャー不在という構造的欠陥 -

【第1部】なぜ日本の大企業からGAFAは生まれないのか? - プロジェクトマネージャー不在という構造的欠陥 -

なぜ日本企業からGAFAは生まれないのか?その本質に迫り、打開策としての外部PM活用を提言。経営の壁を打破したい経営者・人事担当者必読の2部構成。イノベーション不全の構造とその処方箋を、実例とともに深掘りします。【2部構成第1部】

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  1. 1正社員という「聖域」がイノベーションを殺す
  2. 2「プロダクトが先、マーケが後」という、必ず失敗する方程式

「我が社には優れた技術がある。真面目で優秀な社員もいる。なのになぜ、世の中を席巻するような新しいビジネスが生まれないのか?」

多くの日本企業の経営層や事業開発担当者が、この根源的な問いに頭を抱えている。

かつて世界をリードした技術大国・日本の面影は薄れ、イノベーションのジレンマに陥る企業は後を絶たない。

その原因は、個々の社員の能力不足などでは断じてない。

問題の根幹にあるのは、事業の成否に全責任を負い、絶大な権限を持ってプロジェクトを牽引する「真のプロジェクトマネージャー(PM)」の不在という、極めて深刻な構造的欠陥なのである。

正社員という「聖域」がイノベーションを殺す

日本の組織、特に大企業における正社員、すなわちメンバーシップ型雇用は、高度経済成長期には驚異的な競争力の源泉となった。

しかし、変化の激しい現代において、その仕組みは新規事業創出の足枷と化している。

1. 専門性が育たない「ジェネラリスト天国」

数年おきに行われるジョブローテーションは、社員に幅広い経験を積ませる一方で、特定の領域で市場価値の高い専門性を磨く機会を奪う。

新規事業には、マーケティング、UI/UX、テクノロジー、ファイナンスといった深い専門知識が不可欠だが、社内にその道のプロフェッショナルが育ちにくい。

結果、「広く浅い」知識を持つ人材が集まり、当たり障りのない、しかし市場では全く戦えない凡庸なプロダクトが企画されることになる。

2.「社内調整」という名の巨大なタイムロス

縦割りの組織構造は、部署間の連携を著しく困難にする。

「営業部の論理」「開発部の事情」「管理部のルール」が複雑に絡み合い、本来事業の成功という一つのゴールに向かうべきエネルギーが、内部の利害調整に費やされてしまう。

責任と権限の所在が曖昧なため、誰も最終的な意思決定を下せない。

プロジェクトのリーダーとされる人物の仕事は、関係部署への「お伺い」と「根回し」に終始し、市場のスピード感から完全に取り残されていく。これはもはや仕事ではなく、儀式だ。

3. 失敗を許容しない「減点主義」の呪縛

終身雇用と年功序列が前提の組織では、大きな成功を収めることよりも、「失敗しないこと」が個人のキャリアにとって最も重要になる。

挑戦的な新規事業は失敗のリスクが付き物だが、一度失敗の烙印を押されれば、出世コースから外れかねない。

社員は自らの身を守るため、無意識にリスクを避け、前例踏襲の安全な道を選ぶ。このカルチャーが、大胆な発想や迅速な試行錯誤(トライ&エラー)を阻害し、イノベーションの芽を根こそぎ摘み取ってしまうのだ。

「プロダクトが先、マーケが後」という、必ず失敗する方程式

こうした組織的欠陥から必然的に生まれるのが、「良いものを作れば、後からどうにかなるだろう」というプロダクトアウト思想の蔓延だ。

技術部門や開発部門が主導権を握り、彼らの信じる「最高のスペック」や「画期的な機能」を搭載したプロダクトが、顧客不在のまま開発される。

マーケティング部門や営業部門がその存在を知らされるのは、プロダクトが完成に近づいた最終段階であることがほとんどだ。

「さあ、こんなにすごいものができた。あとは君たちがうまく売ってくれ」

このパスを受けたマーケティング担当者は絶望する。

市場のニーズはどこにあるのか? ターゲット顧客は誰なのか? 競合に対する優位性はどこなのか? 本来、企画の初期段階で徹底的に議論されるべきマーケティング戦略が、完全に抜け落ちている。

後付けで考えた付け焼き刃のプロモーションがうまくいくはずもなく、結果、鳴り物入りで開発されたプロダクトは誰にも見向きもされずに、静かに市場から消えていく。

「技術の無駄遣い」と揶揄される無数のプロジェクトの残骸が、こうして生まれるのだ。

この一連の悲劇の根本原因は明らかだ。

開発の初期段階から市場を見据え、技術、マーケティング、営業、デザインといった全ての要素を統合し、事業全体の成功に責任を持つ「司令塔」がいないからに他ならない。

この致命的な欠陥を放置したままでは、日本企業が再び世界のビジネスシーンで輝きを取り戻すことは永遠にないだろう。


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【第2部】外部プロフェッショナルPMという劇薬 - 事業を成功に導く「越境するリーダー」の活用法 -のイメージ
【第2部】外部プロフェッショナルPMという劇薬 - 事業を成功に導く「越境するリーダー」の活用法 -
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