【ゲームプロデューサーを目指す学生がクリエイターにインタビュー】 商品コンセプト=「買う前に買わせる力」、小山順一朗#6

前回のまとめ
新市場創造型商品開発を行うための理論、MIP理論は新しいニーズを作り出す。
その新たなニーズとは、顧客の気づいていないニーズである。
そんなニーズをどうやって探し出し、作り出すのだろうか。
プレゼントで相手を喜ばせるには?
小山様(以下、小山と表記)「この前も小学生とかの授業やっていて、クリスマスプレゼントで100パー喜んだか?って聞いたら、NintendoSwitchのゲームだと思ったら文房具でがっかりした。そんな子とかいました。」
小山「喜ばせるためにはどうしたらいいのかっていうと、サプライズプレゼントで確実に喜ばせるのには、相手の考えを知ればいいわけですね。」
─── それが出来たら苦労しませんよ、となってしまいます。相手にただ聞くだけでは、相手の考えを知ることができないからです。聞いた時点でサプライズなのか?というツッコミは無しです。
『何食べたい?』『なんでもいいよ』
こんなやり取りの末に選んだ料理に「ちょっと違うんだよなぁ」と言われる経験、またはその逆のパターンに覚えがある人が多いのではないだろうか。
小山「相手の考えを知って、欲しいものを知っていれば、絶対ヒットできます。」
小山「ということで基本的には、他人のために作るなら他人の気持ちを、欲求をゲットしなきゃいけないっていうこと、ただしこれを人に聞いてはいけないよってことですね。」
欲しいものを知るために、人に聞いてはいけない
小山「聞いても、その人の中にあるものしか出てこないからです。」
例えば、ロボット掃除機がない時代に「どんな掃除機が欲しいですか?」と聞くとする。多くは「軽くて静かな掃除機が欲しい」のような機能改善についての回答が多いだろう。「自動で動いて、自分は動かなくて良い掃除機」と返す人はそうそういないはずだ。
小山「なので、ヒット作を作る場合はまだ満たされてないっていう欲求(未充足の欲求)の中でも、実は本人も気づいてない欲求っていう方がいいですよ」
小山「なぜならば、気づいているけど満たされてない欲求というのは、現時点だと開発しようがないものが多いです」
─── どこでもドアや、いわゆるフルダイブ型のVRゲームだったりがそれに該当しそうですね。これはかなり納得しやすいと思います。
さらに、本人も気づいていない欲求(潜在ニーズ)は欲しい、珍しいという度合いが強くなければならないという。ちょっと面白い、変わってるな程度では変人ニーズ(#4の図における変人商品)になるからだ。
コンセプトとは「買う前に買わせる力」
小山「となると、未充足の強いニーズを叶えるコンセプトを作ろうということですが、そもそもコンセプトとは何かというところになります。商品コンセプトとか利益や恩恵をもたらす系のコンセプトに限って話しますが、辞書やChatGPTに聞いても複雑な言葉が出てくる。」
小山「梅澤先生が一言こう言ってました『買う前に買わせる力』ですね。どうです?」
少し抽象的だが、具体例を挙げると理解しやすいだろう。
ねるねるねるねという知育菓子を題材として質問された時の会話を例にする。
小山「ねるねるねるねを買ったことはありますか?買ったのはどうしてでしょうか」
福山「駄菓子コーナーを眺めて、面白そうなのがあるな~っていうのが一番だったと思います」
小山「でも、駄菓子コーナーにはおまけ付きもあるし、面白いキャッチコピーのもある。なぜこれが欲しいなと思ったんだい?」
福山「確か、当時は駄菓子コーナーに知育系のお菓子がそんなに数がなかった記憶があります。その中で、おまけが付いてくるとかではなく、自分で何かするというのがセットになってることが引っかかったんじゃないかなと。今更の後付けですけど(笑)」
小山「そうそう、いいですよ。そういう考えるのが大事です。」
小山「小学校とか幼稚園低学年とかだと『お母さん面白い。これ、面白い変化する』とかそう思ってきたわけですよね。大人にこういうのを聞くと、『美味しいからじゃないの?』って。いやいや買って食べる前の話なんですけど、みたいな。」
小山「食べる前に買わせなきゃいけないってことなんですよ」
まとめ
#3で小山さんが上司から言われた「お客さんに聞いちゃ駄目だぞ」は潜在ニーズについても言っていたんじゃないかなと思っています。聞いてみても的外れな回答が来たり、聞いた通りにやってもウケなかったといった経験から来ている言葉のように感じます。
「買う前に買わせる」は意外と頭から抜けがちな気がしています。遊んだら面白いといったことを考えがちですが、これは至極当たり前なことなんですよね。
「遊ぶ前から面白そうと思ってもらえて、実際に遊んだら面白い」じゃないと売れないし、自分で買う時もそんなタイトルを買ってきたと思います。
#7では実際に「買う前に買わせる力」を持ったコンセプトの例を見ていきましょう。
次回もよろしくお願いします!