ディーピン(DePIN)とは?|Web3時代の新しいインフラ構築を実例付きで紹介
ユーザーが情報を共有し合い、報酬を得ながらインフラ構築を行う「分散型物理インフラネットワーク(DePIN)」が注目されています。
この記事では、「ディーピン(DePIN)」の特徴やメリット、今後の可能性について詳しく解説します。
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- 1最近よく聞くディーピン(DePIN)とは?|Web3領域の新たなインフラ管理技術
- 2ディーピン(DePIN)とは?|概要
- 2.1そもそもWeb3とは?|ディーピン(DePIN)との関係
- 2.2ディーピン(DePIN)とは?|仕組みの詳細
- 3ディーピン(DePIN)で報酬が発生する仕組みとは?|実例を交えて解説
- 3.1ディーピン(DePIN)の実例①|「PicTrée~ぼくとわたしの電柱合戦~」(ピクトレ)とは?
- 3.2ディーピン(DePIN)の実例②|「Hivemapper」(ハイブマッパー)」とは?
- 4ディーピン(DePIN)とは?|メリットと課題
- 4.1ディーピン(DePIN)のメリットとは?
- 4.2ディーピン(DePIN)の課題とは?
- 5ディーピン(DePIN)とは?|まとめと今後の展望
最近よく聞くディーピン(DePIN)とは?|Web3領域の新たなインフラ管理技術
最近、Web3やブロックチェーン技術の発展と共に、「ディーピン(DePIN)」という言葉を耳にする機会が増えているかと思います。
「具体的にどんな仕組みなのか?」「従来の技術と何が違うのか?」「報酬で稼ぐことが本当に可能なのか?」と疑問を感じる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、「ディーピン(DePIN)」の仕組みや具体的なプロジェクト事例を分かりやすく解説します。「ディーピン(DePIN)」の全体像を把握し、インフラ管理技術の新たな領域を理解しましょう。
ディーピン(DePIN)とは?|概要
「ディーピン(DePIN)」は「分散型物理インフラネットワーク(Decentralized Physical Infrastructure Network)」の略称で、物理的なインフラをWeb3の分散型技術で管理・運営する革新的なネットワーク形態です。
従来、インフラデータの収集やサービスの提供は企業や国が一手に担っていました。
しかし、ブロックチェーンを基盤にした分散型ネットワーク技術が登場したことで、個人や中小規模の団体もインフラ提供に参加できるようになりました。
また、その貢献度に応じてユーザーが報酬を得られる「トークンインセンティブエコノミー(※)」も「ディーピン(DePIN)」は実現できます。
トークンインセンティブエコノミー
- ユーザーが提供するリソース(例:データ提供、ネットワーク参加など)に応じて、報酬がトークン形式で支払われる経済形態
- トークン保持者(ユーザー)は、ネットワークの運営に関する意思決定に参加することができる場合もあり、報酬を得ながらネットワーク全体の運営に携わることが可能
そもそもWeb3とは?|ディーピン(DePIN)との関係
Web3とは、データ管理にブロックチェーン技術を用いることで、プライバシーと公平な収益配分を保守できる、「非中央集権的な分散型インターネット」のことです。
ディーピン(DePIN)とは?|仕組みの詳細
ディーピン(DePIN)は、Web3を物理インフラに適用することで、データを提供する側(ユーザー)が公正な報酬を得られるように設計されています。
ユーザーが「利用者」にとどまらず、積極的な「共創者」として関わり、報酬を得ることは、Web3が持つ可能性を具体化したものであるといえます。
ブロックチェーン技術とディーピン(DePIN)の関係
ディーピン(DePIN)は、ブロックチェーン技術を基盤にしたものです。
ブロックチェーンにより、参加者の貢献状況やデータ提供が確実に分散型台帳に記録され、透明性が保たれるため、不正の防止も強固になります。
また、「スマートコントラクト(※)」を活用することにより、報酬の自動分配や条件に応じた支払いができます。これにより、ユーザーは成果に応じた公平な利益を得ることが可能です。
スマートコントラクト
- ブロックチェーン上で動作する自動化された契約
- 事前に設定した条件が満たされると、自動的に契約内容が実行される仕組み
- 信頼性の高い取引が可能
ディーピン(DePIN)で報酬が発生する仕組みとは?|実例を交えて解説
ディーピン(DePIN)の仕組みと報酬モデルへの理解を深めるため、実際の具体例(プロジェクト)を詳細に見ていきましょう。
ディーピン(DePIN)の実例①|「PicTrée~ぼくとわたしの電柱合戦~」(ピクトレ)とは?
「ピクトレ」は、ユーザーが地域の電力インフラデータを収集し、維持や保守に貢献することで、報酬としてトークンを獲得できる、ディーピン(DePIN)のわかりやすい実例です。
「ピクトレ」では主に、実在する電柱やマンホールといった電力設備を撮影します。
プレイヤーは「アンペア」「ボルト」「ワット」の3つのチームに分かれ、撮影した電柱同士を「電柱コネクト」と呼ばれる操作で電線をつなぎ、制圧ポイントを積み上げていきます。
プレイヤーが撮影した写真は地域インフラの保守や点検に利用されており、社会的貢献とゲームが一体化しています。
報酬の仕組み
「ピクトレ」の具体的な報酬獲得方法は次の通りです。
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撮影報酬
電柱やマンホールなどの電力アセットの撮影で報酬コインを獲得できます。特に、初回撮影は報酬額が大きいため、地域の未撮影エリアに向かう動機となります。 -
ランキング報酬
チーム戦で高順位を獲得したチームや、個人ランキング上位のプレイヤーには、順位に応じた追加報酬が与えられます。 -
金の宝箱
撮影やチェックインを通じて稀に「金の宝箱」が登場します。中には報酬コインやゲームを進める上で役立つアイテムが含まれています。 -
番札、住所表示宝くじ
撮影時に番札や住所が表示されたアセットを撮影することで「宝くじ」に参加し、抽選で報酬が当たる仕組みです。
ゲーム内で獲得した報酬コインは、一定量を貯めると「Amazonギフト券」や「DEAPcoin(DEP)」などに交換できます。DEPは暗号資産として取引が可能です。
また、報酬コインを地域団体への寄付として使用する選択肢もあり、インセンティブだけでなく社会的貢献意識の向上も促しています。
ディーピン(DePIN)の実例②|「Hivemapper」(ハイブマッパー)」とは?
「Hivemapper(ハイブマッパー)」は、ユーザーの参加によって地図データを収集し、最新かつ高精度の地図を作成する、分散型地図作成サービスです。
ドライバーが日常の運転で収集した映像データを用いて、リアルタイムかつ詳細な地図を作成・更新することを目的としています。
Googleマップのような中央集権的な地図作成手法とは異なり、ユーザー自身がデータを提供することによって、低コストかつ従来の5倍以上のスピードで地図化を達成しています。
「Hivemapper(ハイブマッパー)」のユーザー(ドライバー)は、車に専用のドライブレコーダーを設置し、走行することで街中の映像や路上情報をシステムにアップロードします。
これをもとに、収集された情報が最新の地図として構築され、物流や自動運転、不動産など、幅広い分野での活用が期待できます。
2024年10月現在では、世界の道路の28%が地図化されており、既に世界の地図メーカーや企業がHivemapperのデータを活用し始めています。
報酬の仕組み
Hivemapper(ハイブマッパー)は、ユーザーの貢献度に応じて仮想通貨「HONEY」を報酬として提供しています。報酬を得るための詳細は以下のとおりです。
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ドライブレコーダーを設置・連携
Hivemapperでのデータ収集を始めるには、まず専用のドライブレコーダーを購入し、「Hivemapper Companion」アプリと接続します。 -
走行データの収集・アップロード
ユーザーが日々の運転で収集したデータは、「Hivemapper Companion」アプリにより、リアルタイムでHivemapperのシステムに送信されます。このデータがAI処理され、地図化されることで、最新の地図更新が進行します。 -
報酬トークン「HONEY」の受け取り
毎週、収集データの量や貢献度に応じた報酬「HONEY」がユーザーのPhantomウォレットに自動的に配布されます。HONEYトークンは他の仮想通貨や日本円と交換可能なため、ユーザーは収益化も図ることができます。
この報酬システムにより、ドライバー(ユーザー)は運転を通じて収益を得つつ、地図精度の向上に貢献できます。
分散型地図サービスとして世界の人々が協力することで、運転中に得られる地図情報は常に最新かつ多地域にわたるものとなるため、従来にない規模での正確性を実現できます。
ディーピン(DePIN)とは?|メリットと課題
ディーピン(DePIN)の仕組みや実例を把握したうえで、改めて「ディーピン(DePIN)のメリットと課題」について見ていきましょう。
ディーピン(DePIN)のメリットとは?
コスト削減と運営効率の向上
ディーピン(DePIN)は、ユーザー自身がデータ収集やインフラ構築を行うため、管理費用や運営コストを大幅に削減できます。
また、最新情報が常に更新されるため、従来の企業主導型インフラ構築と比較して、効率的なサービス提供が可能なことはメリットです。
インセンティブにより、ユーザーと運営が互いにメリットのある関係になる
ディーピン(DePIN)のユーザーは、サービスの貢献に応じて報酬を受け取ることができるため、運営とユーザーの間に相互メリットの関係が形成されます。
このシステムによって、参加者の継続的な増加も期待できるため、結果としてインフラやデータの精度も向上しやすくなります。
多様な分野へ適用できる
ディーピン(DePIN)は、通信やエネルギー、地図サービス、物流など、さまざまな分野で応用が可能です。ブロックチェーン技術と物理インフラを組み合わせることで、幅広い分野でのイノベーションを促進します。
透明性と信頼性が高い|安定したプラットフォームを構築可能
ディーピン(DePIN)は、ブロックチェーン技術により、取引やデータの改ざんが困難であるため、透明性と信頼性が高いシステムです。
そのため、従来の中央管理型インフラの信頼性を超える、安定したプラットフォームの構築が行えます。
ディーピン(DePIN)の課題とは?
導入コストと技術的ハードルが高い
ディーピン(DePIN)を導入するには、特定のデバイスや技術的スキルが必要な場合があるため、一般ユーザーにとってはハードルが高いことがあります。
たとえば、Hivemapperでは専用のドライブレコーダーが必要であるため、導入にかかるコストや準備が参加者の増加を妨げる要因となることも考えられます。
規制や法律の問題
ディーピン(DePIN)は分散型ネットワークの性質上、規制や法律の整備が追いついていない場合が多く、地域や国によってはサービスの展開が難しいことがあります。
特に、エネルギーや通信インフラに関しては各国で厳しい規制が設けられているため、ディーピン(DePIN)の展開には慎重な対応が必要です。
トークンの価値変動リスク
ディーピン(DePIN)での報酬は多くの場合暗号通貨で支払われますが、暗号通貨の価値は変動が激しいため、参加者が安定した収入を得ることが難しくなるリスクがあります。
報酬の価値が低下すると、参加者の減少やデータ提供の不安定化につながるため、プロジェクトの継続性に影響が及ぶ可能性があります。
ディーピン(DePIN)とは?|まとめと今後の展望
ディーピン(DePIN)は、物理インフラ管理のネットワークを分散化することで、運用の効率化やユーザーへのインセンティブ提供を実現する、Web3技術を用いた画期的な取り組みです。信頼性を向上させ、管理コストを削減すると共に、インフラの持続可能性を確保できます。
一方で、導入には課題も存在します。
実装には高度な知識やコストが必要であり、既存の法制度との摩擦が発生する可能性もあるため、規制環境の変化に対応する柔軟性が求められるでしょう。
ディーピン(DePIN)のメリットとデメリットを踏まえた上で、ユーザーと管理者が共に上手く共創できれば、さらなる可能性が広がると考えられます。
物理インフラ分野における次世代の基盤として、ディーピン(DePIN)は様々な場面に影響を与え、将来的には公共インフラのあり方そのものを再定義する存在となり得るでしょう。
引用:https://beemaps.com/network/coverage?center=38.883541%2C137.285985%2C4.388123013085761