新時代のソーシャルゲーム開発と運営|業界課題を解決する『kasimエンジン』
ソーシャルゲーム業界は、肥大する開発コストと、様々な企業の参入による競争激化といった環境の変化が、大きな課題として顕在化しています。
Precious Analytics社とIndigames社が共同で開発・運用する『kasimエンジン』は、この課題に対処するための新サービスです。今回は、Precious Analyticsの米元様と、Indigamesの山田様のお二人に、新時代のゲーム開発と運営について、詳細を伺いました。
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- 1ソーシャルゲーム業界の課題を解決する新エンジン
- 1.1開発背景|開発コストが肥大化する業界への提案
- 1.2業界の現状|開発費用の回収は困難
- 2回収率を上げ、安定した売上を確保する
- 3開発コストをかけずに成功している既存例
- 4ほぼ全てのF2Pゲームに適用可能
- 4.1ゲーミフィケーション機能の搭載を支援
- 5協業の背景|ソーシャルゲーム業界の新たな戦略を確立する
- 6両者の得意分野を掛け合わせ、『無限成長モデル』を提供
- 6.1Precious Analytics社|バックエンドのシステム化
- 6.2Indigames社|クリエイティブ開発
- 7『Kasimエンジン』のメリット
- 7.1開発だけでなく、『運用』で大きな効果を発揮
- 7.2開発と人材育成の同時展開が可能
- 8各種リンク
ソーシャルゲーム業界の課題を解決する新エンジン
ーー本日はよろしくお願いいたします。
ーー今回、二社の共創で新たなエンジンを開発されたとのことですが、開発に至った背景を教えて下さい。
開発背景|開発コストが肥大化する業界への提案
Precious Analytics社 米元様(以下、米元と表記)「はい。最近のソーシャルゲーム業界では、『競争優位性』と『持続性』を確保するために、開発費用が高騰しています。」
米元「より高品質なグラフィック・インゲーム(プレーヤーが最も操作する部分)の開発や、ゲーム設計の複雑化による影響で、開発費用が10億円かかるのは当たり前で、数十億から100億円程度かかることも一般的になっています。」
――各社様が高品質なゲームを作ろうとすればするほど、開発費用が高騰するというお話は、非常に納得がいきます。
――頻繁に行われるゲーム内イベントや、新規キャラクターがどんどん追加される様子を見ていると、ゲーム会社様がかなり工数をかけて運営されているんだろうな、と感じます。
米元「しかし我々は、『複雑な問題の解決法が必ずしも複雑ではない』ことと同じで、『ゲーム開発においても、全てを新しく作る必要はない』と考えています。」
米元「ゲームを売るためには新しい体験の提供が必要なのですが、その為に大きなコストをかけることが必然ではないと思ってます。」
米元「具体的には、高い頻度でのイベント追加改修や高頻度でのキャラクター追加の継続的な実装は必須ではないという考えです。」
業界の現状|開発費用の回収は困難
米元「例えば、多額の開発費用をかけて、高クオリティのゲームをリリースしたとします。ですが現実問題、その費用を回収することは難しい状況です。」
米元「一般的に、サービスを継続させるかどうかの判断基準は、かなり効率的な運用をしてたとしても『月の売上が5000万円以上に到達していること』となっています。」
米元「そしてこの『5000万円の売上』を達成できるタイトルは、上位400タイトル程度です。」
米元「この400タイトルにはゲーム以外のアプリも含まれており、上位は長寿タイトルが大きな割合を占めています。そのため、新規タイトルを継続させることはかなり難しい状況であることがわかります。」
――新規タイトルが上位400タイトルに食い込むには、ハードルが高いのですね。
米元「また、維持コストも多くかかります。仮に売上が5000万円だとすると、プラットホーム手数料が30%引かれるため、実質は3500万円の収益となります。」
米元「これくらいの収益だと広告や制作費用だけで、固定運用費の最低ラインを超えてしまいます。経費は想像以上に多くかかるのです。」
米元「広告や製作費用で必要なため、固定運用費だけでも売上の45%、制作費も含めると50%を超えるので、経費は想像以上に多くかかります。」
米元「そのため、5000万円程度の売上があっても、実際には運営が厳しいタイトルが多いです。1年以内にサービスを終了してしまうタイトルも数多くあります。」
――ありがとうございます。開発に多額の費用がかかるのにも関わらず、回収は困難な現状なのですね。
――タイトルをヒットさせるためには多額の広告費がかかるので、負のスパイラルに陥りやすいように思います。
米元「はい。そういった状況がここ数年続いています。開発費は肥大し、売上は下がり続けているので、これまでのやり方では通用しなくなっています。」
ーーありがとうございます。Indigames社の山田様からもお話を伺えますでしょうか?
Indigames社 山田様(以下、山田と表記)「はい。私たちはベトナムに拠点を置き、主に3DCGのクリエイティブを受託しているオフショア会社なのですが、米元さんが仰っていたゲーム業界の現状を強く感じています。」
山田「ゲーム会社様の開発タイトルは、どんどんグラフィックの質が上がり、新しいキャラクターやサービスも作り続けなければなりません。必然、国内の製作コストは上がっています。一方で売上は下がっているので、採算が合わなくなっています。」
山田「そういった背景があり、コストを抑える目的で、私達のような海外オフショア会社にご依頼が来ることが多々あります。」
――ありがとうございます。Indigames様がご事業している中で、業界に対して同じ課題を感じているのですね。
回収率を上げ、安定した売上を確保する
――今回発表された『kasimエンジン』の概要をお聞かせください。
米元「はい。先ほどの山田さんのお話にあったオフショア事業の活発化は、コストダウンの例として分かりやすいかと思います。」
米元「一方、コストを下げても回収率まで下がってしまったら意味がないと思います。」
米元「また、これまでの市場で成功を狙うには、コストをかけて大型タイトル化しなけらばなりませんでしたが、現在はかなり難しいです。」
米元「そこで、回収率を上げながら3000万円〜5000万程度の売上を安定して出す設計を考えました。」
米元「先ほど、5000万円程度の売上ではクローズしてしまうとお話をしたと思いますが、逆を言えば、5000万円前後の売上でも十分な収益が得られる設計にすれば良いということです。」
米元「それを実現するために、小コストでリリースが可能な『kasimエンジン』を開発しました。」
開発コストをかけずに成功している既存例
米元「最近、市場でヒットを記録した、とあるタイトルがあります。そのタイトルは常に上位の売上をキープしており、今月は1週間で既に10数億円の売上を出しています。」
米元「しかしプレイをしてみると、グラフィックに大きなコストをかけている印象もありませんし、インゲームもそこまで特徴的なものではありませんでした。」
米元「このゲーム以外にもいくつか同様の例があります。例えば昨年、初月で10数億円の売上を達成した後に、4億〜5億円程度の売上をキープし続けているタイトルがあります。」
米元「日系企業が作った作品でも、同じような設計で成功を収めているタイトルは既にいくつかあります。」
米元「コストを多くかけても売れないゲームがある一方で、コストをかけずに売れているゲームがあるのです。」
米元「安定的にそれなりの売上を生み出せるタイトルのモデルを、我々は『無限成長モデル』と呼んでいます。そのモデルを簡単に実現するために開発したのが、『kasimエンジン』です。」
米元「この『無限成長モデル』については、私が執筆した記事を参照にしていただければと思います。」
無限成長モデルの設計の概要は、下記の4点となります。
①深い育成設計
⇒キャラ単位でも育成が完了しないくらいの超深い設計と高インフレ設計
②サーバーグルーピング
⇒インストール時期ごとにサーバーでユーザーを分割して、後発ユーザーも初期ユーザー同様の体験ができる仕組み
③大量のコンテンツと育成軸
⇒段階的にやることが尽きないような設計と、育成に飽きないような育成軸の多様化
④緻密なバランス設計と徹底的な分析
⇒大量の要素をしっかりと成立させるような緻密なバランス設計と、徹底的なデータ分析による改善の繰り返しを、タイトルを変え市場を変えて行っていく運用スタイル
この無限成長モデルは、ソーシャルゲームの終わりがない育成部分を極めた形のモデルです。
※補足:サーバーグルーピングとは?
言葉そのものの意味としては「ユーザーのグループ分け」です。ゲームを始めた時期に応じて、先発組なら先発組同士、後発組なら後発組同士をサーバー分けします。
目的としては「後発ユーザーは、先発ユーザーに追いつくことは難しいので、同時期開始のユーザーごとに世界を分けることで公平性を持たせる」ことです。
例えば、1ヶ月前に開始したユーザーに今日始めたユーザーが、同じ世界(サーバー)で競っても勝ことも、追いつくことも難しいです。
だから、「同じ世界(サーバー)にいるのは昨日今日始めた1万人だけです」のように、スタート時期に応じてユーザーを切り分けていく考え方をとっています。
ほぼ全てのF2Pゲームに適用可能
ーーkasimエンジンはどのようなゲームタイトルやプロダクトに活用できるのでしょうか?
米元「kasimエンジンはほとんどのF2Pゲームに適用できます。ユーザーをグループに分け、様々な要素で徹底的に育成、インフレをさせていくモデルなので、アプリで人気のシミュレーションゲームやRPGとは非常に相性が良いです。」
米元「プレイヤースキルが重視されるような一部のタイトルでは適用しづらいですが、プレイヤースキルを活かせる形で、適切なバランス調整が行えれば適用可能です。」
米元「そのため、ほぼ全てのF2Pゲームに適用可能だと思っています。」
ゲーミフィケーション機能の搭載を支援
米元「ゲーム以外のプロダクトだと、ゲーミフィケーション要素を入れるサービスなどであれば使いやすいと思います。」
米元「そういった場合に備え、簡単にゲーミフィケーション機能を導入していただけるようなご支援を豊富に用意しています。」
ーーありがとうございます。ほぼ全てのF2Pゲームや、ゲーミフィケーション要素のあるアプリケーションに適用可能であることが理解できました。
協業の背景|ソーシャルゲーム業界の新たな戦略を確立する
ーー今回、Indigames様がプレアナ(Precious Analytics)様との協業に至った動機や共感ポイントを教えてください。
山田「はい。私は元々、長くソーシャルゲームの開発運営に携わっており、とある中規模タイトルの開発を構想していました。」
山田「しかし国内のソーシャルゲーム開発は、多額のコストをかけて作る大型タイトルか、少額で作るハイパーカジュアルゲームのようなタイトルに二極化されていました。そのため、中規模タイトルの開発は難しい状況でした。」
山田「そんな折に米元さんとご相談をさせていただく機会があり、私が作りたい中規模タイトルの構想とマッチしたエンジンを開発しているお話を伺いました。」
山田「その件で盛り上がり、お話をする中で、私自身も何となく感じていた『ゲーム業界の課題である設計の問題点』に共感をしました。」
山田「売上の高い海外ゲームでも、クリエイティブや開発費に目を取られがちで、『売れる要因は資金力の差である』と多くの人が考えていると思います。」
山田「しかし先ほど米元さんも仰っていたように、実は資金力に影響されたものではないタイトルも多くあります。多額の開発費をかけなくても売上をキープし続けられる要因を、米元さんと言語化をすることでよりクリアにすることができました。」
山田「プレアナさんと共創を行うことで、日本国内で新たなソーシャルゲームの戦略を確立できるのではないかと思い、協業に至りました。」
ーーありがとうございます。中規模タイトルの開発が難しい前提の中、プレアナ様とのご相談で設計思想が具現化されたのですね。
山田「はい。また、ソーシャルゲームだけではなく、Web3やブロックチェーンの領域でも既に同じような問題を抱えていると私は考えています。」
山田「そういった領域に対しても新たなアプローチを行うことで、アドバンテージを得られる想像がしやすかったことも、プレアナさんとの協業に至った理由です。」
両者の得意分野を掛け合わせ、『無限成長モデル』を提供
ーー協業内容の詳細と、各社の技術的な強み・特徴などをお聞かせください。
米元「はい。今回共同で行っているのは、kasimエンジンを軸にした『無限成長モデル』を効率的に作るためのトータルサービスのご提供です。」
Precious Analytics社|バックエンドのシステム化
米元「プレアナ社は、過去のゲーム設計運用の知見から、必要となる機能を抽象化・汎用化した上で、サーバーサイドの機能追加を設定ファイルのみで行えるエンジンを開発しました。そのため、非常に簡単に機能を実装していただけるものとなっております。」
米元「そのうえで、ゲームの複雑なバランス設計をテンプレート化したものをご用意しています。」
米元「これを利用していただくことで、企画から機能実装、バランス設計の部分のコストパフォーマンスを最大化させたタイトル展開が可能です。」
米元「また、UI設計やフロント実装のテンプレート化も進めており、グラフィック制作も併せたトータルのコストダウンを可能にしていきます。」
Indigames社|クリエイティブ開発
米元「Indigames社は、オフショアへの知見だけでなく、ゲーム開発についても深い知見をお持ちですので、フロントやクリエイティブ開発を担当していただきました。」
米元「お互いの得意分野を相互補完しているので、両社は非常に相性が良いです。」
米元「山田さんとは以前も仕事をご一緒させていただいたことがあり、ゲーム設計運用への理解が深い方であることも予め知っていたので、協業も行いやすかったです。」
山田「ありがとうございます。米元さんが仰ったように、弊社はオフショア開拓により、海外エンジニアやデザイナーでも国内開発と変わらないクオリティを出せることが強みです。」
山田「国内では人材の採用が難しいのですが、ベトナムであれば優秀な方を採用しやすい環境にあるので、今後kasimエンジンによるサービスが拡大しても問題なく対応できる強みがあります。」
山田「また、正直に申し上げますと、オフショアでは細かい部分のコミュニケーションの齟齬を0にすることが難しく、アジャイル開発(細かく実装とテストを繰り返す開発)は得意ではありません。」
山田「しかしこれは、kasimエンジンを使うメリットとして捉えることもできます。」
山田「先ほど米元さんからもお話がありましたが、バランス設計をテンプレート化してある状態から開発を始められるので、コミュニケーションの問題は解消できます。弊社の強みだけを活かした開発ができることを実感しています。」
ーーありがとうございます。システム面ではプレアナ様の知見が活き、クリエイティブ面ではIndigames様の強みが活かせる、両社の強みが相乗効果で掛け合わされた協業であることを理解できました。
『Kasimエンジン』のメリット
開発だけでなく、『運用』で大きな効果を発揮
ーーこれまでのお話から、kasimエンジンはゲームの開発だけでなく、適切なコストで運用をできるエンジンであることが印象的です。
山田「はい。運用面のメリットは非常に大きいです。」
山田「機能を追加する際は多くの工数がかかると思いますが、工数をかけずに機能追加を行えることがkasimエンジンの大きなメリットです。」
ーーありがとうございます。
開発と人材育成の同時展開が可能
ーー他にも『kasimエンジン』のメリットがあれば教えてください。
米元「kasimエンジンを用いたプロジェクトでは、新規タイトルの開発と人材の育成を同時に行うことが可能です。」
米元「ゲーム開発の経験が少ない方は、運用中のタイトルから担当をすることが基本です。」
米元「運用中のタイトルはやるべき業務がある程度決まっているので、未経験の人でも配属しやすいことが理由です。そこから経験を積み、スキルアップをしていきます。」
米元「しかし反対に、新規タイトルでは対応すべきことが多岐に渡り、ある程度経験が必要なので、未経験者に任せづらい特徴があります。」
米元「さらに、最近は運用中のタイトル自体も減少傾向にあるので、『新規で人を雇っても、運用中のタイトルに配置できないので育てられない』という業界課題があります。」
米元「kasimエンジンを用いたプロジェクトでは、その課題も解消できます。」
米元「先ほども少し触れましたが、kasimエンジンではプランナーがやるべきゲーム設計業務のほとんどをテンプレート化しています。」
米元「テンプレートに沿えばやるべき業務が分かりやすいので、未経験の方でも新規タイトルの運用を担当しやすくなります。」
米元「新規タイトル開発を行える人材を高速で育成することにもつながるので、人材育成においても多くの人が得をする仕組みになっています。」
米元「ただ、作業量自体は多くありますので、AIやシミュレーションを使い、省コスト化することも同時に進めており、徐々にその範囲を広くしていくつもりです。」
米元「それでも人が対応しなければならない業務は必ず発生しますので、人材育成の点でも有効にに活用していただければと思います。」
ーープランナー職はファジーな性質を持つ職なので、テンプレート化されていることは大きなメリットであると思います。
ーーkasimエンジンを用いた中規模タイトルが市場に増えれば、開発経験者のニーズも増えると思いますので、業界全体としても良いサイクルにつながりそうだと感じました。
ーー本日はありがとうございました。
各種リンク
- 株式会社Precious Analytics 公式:https://pre-ana.com/
- Precious Analytics CEO 米元 広樹氏 note:https://note.com/ricesource/
- 株式会社Indigames 公式:https://indigames.net/ja/
PreciousAnalytics様サービス資料より引用