業種別 ・ゲームクリエイターになるためのポートフォリオ作成指南
「ゲーム会社にクリエイターとして就職したい」と考えているみなさん、『ポートフォリオ』は作っていますか?ゲーム会社に限らず、クリエイターとして就職するためには必須アイテムとなるポートフォリオ。本記事ではイラストレーター・UIデザイナー・ゲームプランナーの3業種を例に、ポートフォリオの作り方を解説します。
ポートフォリオを作成する理由とは
ポートフォリオって何?
ポートフォリオとは、自身の制作物をまとめて見られるようにした、いわば作品集にあたります。
ゲーム会社への就職活動においては、クリエイター系の業種に応募する際、高い頻度で企業から提出を求められるものです。
ゲーム会社就職にポートフォリオは必要?
イラストレーターやUIデザイナーなど、グラフィックやデザインの能力が求められる業種ではほぼ必須といえます。
募集書類欄に「ポートフォリオ」「作品をまとめた物」と記載があれば、必ず準備しましょう。
また、ゲームプランナーやプログラマーなど、グラフィックやデザインのスキルが直接求められない業種でも、これまでの制作物や参加プロジェクトについて質問を求められる場面があります。
そうした事態にもしっかり対応できるよう、過去の制作物をわかりやすくまとめておくことは大切です。
ゲーム会社がポートフォリオから測ること
ゲーム会社の面接官は、ポートフォリオから『志望者のクリエイティブ能力・スキル』を測ります。
志望者が直接制作した作品やその詳細事項を見ることで、「自社に必要な人材か」「自社での活躍が期待できる存在か」などを判断する重要な材料のひとつとなります。
そのため、志望者は志望する企業に合わせて、企業分析に基づいた適切な内容のポートフォリオを作成することが必要です。
ポートフォリオに必要な共通項目
本章では、ポートフォリオを作成するポイントを解説します。
まず、業種別の解説に移る前に、すべての業種に共通するポイントを説明します。
「目的」を明確に
ポートフォリオ作成の大前提は『目的』です。
- 誰に見せたいのか
- 何を見せたいのか
例えば、『女性向け恋愛ゲームを多く作っている企業』の『ソーシャルゲームのキャラクターデザイナー募集』という求人に応募する際、ファンタジー系のキャラクターや背景イラストばかりを載せたポートフォリオを提出しても、全く見向きもされないでしょう。
これは、その会社で働いても技術や知識を最大限活かせないと判断されてしまうからです。
応募する企業が「どのようなカテゴリの作品を制作しているのか」や「具体的な業種」をしっかり確認してからポートフォリオを作成しましょう。
どんな媒体で作る?
「ポートフォリオを作成する必要性や目的は理解したものの、どんな媒体で作ればいいのかわからない」と感じられる方もいるかもしれません。
ポートフォリオを掲載する媒体は大きく分けて
- 紙
- WEBサイト
の3種があります。
従来は紙媒体での提出がほとんどでしたが、最近ではPDFやWEBサイトのURLをメールやフォームで提出する方法も増えています。
おすすめは『PDF媒体による作成』です。PDFで作成しておけば、紙媒体の提出が求められた際にも印刷して対応することができます。
事前に提出書類の記載をしっかり確認し、適した媒体で作成するようにしましょう。
どんなソフト・アプリで作るのか
PC等のデジタルツールでポートフォリオを作成する際、どのようなソフト・アプリを使用すればいいのでしょうか。
以下に、ポートフォリオ作成で多く使用されているソフト・アプリをご紹介します。
Adobe illustrator(有料)
デザイン・グラフィック制作における王道ソフトです。
企業でも使用されていることが多く、このソフトを使えるスキルがあることをアピールする材料にもなります。
Adobe InDesign(有料)
illustratorよりもレイアウトデザインに特化しており、直感的な操作でデザインすることができるソフトです。
Canva(無料)
無料ながらも簡単な操作でレイアウトデザインを作成することができます。
Microsoft Office PowerPoint(有料)
MicrosoftのPowerPointでもポートフォリオを作成できます。
イラストやUIデザインなどのグラフィックよりも、ゲーム企画書など文字中心のポートフォリオに向いています。
PowerPointでゲーム企画書を作成する記事はこちら
ポートフォリオに載せる共通項目
目次
忘れがちな項目ですが、情報整理や視認性向上の観点から必ず組み込むようにしましょう。どのページにどの作品や情報が掲載されているかをすぐに確認することができます。
また、目次を作ったら、ポートフォリオ全ページにページ番号を振ることも忘れずに行いましょう。
自己紹介
◆名前・生年月日・顔写真
履歴書にも記載がありますが、ポートフォリオにも漏らさずに記載しておきましょう。
企業は様々な応募者のポートフォリオを確認します。自身の作品を確実に認知してもらうために必要な情報です。
◆過去経歴(請け負った仕事・作成歴など)
職務経歴書に記載してある内容の他、イラストやデザインを始めた時期なども載せておくと、スキルそのものの経歴が明確になります。
特に未経験者の場合、具体的な職歴(職務内容)の記載が難しい分、有効な判断材料になります。
学生の場合、アルバイトや学校行事で請け負った案件も記載できます。
◆スキルセット(資格や使用できるツール)
自分が現在使用できるツールや開発言語、語学スキル、資格等を記載します。
Photoshopやプログラム言語の他、「ライティング」や「企画管理」といった業務の上で使用するスキルに自信がある場合も記載してOKです。
スキルセットを記載する場合は、使いこなせることをを裏付ける具体的なエピソードを考えておきましょう。
文章での記述に加えて、レーダーチャートや星の数を用いた評価方法を使用すると、視覚的に情報が整理され、見る人に寄り添った完成度の高いポートフォリオになります。
◆自身の強みと具体的なエピソード
自分のアピールポイントや、それに伴うエピソードを簡潔にまとめて記載します。
ポートフォリオは作品が主役のため、ここでは長くても300字程度にまとめるようにしましょう。
◆将来のビジョン
「この会社に入ったらどのような仕事をしたいか」「どんな人物になりたいか」といった将来のビジョンを短く記載します。
作品紹介
ポートフォリオのメインといえる項目です。詳しくは次章以降で解説します。
連絡先
住所・電話番号・メールアドレスのほか、作品を掲載しているWebサイトやSNSのURLを載せるのもおすすめです。
ただし、SNSのリンクを載せる場合には、そのアカウント内で就職に不利になるような内容(他人や企業に対しての愚痴・文句・誹謗中傷、その他自分の不利益になるような投稿)が無いかを確認しましょう。
各業種別ポートフォリオの作り方指南
本章では、業種別にポートフォリオ作成する際に押さえておくべきポイントを解説します。
イラストレーター
採用担当者が見ているポイント
①幅広いジャンルの絵が描けるか
多くの企業はゲーム開発において、幅広いジャンルを取り扱っています。そのため必然的に、描ける作品の幅が大きいと、面接官の目に留まりやすくなります。
例えば、人物イラストなら若い男女の他に老人や子供の作例を入れます。ひとえに人物イラストといっても、タッチの違い(リアリティーのあるイラストか、ゆるいキャラクターのイラストかなど)も重要です。どのような要求をされても応えることができることをアピールすることが大切です。
また、SDキャラの作例もあると良いでしょう。さらに動物やドラゴンなどの「架空の生物」の作例は、描ける作品の幅広さをアピールできます。
背景イラストをメインとしたポートフォリオの場合、自然・都会の街並み・学校などよく使われがちな作例のほか、架空の世界の背景イラストなどもあるとアピールにつながります。
②一作品に何時間かけているか
就職して実際のプロジェクトに参加した場合、納期や作業の日数を厳守することは絶対です。
そのため、ひとつの作品にかける制作時間は面接においてもしっかり確認されるポイントです。全体の制作時間だけではなく、ラフ・線画・彩色など、工程ごとの時間も記載しておくとよいでしょう。
③作成のポイントは何か
「制作にあたって何を心がけたか」「どこに注目して欲しいか」など、アピールしたい部分を記載しておきましょう。
その際、「配色に気をつけました」「キャラの表情がうまく描けました」という単純な説明だけではなく、「夕暮れの風景の優しい雰囲気を伝えるために、暖色系のカラーリングでまとめました」「好きな人に告白するキャラの心情を表現しました」などの『具体的かつ明確な理由』をつけて説明すると、より具体性が高まります。
さらにクオリティアップするポイント
◆「プロジェクト」を意識して制作した作品を加える
自分で架空のプロジェクトを設定し、そのプロジェクトに沿った作品を制作して、ポートフォリオに掲載してみましょう。
プロジェクト名:恋愛シミュレーションゲーム制作プロジェクト
- ターゲット層:20~40代の女性
- 作品:主人公と攻略対象のキャラクターデザインを○体、デートスポットとなる背景を○点制作
このようなページがあると、実際の業務プロジェクトをよく理解し、想定して面接を受けに来ていることをアピールできます。面接官も「応募者はどのような業務で活躍できるか」をイメージしやすくなります。
UIデザイナー
採用担当者が見ているポイント
イラストレーターの項で説明したことに加え、以下のポイントを追加します。
①なぜこのデザインにしたのか?という理由
フォントやカラー、ボタン配置などの細かい部分まで「なぜこうしたのか」という理由をしっかり記載しましょう。「なんとなく」「好きな色だから」といった曖昧な理由ではなく、ひとつひとつの要素に対しての意味や理由をしっかりと説明できるようにすると、プロとしての意識の高さを評価されるきっかけになります。
②ポートフォリオ自体のデザイン
どんなに良い作例を載せていても、ポートフォリオのレイアウトが崩れていると「なぜ全体のデザインに気を使わないのか」という不信感が生まれる可能性があります。
デザイン専門の職種として、イラストレーター以上に全体のデザインに対する目線は厳しくなると想定し、ポートフォリオそのもののレイアウト・デザインにも気を配りましょう。
③制作物に使用したフォントやカラーコードの掲載
使用ソフトや制作時間のほか、UIデザイナー志望特有の項目として、制作物に使用したフォントやカラーコードも掲載しましょう。また、有料素材はもちろん、フリー素材を使用した場合は提供元のURLも記載しておきましょう。
さらにクオリティアップするポイント
イラストレーターと同様に「幅広いジャンルの制作物」「作成のポイント」「プロジェクトを意識した制作物」といったポイントを踏まえてポートフォリオを作成しましょう。
例えば、ソーシャルゲーム制作プロジェクトを想定する場合、「ゲームのロゴ」「各画面の配置」「各種ボタンの配置」「会話ウィンドウ」など、一作品のUIをすべて自作してみるのも手段のひとつです。
ゲームプランナー
採用担当者が見ているポイント
ゲームプランナーの採用の場合、ポートフォリオの重要性はイラストレーター・UIデザイナーよりも低い場合があります。
しかし、提出を求められた場合、本当のゲームプロジェクト企画書を作成するつもりで取り組みましょう。
GAMEMOでは、ゲーム企画書について考えるべきポイントをまとめた記事を多数公開しています。これらを参考にして企画を立て、本記事で解説した内容を加味してポートフォリオを作成することがおすすめです。
おすすめ参考サイト
ポートフォリオを作成するにあたり、参考になるサイトをご紹介します。
はたらくビビビット
ゲームをはじめ、さまざまな業界に志望するクリエイターのポートフォリオを集めたサイト。実際に採用されたポートフォリオを制作者のコメントつきで見ることができます。
Pixiv
イラスト・漫画によるコミュニケーションサイトですが、選考の際に使用したポートフォリオを投稿しているユーザーも多数存在します。
まとめ
ポートフォリオは、一目で自分のクリエイタースキルを可視化できる重要な資料です。
そのため、ポートフォリオを作成する際は面接官に自分のスキルを最大限アピールするための工夫が必要です。
自分の好きな作品をまとめるだけではなく、志望する職種と企業に合わせてカスタマイズしていくことが大切です。