ChatGPTでゲームの企画書を作る! 事例を通して考察するメリット・デメリット

以前の記事で、ChatGPTを用いたゲーム企画書作成の方法を紹介しました。
本記事では生成AIに習熟していないライターがChatGPTを用いて実際にゲーム企画書を作成し、感じたことをまとめました。
コンテンツ [表示]
- 1AI初心者はChatGPTを使用してゲーム企画書を作れるか?
- 2ChatGPTを使用した企画書作成プロセス
- 2.1アイデア出し
- 2.2企画書草案作成
- 2.3アイデアの深掘り
- 2.4キャッチコピー決定
- 2.5タイトル決定|堅苦しく、例示に引きずられる
- 2.6ゲームシステム
- 2.7ゲームシステム-自作
- 3企画書作成
- 3.1画像作成
- 4ChatGPTを用いた企画書作成の問題点
- 4.1指示内容が体系的でなかった
- 4.2「ファクトチェック」を怠った
- 4.3対話感覚で出力を求め、指示に齟齬が生まれた
- 5企画作成におけるChatGPTのメリット
- 5.1アイデア出しの効率化
- 5.2対話形式での壁打ちによる企画のブラッシュアップ
- 6まとめ|生成AIを用いた最適なクリエイティブを模索しよう
指示内容が体系的でなかった
本企画書作成段階における最大の問題点は、ChatGPTへの指示の方向性が体系的でなかった点だと感じました。
本企画書では筆者の好みにより世界観設定やシナリオ面を特に重視して出力させました。その結果、ゲーム性に関する検討が不十分となった上にChatGPTの当初の意図とは異なる方向性へゲーム内容が変化しました。
これによりコア要素の検討が不十分なまま世界観的な制約がいたずらに増えてしまい、結果としてゲームシステム検討段階で躓いてしまった可能性があります。
まずはゲームシステムに関して深掘りを行い、その上で具体的な世界観やビジュアルに関する言及を求めていた場合、ChatGPTが意図したゲームデザインを軸としたゲーム制作が行えていた可能性が考えられます。
こうした体系的な思考プロセスに基いた指示や質問を行うには、使用者側にゲーム制作に関する体系的な理解が必要です。
「ファクトチェック」を怠った
今回企画書を作成したゲームは、当初はパズルをコア要素としつつ探索とシナリオが密接に繋がったパズルアクションでした。
想定されていたゲームサイクルは「探索→パズル→シナリオ→探索」です。探索段階で収集するアイテムをパズルに使用する上、シナリオ上のキーアイテムとしても機能するという点がゲームとしての面白さであったといえます。
この場合に問題になるのは「具体的にどのようなパズルを用意するのか?」であり、その点に関してはChatGPTは明確な答えを持っていないように感じました。
これはハルシネーション(生成AIが事実と異なる内容を出力すること)と通底した問題であるように思えます。
ChatGPTは非常に高い文章生成能力を持ちますが、それは生成物の品質を保証するものではありません。そのため、「本当にこれがゲームとして成立しているのか」という疑問は使用者が見極める必要があります。
特に今回の作品は「探索要素を加えたパズルアクション」というあまり身近ではないゲームジャンルでした。そうした独自のゲーム性に関する具体的なイメージを使用者・ChatGPT共に抱くことができなかったことが失敗の最も大きな要因であったといえるでしょう。
例えばRPGやFPSのように、ゲーム性がフォーマット化されているジャンルであれば、システムそのものに手を加える必要がないため大きな問題はないかもしれません。
ただ、独自性の強いジャンルであればあるほど、使用者が具体的なゲームのイメージを持ちながらChatGPTを使用するべきです。
本企画書が失敗した一要因として、このようなChatGPTの出力に対する批判的思考を怠った点があると考えられます。
注:スレッドの長期化などの原因もあり、正確な分析は現状ではできていません。しかし先述したように初期よりパズル要素の具体例と探索要素の噛み合いが悪く、パズル要素と探索要素の連結はあまり意識されていなかったように思えます。
対話感覚で出力を求め、指示に齟齬が生まれた
キャッチコピー決めの段階で指摘したように、今回の試行では筆者の説明不足によりChatGPT側の出力が歪むケースが散見されました。
ChatGPTの文脈を高いレベルで読み取れるため、使用者の曖昧な指示からも多くの要素を読み取り、反映させようとするのかもしれません。
そのため使用者が正確に意図や条件を伝達しなければ、本来の意図から大きく離れた出力をしてしまう可能性があります。
ただ、こちらは指示文を工夫することで十分に克服可能な問題です。
生成AIに高精度な出力を促すプロンプトのように、指示文を工夫することでChatGPTの出力は大きく変化します。言葉を厳密に用い、意図を明確に伝えることを意識することが重要です。
企画作成におけるChatGPTのメリット
本項目では、前項で指摘した欠点を踏まえてもなお、ChatGPTを使用して便利だと感じた点を、具体的な用途の考察を含めて解説します。
アイデア出しの効率化
今回の試行では、アイデア出し段階で最もChatGPTの恩恵を受けたと感じました。
自分はアイデアがなかなか出せない一方で、一度アイデアが決まったらその先の意思決定やクリエイティブにはあまり困らないタイプです。
そのため日常的にアイデア出しに最も苦心しており、ChatGPTを使用することでアイデア出しの工数を減らせる点はChatGPT最大の強みだと感じました。
逆に、アイデア出し以降は自力で進捗を生むことが出来るからこそ、ChatGPTによるクリエイティブに干渉をし過ぎてしまいノイズが生まれた可能性はあります。
とはいえ今回のメソッドはゲーム企画書に留まらず幅広いクリエイティブに応用可能だとも感じたので、「0から1を生み出す」ことが苦手な方はぜひChatGPTを使用したアイデア出しを試していただければと思います。
対話形式での壁打ちによる企画のブラッシュアップ
結果として今回はゲーム企画書制作には失敗しましたが、ChatGPTとの対話により日頃より思考が活性化された感触がありました。
IT領域における問題解決法の一つに「ラバーダック法」があります。これはラバーダックなどの無生物に対して自分の考えや学んだ内容を説明することで、理解の促進や問題解決を促す手法です。
無生物に説明を通じて自分が曖昧にしていた部分を見つけ、思考をより洗練することができるとされています。
ChatGPTとの対話においても、出力の正否や価値を検討し意見する過程で自身のイメージや考えをより深いレベルで検討し、言語化することが求められます。
そうした過程を通じて、ChatGPTの出力が誤りであったり棄却された場合でも、次に繋がる重要な知見や示唆が残ります。
また対話形式で企画の深掘りを行えるため、自分では意図しない方向性での企画の深掘りが出来る点も特徴的です。それを通して最終的に全く思いがけない形でアイデアが生じる可能性も考えられます。
今回の企画書においても、最終的なゲームシステムはほぼ自力で作りましたが、それまでの対話や当初に採用したコンセプトが無ければ生み出せませんでした。
一人で企画を考えることが苦手な人や、自分の企画について多面的な検討をしたい人は、壁打ち相手としてChatGPTを使用することは非常に有用であるといえるでしょう。
まとめ|生成AIを用いた最適なクリエイティブを模索しよう
今回の記事では、ChatGPTを用いた企画書作成のメリット・デメリットについて実践を通じて検討しました。
当然ながら、ChatGPTを使用することで誰でも簡単にゲーム企画書を作れるというわけではありません。
しかしアイデア出し段階やアイデアの深掘り段階を大きく効率化してくれた側面は否定できません。使用法さえ気を付ければ、ChatGPTは非常に有用なツールなのです。
ChatGPTは学習した情報を基にそれらしい回答を用意してくれます。ただ、その回答の正否や価値を判断するのは使用者に他なりません。
回答について思考し検討する過程で、生成された回答が自分の中で解釈され、洗練されることでオリジナリティが生まれ、現実に根差した考えへと変換されていきます。
そのような思考を活性化させる過程にこそ、ChatGPTの真価であると感じました。
直近でclaude3が発表されたように生成AIの進化は目覚ましく、今後よりクリエイティブに特化した生成AIが出てくる可能性は否定できません。
ツールの変化や、研究の進展により最適なプロンプトは常に変化していきます。
今回の事例におけるプロンプトの使用法が、そのまま生成AIを使用した企画書作成における最適解となるわけではありません。また前回の記事と今回の記事で作成された企画書の性質が大きく異なるように、ChatGPTの用法においても個人差が大きく反映される可能性が高いです。
したがって、ChatGPTを使用して企画書を作成する過程においては、使用ツールや自分自身の性格や創作スタイルに応じて試行錯誤をすることが非常に重要となります。
そのための足掛かりとして、前回の記事で取り上げられたプロンプトが非常に有用であるといえるでしょう。
企画段階で躓いている方、アイデア出し・深掘りが苦手な方はぜひ、ひとまず触れてみることをお勧めいたします。