【ゲームプロデューサーを目指す学生がクリエイターにインタビュー】 どんな商品コンセプトが「買う前に買わせる力」を持ってる?小山順一朗#7

前回のまとめ
本人も気づいていない強い欲求(潜在ニーズ)を叶えるコンセプトを作れば良い。
コンセプトとは買う前に買わせる力と言いかえることもできる。
では、そんなコンセプトの例はどんなものがあるのだろうか。
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コンセプトの具体例
『UVカットする成分を配合した肌用クリーム。皮膚に塗るだけで日焼け防止できます。』
小山様(以下、小山と表記)「日焼け止めクリームのことなんですけど、これがコンセプトです。」
小山「これに写真を添えて、この商品がない時代にちょっと買いたいなと思わせたらそれをコンセプトって言います。簡単でしょ?」
─── 聞いているだけであれば凄く簡単そうに聞こえてしまいます。聞いているだけであれば。
小山「梅澤先生そう言われても、ゲームってそんな簡単なもんじゃねんだよ。ロールプレイングゲームとかオープンワールドとかって思いながら聞くわけですけど、次。」
『カップ容器に入ったフリーズドライの具材と麺です。お湯を注ぐだけで食事を賄える。』
小山「これはカップヌードルですね。美味しい。便利。次なんですけどこれですね。」
『カナル型の完全ワイヤレスイヤホンです。コードの煩わしさを気にせず音楽に没頭できます。』
コンセプト文にある共通の型
小山「共通の型があることに気がつきました?実は2種類の違う構文だったんです。」
「カナル型の完全ワイヤレスイヤホンです。」という技術・アイデアを書いた文と、「コードの煩わしさを気にせず音楽に没頭できます。」という気持ちを書いた文の2文で構成されている。ちなみに、この文章が指す商品はAirPodsだ。
小山「これって、どのようにやるかっていうことと、どのように良いですよっていうことを分けて伝えてるんです。これを、アイデアとベネフィットを呼んでおります。」
小山さん曰く、ベネフィットとは気持ちのことである。
メーカーは「音楽に没頭できますよ」と言っているが、買う人の目線で言い換えれば「音楽に没頭したい」になる。つまりAirPodsの例では、コードの煩わしさを気にせずに音楽に没頭したい、という気持ちであると言える。
小山「これはわがままな欲求という、わがままニーズと呼んでおります。わがままニーズの開発を目指すのがMIP理論なんです。」
わがままニーズ
小山「わがままニーズっていうのはどういうことかっていうと、まだ日傘しかなかった時代に、身軽に手軽に日焼け防止したい。わがままだと思いませんか?」
今あるものでできないからわがまま。
熱を加えた食べ物を食べようとしたときには必ず台所に行かなければならなかった。でも調理をすることなくあたたかい食事にありつきたい。
ケーブル無しで手軽に、身軽に音楽を聴きたい。
このような「わがまま」を叶えることで爆発的なヒットを達成している。
小山「このAirPodsだけで23年の売り上げが2兆8500億だってすごいよね。」
小山「任天堂の全ての営み、全てのタイトル、NintendoSwitchの全部の売り上げ、子会社のポケモンのカードの売上、遊園地、映画全部の売り上げよりもAirPodsという1商品が上なんです。」
小山「MIPってすごくないですか。ニーズを叶えるってすごくないですか?」
まとめ
わがままニーズではなく、既に顕在化しているニーズを対象に扱った場合は#4で言うところの凡人商品になってしまうのでしょう。
わがままを叶えることで商機を得るということでしたが、これまで「そんなわがまま言ったって無理やん」と思いこんでしまい、深く考えることすらしなかったなと気付きました。だからこそありふれたアイデアばかりを考えてしまっていたのでしょう。
そんな「思い込み」は無意識に発生してしまいます。わがままを叶える方法を考えるにあたってそんな思い込みから抜け出すにはどうすればいいのでしょうか。
#8ではそんな思い込みについてのお話です。