グローバルで戦えるゲームを創る グリーグループの考える新しいエンタメ産業
近年、分散型のインターネットを指す「Web3」と、3DCGで描かれた新しい世界「メタバース」がバズワードとして注目を集めており、日本の名だたるゲーム会社が各社参入を表明しております。
その中でひときわ目立つ取り組みをしているのがグリーグループです。設立は2004年。15年以上もゲーム業界のトップランナーとして走り続けている同グループは、イーサリアムのL2チェーン「Polygon」のバリデーターとして参入し、スマートフォン向けメタバース「REALITY」は、世界合わせて1000万ダウンロードを誇る。紛れもなく、同グループはWeb3とメタバースの両輪にグローバル視点で取り組む日本のチャレンジャーです。
今回は、グリーグループのWeb3領域のトップを務める村田様に、世界に本気でチャレンジするグリーグループの取り組みと、Web3時代のマーケティングについて伺いました。
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- 1村田 卓優 様
- 2Web3は『手段』であり、目的は素晴らしいゲームを作ること
- 2.1グリーのWeb3事業①|バリデータービジネス
- 2.2グリーのWeb3事業②|投資事業
- 2.3グリーのWeb3事業③|ゲーム事業
- 3ゲームを中心にしたエコシステムを作る
- 3.1自社で一気通貫で開発することができる体制
- 3.2メタバースと両輪で作る新しい世界
- 4『最高のゲーム体験を作る』マーケティングのポイントは?
- 4.1グローバルで戦えることを前提とした展開
- 4.2コミュニティを組成し、巻き込んでいく力を重視
- 4.3透明性の高いコミュニティ運営
- 5マーケティングのプロを採用する時の視点は?
- 5.1Web3ゲームを『体験』している
- 5.2新しい領域には「正解」がない
- 6日本がグローバルで戦えるコンテンツを作る
- 7グリーグループ|関連情報一覧
村田 卓優 様
Web3は『手段』であり、目的は素晴らしいゲームを作ること
――本日はよろしくおねがいいたします。
――まず、グリーグループがWeb3領域、特にNFTゲーム(以下、Web3ゲーム)にチャレンジする理由をお伺いしたいです。
村田「前提として、ゲーム産業の歴史を見ていくと『新しいテクノロジーが生まれたとき、新しい姿のゲームのマーケットが生まれる』ということが繰り返されています。例えば『スマートフォン』という技術・デバイスが誕生したことが『ソーシャルゲーム』という新しいマーケットの誕生のきっかけになりました。皆様、記憶に新しいと思います。」
村田「そう考えると、Web3ゲームはNFTや仮想通貨、トークンの力によって、遊びながらお金を稼ぐことができ、更に自分のゲーム内資産を他人と売買できる新たなトレンドです。ゲームで遊ぶことにより得られたゲーム内アイテムやキャラクターが自分の資産になるのは大きいです。これは『ゲーム』という領域に変革を起こすと思います。」
――日本のゲーム企業として、Web3ゲーム領域へのチャレンジは『必然』のことだと感じました。
――一方で、グリー様が取り組んでいるWeb3のビジネスは『ブロックチェーンのバリデーター』や『出資』などのゲームの周辺事業が多いイメージがあります。
村田「現在、取り組んでいるのは、バリデータービジネス、ゲーム事業、投資事業の三つです。」
村田「ですが、この中でも一番やりたいことは『素晴らしいゲームを作る』ことです。今はバリデーターや投資に関する情報発信が多いですが、その本質は『素晴らしいゲームを作る』ためのサポートです。」
村田「なので、今行っているバリデータービジネスにしても投資事業にしても、私たちの作るゲームにとって良い影響があるであろう企業様、あるいはプロジェクトと組ませていただいております。」
――なるほど、あくまでWeb3は『手段』であり、中心にある目的は素晴らしいゲームを作ることなのですね。
グリーのWeb3事業①|バリデータービジネス
――今のお話を踏まえたうえで、それぞれのビジネス領域について詳しくお話していただきたいです。
村田「まず、バリデータービジネスは、ブロックチェーンを運用する仕事です。Web3ゲームはブロックチェーン上で運用されるため、そのインフラとしてブロックチェーンに関する構造的な理解や人とのパートナーシップ、サポートが必要だと考えています。」
――Web2時代までのゲームで、サーバーやスマホアプリ等のインフラが大事であることと同じですね。
村田「はい。そのため、バリデーター事業を行っているのです。」
――Avalanche・Polygon・Oasysなど、日本・海外問わず、名だたるチェーンに参画していらっしゃると認識しております。
村田「そうですね。グリーグループはAvalancheの運営元であるAva Labs様と戦略的パートナーシップを締結しております。また、Polygon様は世界で100限定のバリデータの1社として、バリデーターノードの運用を担当させていただいております。他にも、ゲーム特化の国産ブロックチェーンであるOasys様にも、バリデーター運営だけではなく、トークン出資の面でも関わらせていただいております。」
グリーのWeb3事業②|投資事業
村田「また、投資に関しては、私が担当しているのは事業投資です。私たちが作るゲームに関連する領域に投資することを行っております。具体的には、Oasys様への投資とYGGJapan様への投資を行っています。」
――Oasys様は先ほどのゲーム特化ブロックチェーン、YGGJapan様は世界最大級のゲームギルド様ですね。
――こういった「Web3ゲームを支えるシステム」にまで、グローバル基準で着手している企業様は中々いないのではないでしょうか?
グリーのWeb3事業③|ゲーム事業
村田「最後はゲーム領域ですね。ここは、目下開発中ということもありますし、どのブロックチェーンを使ってゲームを作っていくかも検討中です。」
――ユーザー視点で、グリー様が作るゲームに一番適したチェーンを選んでいかれるのですか?
村田「そういう視点もあるかと思いますが、色々なチェーンでゲームを出した方が、国内・海外を問わず、多くの方に遊んでいただけるのかなと考えております。」
――前述のバリデーター事業も、複数のブロックチェーンでお仕事されているのは、そういった理由もあるのですね。
ゲームを中心にしたエコシステムを作る
――グリー様のリリースを読んでいると、先ほどのブロックチェーンへの投資のみではなく、ウォレットやNFTマーケットプレイスなど、Web3ゲームに関わる全てのプロダクトが視野に入っていることがわかります。
――将来的には、Web3ゲームのエコシステムを作ることが1つの未来予想図だと推測しています。
村田「ご指摘の通りです。ブロックチェーンゲームを出すためには、ウォレットやNFTマーケットプレイスが必要です。なので、現在それらを自社で制作しています。」
自社で一気通貫で開発することができる体制
――ゲームのみならず、ゲームを支えるエコシステムまで自社で作られている。
村田「はい。ウォレットにしてもマーケットプレイスにしても、他社様のものを使う可能性もありますが、私たちはこの新しい産業についての構造を理解しておく必要があると考えています。」
村田「なぜかというと、例えば問題が発生した場合、自社で原因究明ができない可能性があるためです。したがって、ウォレットやマーケットプレイスの構造を理解して、自社で原因究明ができるレベルにまで持っていく必要がありました。」
――「仕組みを理解する」ために「一度自分で作る」ことが自社内でできる。そこまで着手している他社様はあまり居ないのではないでしょうか?グリー様のスケール感を感じます。
――自社で全部作ってみて、それを踏まえた上で外部のサービスを使用するのが良いのか、自分たちで運営した方が良いのかを改めて検討するということでしょうか?
村田「はい。このあたりは、まだ先行しているプレーヤーや企業がたくさんいらっしゃるので、勉強させてもらいつつ、実践していく中で構造を理解したいと思っています。ですが一方で、絶対にできないことがあると予想しています。完全に理解した上で、自分たちで作るか外部に任せるかを決めたいと思います。」
村田「根本的には良いゲームを作りたいという想いがあります。なのでそのために、最適なアセットやシステムを探求していきたいと考えています。」
――ユーザー保護の観点もあると感じます。
村田「目的の一つではあります。ちなみに、これらのプロトタイプは近々完成予定です。また、エンジニアチームが別の形でのウォレットを発表する予定です。これを製品化するか、自社でやるか、あるいはこの領域に詳しい私が担当するかはまた別途判断したいと思っています。」
――表側ではバリデーターや投資を行う一方で、裏側ではしっかりプロダクトを作られている。グリー様の開発力の高さを感じました。
メタバースと両輪で作る新しい世界
――Web3に本腰を入れて取り組まれているグリー様ですが、一方でREALITY株式会社を中心にメタバースの最前線を走っていらっしゃいます。
――グリー様は『Web3』と『メタバース』を融合させて新しいサービスを作るのではないかと想像しております。
村田「まだ構想の段階ですが、ご想像の通り、最終的にはメタバース空間にブロックチェーンの仕組みを入れたら、良い化学反応が起きるのではないかと考えております。」
村田「そう考える理由としては、メタバースが生活の一部になる時代が、おそらく来ると考えているためです。例えばアプリ「REALITY」は1000万以上のダウンロードがあって、多くのユーザーがアクティブに活動しています。その中で1日の3時間とか4時間とか滞留する方もいらっしゃって、ユーザー様にとっては『生活の一部』になっている事例もあります。」
――REALITY様のユーザーは海外にも多いと聞きます。暗号資産は海外送金との相性も非常に良いですし、私は可能性を感じます。
村田「そうですね。その点以外にも『メタバースの中でお金を稼いで生活する』という経済圏はあっても不思議ではないと思いますし、作れるなら作りたいなと思っています。」
村田「ただ一方で、いきなり『REALITYがブロックチェーン対応しました』って言うと、今までのユーザーさんからしたら違和感があると思います。アプリ「REALITY」にブロックチェーンを足すっていう気持ちは全くなくて、今作っているブロックチェーンゲームはこれまでのアセットは一切使わずに、全くゼロから作ってます。」
――新しい経済圏を作るという想いを抱きつつも、REALITYのユーザー様のお気持ちをしっかり考えられたプロダクトづくりをされていると感じました。
『最高のゲーム体験を作る』マーケティングのポイントは?
――現在、グリーのWeb3事業ではマーケティングの専門家を募集しているとお伺いしております。
――現在募集しているマーケティングの専門家の方には、どのようなことを実現してほしいとお考えなのでしょうか?
村田「前提として、当社はブロックチェーンゲームを制作しており、そのゲームのマーケティングを担当していただける方を求めています。」
グローバルで戦えることを前提とした展開
村田「第一に、現在制作中のゲームは日本市場だけを考えているわけではないため、グローバルマーケティングが前提条件となります。
――そうなってくると、英語が必要になってきたり、海外のユーザーの対応をされたことがある方は有利ですね。
村田「マーケティングと一口に言っても、日本と海外ではかなり方法論が異なりますからね。」
――先日、REALITYのCEO様が海外採用を強化している旨を発信していらっしゃいましたね。多くのグローバルエリートが貴社の門を叩いていると想像します。
さいきん毎日REALITYのアメリカ地域責任者の採用面接してる。 まだ採用決まってすらいないのに、あまりに最高な人材ばっかりに出会えてるので、うまくいく気しかしなくなってきた!
— DJRIO.eth @ REALITY (@djrio_vr) March 3, 2023
世界中で数億人に使われるメタバースに一歩ずつ近づいてるぞ
コミュニティを組成し、巻き込んでいく力を重視
村田「第二に、マーケティングを行いながら、自分自身もユーザーとして、ユーザーを巻き込んでコミュニティを作ることができる方が理想的です。」
――Web3×マーケティングの分野ではコミュニティは重要視されておりますね。
村田「そうですね。ユーザーを巻き込んで一緒にゲームを作り、エンターテインメントの世界を創造していくのは、非常にやりがいがあると思います。」
村田「ですが一方で、私たちは、Web2でもWeb3でも、マーケティングの本質はあまり変わらないと考えています。コミュニティドリブンなファンマーケティングは、Web2のゲームでも頻繁に行われているため、これに取り組んでいた人であれば、十分な親和性があると思います。」
村田「ただ、大量の広告を出して、その中から興味を持つ人を見つけ、彼らのロイヤリティを高め、ゲームをたくさん遊んでもらうように拾い集めることよりも、このゲームは誰と誰と誰が遊ぶものとしてイメージを定め、コミュニティを形成して、実際に一緒にゲームを運営していくことができると思っています。」
村田「特にWeb3のゲームにいうのはトークンの発行というポイントもあり。ゲームが盛り上がることがユーザーさん自身の価値の向上に繋がることもあります。なので、ユーザーさんと一緒にゲーム自体を盛り上げていけるようなことが得意な人っていうのがいいと考えています。」
――Web2でもWeb3でも、コミュニティに関連したマーケティングを経験されている方は有利なのかなと感じました。
透明性の高いコミュニティ運営
村田「あとは、透明性高くコミュニティのメンバーやユーザーさんと接することができる人は魅力的ですね。
村田「Web3時代のユーザーと運営の関係は、提供者と事業者みたいな一方通行な形じゃないと感じます。双方がユーザーでもあり運営でもある。なので、頻繁にユーザーに情報発信をするし、ユーザーの意見をゲームに取り入れる。」
――わかります。私も経験がありますが、杓子定規に『検討させていただきます』という感じではないですよね。
村田「はい。何かを決めるにしても、会社の会議室で決めるのではなくて、みんながいる場所で、透明性の高い中で『こういうことをやりたいと思ってるけど、どうかな?』っていうのを聞いたりとか、コミュニケーションがすごくうまく取れる方は魅力的ですね。」
村田「関連していうと、ユーザーさんのやりたいことを知るには、やっぱり自分がユーザーになるということが一番わかりやすいヒントにもなるのかなと思います。いろんな人を巻き込んでまとめ上げる人っていうのが理想ですね。」
まとめ|Web3マーケティングで重要なポイント
- 海外展開を意識したマーケティング
- コミュニティを重視したマーケティング
- 透明性の高い場でユーザーの声を運営に生かすことができる素質
マーケティングのプロを採用する時の視点は?
――グリー様のWeb3マーケティングの考え方についてお伺いしました。
――それを踏まえて、ずばり、マーケティング職についてはどのような方に来ていただきたいとお考えですか?
Web3ゲームを『体験』している
村田「一番大切なことは、ブロックチェーンゲームを実際に体験している中で『なぜ彼らが熱狂しているか』を理解していることだと思います。」
村田「今ブロックチェーンゲームを熱狂的に遊んでる人っていうのも事実いらっしゃいます。彼らがなんでそんなに熱狂してるんだろうっていうのを理解するっていう意味においては、ブロックチェーンゲームを遊ぶだけにとどまらずに、各ゲームがDiscordを開設したりとか、その中でユーザー代表みたいなメンバーがいたりしますので、実際に触れてみてほしいですね。」
――自社のゲームに「熱狂」をもたらすポジションなので、ユーザーが「熱狂」するほど魅力を感じているゲームは是非触ってみていただきたいですよね。
村田「やはり、実際に熱狂してる人たちの中に入るっていうのが多分一番理解が深まると思います。当社のWeb3関連のポジションを受けられる方は、是非実際に体験して、分析していただきたいです。これはもう、必須だと思います。」
新しい領域には「正解」がない
――『Web3×ゲーム』の世界は答えがない領域だと思います。そう考えると、0→1が作れるような人を採用したいのではないかと推察しておりますが、いかがでしょうか?
村田「もちろん、そういった能力はあった方がいいです。ですが、より前提のところで言うと『挑戦と失敗の繰り返しの中で成功に向かって進む』という経験をしたことがある人は強いと思います。」
村田「おっしゃっていただいた通り、この業界は『こうやればいい』という成功例みたいなのがまだ確立されていません。だからこそ、仮説を立てて実行できる人が向いているのではないかと思っています。Web2世界、今までのプロモーションの中でもコミュニティマーケティングとかされてた人は結構親和性が高いと思っていますね。」
日本がグローバルで戦えるコンテンツを作る
――お話を聞いていて、村田様のお考えは「Web3事業をする」のではなく「最高のゲームを作る(ためにブロックチェーンを使う)」のだと感じました。
村田「そうですね。自分で言うのもなんですが、私たちはちゃんとそのテクノロジーの構造を理解して、そのうえで本当に面白いエンタメを作るというポリシーを持ってWeb3の事業をしています。これから新しいテクノロジーが新しいエンタメ産業を作る場面が来ると思います。そういった変化をゼロからちゃんと紐解いて、理解して、新しいものを作りたい、そういうチャレンジがしたい方と、一緒に働いていきたいと考えております。」
村田「一方で、私たちは本当に面白いエンターテイメントをWeb3の領域で生み出したい。日本がグローバルで戦えるエンタメコンテンツを本当に作りたいんです。そういう意味で、私たちがいずれリリースするWeb3プロダクトにも、ご期待いただきたいなと思っております。」
――本日はありがとうございました。貴社のチャレンジにいちゲーム好きとしても心躍りましたし、ゲームがリリースされる日を楽しみにしております。