株式会社91Act代表/株式会社HYDE開発統括 長谷川 仁氏インタビュー 新作スマホゲーアクション「BanBan Rabbit!」が目指す新しいカジュアルゲームとは!? - ガメモ
『影牢』シリーズや『零 zero』シリーズなどの人気シリーズに携わってきた長谷川 仁氏。現在、氏は中国のゲームメーカー91Actの日本での代表として活躍している。そんな氏に中国のゲームクリエイターたちとタッグを組んだ経緯と新作「Banban Rabbit!」についてインタビューした。
実際に一緒に仕事をして知った中国のクリエイターたちの熱量
竹下:まず最初にお聞きしたいのが「91Act」ってなんてお読みすればいいんですか?
長谷川 仁氏(以後、長谷川):「キューイチ・エーシーティー」ですね。どう読んでいただいてもかまいませんが、正式にはキューイチ・エーシーティーです」
竹下:「91Act」という社名にはどんな意味が込められているんですか?
長谷川:「Act」は英語の意味と同じで『アクション』という意味です。「91」の方は中国では、91(jiu yao)=就要(jiu yao)=I WANT=『欲している』という意味を込めています。なので社名は、アクションを求める!という極めて率直な社名ですね(笑) ちなみに、中国ではこのようにいくつか数字の組み合わせに意味を重ねて表現したりします。例えば、37 = 不管三七二十一 = 决心 とか、17=(yi qi)= 一起(yi qi)=一緒に とかですね。
竹下:長谷川さんは91Actの前職は角川ゲームズにいらっしゃったそうですが、前職を辞めてから中国のゲーム会社に移籍したきっかけを教えて下さい。
長谷川:遡ると角川ゲームスよりももっと前、私がテクモにいた時代の話になりますね。2006年頃、なので14年くらい前の話になります。
当時、私はテクモでゲームのディレクションやプロデュースを担っていました。
その時に中国の盛大(現:盛趣)社とのPCオンラインゲームの共同開発事業が立ち上がり、真っ先に手を挙げたんです。
理由は2つあって、1つはアジア全域でのオンラインゲームの波に乗りたかったこと。当時は韓国から無料のPCオンラインゲームが日本のマーケットに広がりはじめ、同時に中国もPCオンラインゲーム市場が急速に拡大していた頃でした。
一方で、日本のPCオンラインゲームは、まだまだ特定のユーザーしか遊ばない限られたマーケットでしたが、必ず日本にもこの熱が広がるだろうと確信していましたから。
2つ目は、中国のゲーム会社と一緒にモノ作りをしたかった。ということです。
ちょうどPS2からPS3への移行時期でして、国内の開発スタイルに新しい刺激が欲しいと感じていた頃でした。
実際に一緒に仕事をして知った中国のクリエイターたちの熱量
竹下:一緒に働いてみて、中国の方の印象はどうでしたか? お仕事される前と後で変わりましたか?
長谷川:最初に印象というか、印象を植え付けられたというか…回りの人達からは相当に気を付けなよ。と心配がられましたね。
というのも、その頃からゲーム業界では中国へのグラフィックデータ発注などを行う会社もあり、品質や金銭のトラブル話が絶えなかったんです。とはいえ噂話を鵜呑みにはしないので、実際一緒に働いてみればわかるだろう!(笑)って。
それから中国語を勉強しながら、上海に足しげく通い、盛大社の開発メンバーの輪に入って開発を始めました。
それこそ、ただ一緒に仕事をするだけでなく、中国の若者がどんな音楽を聴くのか、何に今興味をもっているのか、遊びに使えるお金はどれくらいなのか? 等々、仕事を終えた後も、現地で友達を作っては、彼らの生活に近いところまで入っていって、いろんなことを見て体験してきました。
彼らと一緒に仕事をしたり友達になったことで、一番衝撃を受けたのは中国のメンバーが皆一様に若く、驚くほど純粋であったこと。そしてゲームを作りたいという熱意と活気に満ち溢れていたことですね。
その頃の中国のゲーム開発は日本と比べて成熟されておらず、彼らは日本の様々なことに興味を持ち、吸収していこうという力・エネルギーが尋常ではありませんでした。
また、少しでもグローバルビジネスで闘っていかなきゃいけないこともあって、日本語や英語を話せるスタッフも少なくありませんでした。
竹下:彼らのモノ作りの姿勢が日本と違ったことに衝撃を受けたんですね。
長谷川:はい。私は日本が大好きですし、日本のゲームが世界を変える!と勝手に思い込んでますし、そうでありたいと思ってます。(笑)
けれど、その当時の日本の開発には少し停滞感を感じていました。
それは、個人的に感じていただけかもしれませんが、日本はそれまでに物凄い速度でゲームを進化させ続け、アジアでも欧米でも高い評価を得られるところまで登りつめていたことからからかもしれません。
そんな折に、中国の若い開発者たちが、自分達の開発技術が未熟だとして焦り、物凄い速度で吸収し、成長していく姿を見て「これは5年後、10年後には日本は中国の開発に圧倒される」と直感しました。
特に、盛大社の開発チームのリーダーとサブリーダーだった2人からですね。
後に、サブリーダーの姜磊が盛大を退社し、Tencentに移り、そこから独立して設立したのが、現在の成都格斗科技有限公司:91Actとなります。
竹下:当時一緒に仕事をした方たちが「91Act」の本国の方なんですね。日本の91Actはどのような経緯で設立されたんですか?
長谷川:以前から中国成都の91Act代表の姜磊とは仲良くしていて、いつかまた一緒に仕事をしたいね。という話しをしていました。
そして、角川ゲームスである程度のことをやり通したなと思ったタイミングで、姜磊と話し合い、日本での91Actの活動拠点を作ることにしたんです。
日本での91Actの役目は、いくつかのフェーズで考えていて、序盤は本社の開発を支援する立ち位置で動いています。91Actは日本のIPでのゲーム開発を行うことが多いので、日本サイドの様々な調整や課題解決を行っています。
また一方で、日本の開発に携わりたいという思いもあったので、91Actの代表をやりながら、日本のデベロッパーである株式会社ハイドで開発全般に携わり、若い開発者の成長に力を入れています。
91Act本社のメンバーも、開発会社HYDEも、現場の子達は若い子が多くて、ゲーム業会の未来を考えた時に、若い子の力になりたいと思う面と、日本と中国を隔て無くモノ作りができる時代にしていきたく、そのような立ち位置や取り組みを行っています。
ちょっと営業になっちゃいますが、中国のゲームビジネスでお困りの方(中国はよくわからない…けど興味あるってレベルでもOK)や、国内の開発でお困りの方は、何かお力になることができるかもしればいので、気軽に声かけて頂ければ(笑)と。
日本での第1作目としてカジュアルアクション「Bangbang Rabbit!」を配信
竹下:創業の経緯と創業の思いは聞きました。次は今回、サービスが始まった「Bangbang Rabbit!」についてお聞かせください。
長谷川:はい。まず91Actでは、中国設立後の1作目はアークシステムワークスさんのIPである『BLAZBLUE REVOLUTION REBURNING』というスマートフォンゲームを制作しました。
そして2作目は『電撃文庫 FIGHTING CLIMAX IGNITION』のスマートフォンゲームで中国や欧米地域で配信されている『電撃文庫: 零境交錯』です。
91Actは、開発に必要な費用を自社調達し、期間をかけて自社でしっかりとモノ作りをする会社です。
ただ、これらのタイトルは、制作に相応の時間がかかることから長期開発ラインとは別に、開発で培われた91Actの強みである2Dアクションを活かし、ハイパーカジュアルマーケットにチャレンジしていこうとした1作目が「Bangbang Rabbit!」になります。
得意の爽快アクションでカジュアルゲームのノウハウを蓄積中!
竹下:なるほど。「Bangbang Rabbit!」でもそうですが日本の業務というのは日本でのパブリッシング業務になるのでしょうか?
長谷川:現在はサーバーを中国においてグローバル配信を行っているので、日本固有の運営開発という形をとっていません。それは91Actの日本ミッションのもっと先のフェーズで考えています。現在は、91Actがお取引きさせて頂いています関係会社とのリレーションや、版権元との調整、成都本社で開発しているオブザーバーとして開発アドバイスやローカライズなどになりますね。
竹下:それでは配信されるゲームの日本の広報やPRはどうしてるのでしょうか?
長谷川:ケースバイケースになっています。例えば今回サービス開始した「Bangbang Rabbit!」ですと。パブリッシングは北京にあるXLANDさんにお願いしています。これは、91Act自体がハイパーカジュアルを展開・運用するにあたって初めてであったことから、一定のノウハウを持つ会社さんにお願いしたほうがよいという判断です。ハイパーカジュアルは一気に成長し、既にマーケットが成熟しつつあります。新参者が少しかじったマーケットデータ片手に「売れるかな?」といった状況には無いのが現実です。
とはいえ、91Actは、この分野において積極的に展開していきたいというのもあり、すぐに次のタイトルを準備しています。
戦略的には今作「Bangbang Rabbit!」はリトマス試験紙のようなもので、ここで得たノウハウや、日々のデータは、既に平行で開発している別タイトルにリアルタイムで反映させて進めています。
今後、自社でハンドリングするタイトルをリリースしていくタイミングで日本でも91Actが宣伝していくと思いますよ。
竹下:「Bangbang Rabbit!」はどのようなゲームなんでしょうか。
長谷川:「Bangbang Rabbit!」は91Actの得意な2Dアクションゲームです。2Dアクションというと、操作が難しい?と感じるでしょうが、指1本で、右と左の2つの入力だけで遊べるアクションシステムにしています。基本無料でアイテム課金となりますが、広告閲覧することで無料の方でも課金プレイに近い形で、より深く遊んでいくことができます。
入口は簡単操作で気持ちよくアクションできますが、プレイを進めるうちに、ゲーム好き特有の成長要素を充実させていますので、クラフト・合成・収集といったものとアクションの融合を是非、プレイして楽しんで頂きたいです。
「BangBang Rabbit!」とはこんなゲーム
マント姿のウサギを操作して、左右から押し寄せる敵をテンポよく倒していくアクションゲーム。ステージをクリアしたり、敵を倒していくことで得られるアイテムやコインを使って、アイテム作成やスキル強化などが可能。
作成&強化したアイテムとレベルアップでウサギを強化させていくことで敵を倒す爽快感がどんどん増していきます。
Android版 Google Playフィーチャー賞獲得 200万DL突破‼
自身のデビュー作の縁が最新作のファンアートに!
竹下:こちらのタイトルは今後の展開とかの予定はありますか?
株式会社91ACT 代表取締役社長
株式会社ハイド 執行役員
東京スタジオ開発統括 長谷川 仁
NEOGEO時代に格闘ゲームや、テクモ(現:コーエーテクモ)において『零 zero』シリーズのキャラクターデザイン・アートディレクション・プロジェクトマネージャーを担当後、角川ゲームスにてプロデューサー・執行役員/開発部長を経験。代表作は『影牢』シリーズ、『零 zero』シリーズ、『√Letter ルートレター』など。 現在は、株式会社91Actの代表を務めつつ、株式会社HYDEにて開発統括を担当。