【ゲームプロデューサーを目指す学生がクリエイターにインタビュー】 認知バイアスを強めてはいけない 小山順一朗#8

【ゲームプロデューサーを目指す学生がクリエイターにインタビュー】 認知バイアスを強めてはいけない 小山順一朗#8

【ゲームプロデューサーを目指す学生がクリエイターにインタビュー】 認知バイアスを強めてはいけない 小山順一朗#8

買う前に買わせる力を持ったコンセプトとその商品の具体例を見てきました。
その中で、わがままなニーズを見つけ出して、開発することがMIP理論の目標だと小山さんは言います。
そのわがままニーズを見つける方法はあるのでしょうか。

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  1. 1超わがままニーズ
  2. 2超わがままニーズを叶えた例
  3. 3認知バイアス・偏見
  4. 4MIP理論のまとめ
  5. 5まとめ

超わがままニーズ

蚊が嫌う成分を肌に吹き付ける。皮膚に塗るだけで、蚊に刺されることなく外で長時間活動できます。

小山様(以下、小山と表記)「いわゆる虫よけスプレーです。これに対して、化学薬品大嫌いって人もいます。そんな人は絶対使わないわけですね。」

小山「肌荒れする人もいるし、そもそも化学薬品が嫌いな人もいます。これをチャンスだと思った人だけが勝利すると梅澤先生は言っております。」

小山「つまり、わがままニーズを作れちゃうんです。」

化学薬品の心配をしなくても良い、しかも手軽で蚊に刺されない、外で長時間活動できる。元のわがままニーズを発展させて超わがままなニーズになっている。
このわがままを解決すれば、虫よけスプレーでは満足しきれなかった人たちはこぞって買うだろう。

─── ただし、元のわがままニーズの時点で満足してしまっている層が多いほど、わがままニーズをさらに発展させる手法でわがままニーズを作るのは難しく思えます。そういう点では市場調査による需要の理解が重要になってくるのだと思います。

超わがままニーズを叶えた例

小山「それを解決したのがおにやんま君。」

引用:https://oniyanmakun.eikyu-s.com/

小山「これが出る前はみんな化学薬品で解決しようということばかりに頭がいく。」

*インタビュー後に小山さんより、おにやんま君の例について補足をいただきました。
小山(補足)「わがままニーズを見ずに、既存商品だけを見ていると改良,改善を考えてしまう。」

「『化学薬品がダメなら、天然由来の成分にしたらどうか』のように単純に対比して発想しがちです。天然由来ので解決しようとしていて、化学薬品から全く離れていないのです。」

─── 補足を踏まえれば、既存商品の延長線上にあるアイデアしか出てこないという状況で商品開発を行えば、みんな欲しがるけど誰も見たことない商品にはならない。つまり、既存商品の改善,改良ばかりを追いかけていると天才商品は生み出せないので、わがままニーズに目を向けようということなのでしょう。

小山「トンボのブローチを虫よけスプレーの代替ですってすることで沢山売れるわけです。すごくないですか。簡単でしょう。」
*Eikyuという企業が開発したおにやんま君は累計で100万個以上も売れ、素晴らしいヒットとなった。

福山「言うだけなら簡単だなと思います。ただ、これまで大学・大学院の研究の中で似たようなステップで色々とアイデアを出して先生になんとかOKをもらうわけですけど、テンポ良く進んだかと言われると絶対そうではないです。」

福山「言っていることはその通りだと思うんですが、そんなにポンポンできるかと言われると......という感じです。」

小山「そうなんですよ。これが種明かししてみると簡単なんだけど、柔軟で合理的になればいいんです。」

認知バイアス・偏見

小山「この文字が読めますか?」

福山「あー、えーっと......デンタルフロス(DENTAL FLOSS)ですね。」

小山「なんでわかったんですか!?」

─── このフォント(Electro harmonix)を知っていたこともあり、英語だと必死に思い込むことで何とか読めました。例示を台無しにしてしまった申し訳なさでいっぱいでした......(笑)

思っていたであろう流れを崩してしまったが、認知バイアス・偏見の説明としてはもってこいの例だ。日本人はこれを英語としてみることは難しい。どうしてもカタカナが真っ先に思い浮かんでしまう。

小山「やっぱり脳は合理的に判断するので、最短ルートを通って思考しようとします。」

小山「最初にインストールされたカタカナっていうところを通ってしまう。」

小山「似た世界にばっかりずっと没頭していたり、その世界のクラスター(集団)の中に存在するコンテンツを浴びていると新しい発想ができなくなる。」

福山「それはいつも自覚していて、新しいことに触れようと心がけてはいます。ただ、根本の発想自体を変えるっていうことがすごく難しいなとは感じています。」

小山「思考法を身につけるのがいいんですが、(小山は)方法の一つとして物事をアイデアとニーズに分配するっていう癖を訓練されました。」

小山ニーズを曖昧に捉えないで、言葉にする。こういうことならこれをしたいと自分で紡ぎだせるのかということですね。」

MIP理論のまとめ

商品開発こそが重要であり、そのための戦略を立てるためにはニーズを理解しよう。

・そのニーズの中でも、本人が気付いていない強いニーズであるわがままニーズを見つけ出せれば、良いコンセプトを生み出せる。

・コンセプトとはアイデア(技術)とベネフィット(気持ち・ニーズ)を足したものである。そして、買う前に買わせる力のことでもある。

・このコンセプトをアイデアとニーズに分解して言語化できるようにしよう。


小山さんのこれまでのMIP理論とそれを身につけるための方法についてまとめると、このように言えるだろう。
 

まとめ

これまで、小山さんが学んできたMIP理論について紹介していただき、自身の経験と研究で扱ってきた手法を言語化する助けになったと思います。

今回でMIP理論については最後になります。
#9以降では小山さんが学生に教える中で考えていることや、ゲーム業界が今後どうなっていくのかについての考察を伺いました!

次回は小山さんが日本工学院にて行っているVision Craftというプロジェクトを通じて、学生に感じたことについてお届けします!

残りの記事もお楽しみに!
 

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前回のまとめ これまでは小山さんが梅澤先生から教わったというMIP理論について紹介していただいた。 小山さんは2024年から、日本工学院にて学生たちにMIP理論やこれまでの経験を教えています。 その中で学生たちに感じたことを聞いてみました。
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プロデューサーやディレクターとしてゲーム業界で働いてこられた方の経験や考え、メッセージを、ゲーム業界を目指す学生たちに向けて発信するためのインタビュー企画。 ゲーム業界を目指している学生をインタビュアーとし、先達からのメッセージを学生目線を通じてお届けします。 その第一弾として、元バンダイナムコのプロデューサー、小山順一朗氏にインタビューさせていただきました。
福山
ライター

福山

インターンとして執筆を行っている情報系の大学院生です。ゲーム業界への就職を目指す当事者として、業界に興味を持つ皆様のお役に立つ記事をお届けしていきたいと思います。 大学院ではカラーユニバーサルデザインやデザイン工程でのコミュニケーションについて研究しています。

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