【ゲームプロデューサーを目指す学生がクリエイターにインタビュー】最良のコミュニケーションとは 河野一聡#3

【ゲームプロデューサーを目指す学生がクリエイターにインタビュー】最良のコミュニケーションとは 河野一聡#3

【ゲームプロデューサーを目指す学生がクリエイターにインタビュー】最良のコミュニケーションとは 河野一聡#3

コンテンツ [表示]

  1. 1開発現場のコミュニケーション
  2. 2コミュニケーションの方向性
  3. 3コミュニケーション能力は必須ではない?
  4. 4最良のコミュニケーション
  5. 5今回のお話をうけて

↓初回記事はこちら

【ゲームプロデューサーを目指す学生がクリエイターにインタビュー第二弾】 世界中の人に感動を与えたい エースコンバットシリーズブランドディレクター、河野一聡#1のイメージ
【ゲームプロデューサーを目指す学生がクリエイターにインタビュー第二弾】 世界中の人に感動を与えたい エースコンバットシリーズブランドディレクター、河野一聡#1

開発現場のコミュニケーション

福山「プロデューサーやディレクターはプロジェクトや開発チームをまとめる立場です。他のスタッフとのコミュニケーションはどんな内容のものが多いですか?」

河野様(以下、河野と表記)「プロデューサーとしてはビジネス、ディレクターのときは、製品の品質周りの話ばっかりです。いまの僕の役割は、その製品のブランドの品質を担保して、きちんと新作として、お客様に感動してもらって支持してもらうタイトルにしなきゃいけないんです。」

河野「そのためのコミュニケーションになります。仲良くなるとか信頼されるとか、いろいろなコミュニケーションがあるんですけど、第一には意思決定、意思判断をしてあげなきゃいけない立場なので。」

スタッフのアウトプットに対して判断を下し、プロジェクトとしての意思決定を行うとなれば、コミュニケーションも自然と制作物に向けたものが増える。

河野「いろんな職種の人たちがプロジェクトには関わっていて、その人たちがアウトプットしたものが集まってゲームになっていく。」

河野「先ほどお話した通り、その製品がお客様の感動だったりとか買っていただく価値があるかというところで、『これだとまだ駄目でしょ』とか『これは要らなくない?』とか『もっとこうして』っていう製品、商品をベースにしたコミュニケーションが当然一番多いですね。」

コミュニケーションの方向性

─── 一口にコミュニケーション能力と言っても、その方向性は一様ではないと感じています。人と仲良くする、考えを正確に言語化するなど様々ですが、ディレクターに関してはチームを引っ張るという方向性の能力が求められる機会が多いでしょう。

過去に河野さんが参加していたセッションでは、空気読みな人にはディレクターは難しく、引っ張っていく気概が必要だという話だった。

これを踏まえると、コミュニケーション能力の中にも相反する方向性があるように感じられる。

福山「組織を引っ張る、コミュニケーションを密にとる。この二つには、少し相反するようなところがあるようにも思えるんです。これらの違いとして考えていることはありますか。すいません、ちょっと抽象的で......」

河野「わかります。両方を矛盾なくこなせる人は凄いと思いますよ。僕はチームビルドとして、みんなの力が発揮できるようなコミュニケーションを記事にしたり偉そうに言うほど立派なことはやってないなとか思うんです。」 

河野「最初に志と成すべきことと共感の話をしたのは、チームビルドでは良いコミュニケーションがその過程の中でどれだけ生まれてくるかを僕は重要視していて、たぶん自分なりの経験からのその矛盾への解答なんです。」

河野「これは話がややこしくてですね、プロデューサーとして考えるなら、確かに頻繁に密にご機嫌伺いできるようなコミュニケーションが良い気がします。でも一方で意思決定をしていくなかでは、空気を読んで、ご機嫌を伺うばかりではダメなときがありますよね。良いコミュニケーションの中にある量と質の違いの話なのかもしれませんね。」

コミュニケーション能力は必須ではない?

河野「クリエイター集団で新しい人がごちゃっと集められて、さあコミュニケーションとってくださいと言われても、クリエイターって多種多様な人たちの集まりですよね。」

河野「なんだったらコミュニケーション苦手な人もいたり、コミュニケーションが難しくても技術やセンスが超一級品、世界レベルみたいな人もいるじゃないですか。目指す開発においては、コミュニケーションが上手くいったらありがたいけど、必ずしも高いコミュニケーション能力が最優先というわけではないかなと思っています。」

河野「例えば、開発の中にもいろんな職種があってプロダクトマネージャーだったりディレクターとか、人をまとめる上に立つ人は高いコミュニケーション能力が必須になっていきますけど、必ずしも全クリエイターにコミュニケーションに100%コミットしろというのはそうでもない。センスと技術が凄ければ活躍の場所、志を成し遂げる機会はあります。」

─── コミュニケーション上手くいったらそれはありがたい、つまり複数の志望者の中で同程度の技術とセンスを持っていた場合、コミュニケーション取れる人の方を優先するということにもなりそうだなと感じました。文系なら数学、理系なら英語や国語でも点数が取れると良い、みたいな。 

最良のコミュニケーション

河野「僕の中で最良のコミュニケーションは、先ほどの通り志を成し遂げていく中での問題解決と、成功体験にまつわる中で行われるコミュニケーションだと考えています。」

河野「この製品を作ってワールドワイドでお客さんに感動と驚きを与えたいっていう志に共感して集まった人たちが、『これ問題ですよね』『このシナリオだとベネフィットに沿ってないよね』とか志を成し遂げるまでに多くの問題課題にぶつかるんですよ。」

河野「その中で『こうしましょう』『それは僕が引き取ります』とか開発途中に目標を見据えて志を実現するためのコミュニケーションが生まれてくるっていうのがやっぱり一番大事です。」

河野「例えば『僕に任せてください』って言われて任せてみる。任せてみたらちゃんと成果が出てきた。すごいね、上手くいったね、ありがとうみたいな、問題に対して全員で乗り越えていく。それが繰り返されて、その先で、元々掲げた志が最終的に成し遂げられていく。」

河野「このプロセスにおいて起こるコミュニケーションの方が良質だし、信頼が一気に深まる。もちろん、今日どう?とか調子悪いの?とかって最低限はありますけど、チームビルディングしていくコミュニケーションはそこじゃないなと思っています。加えて、良質なコミュニケーションは互いのリスペクトの上にあると考えています。」

今回のお話をうけて

最近、某ハンティングゲームにてセンスと技術は素晴らしいけど、コミュニケーションは苦手みたいなキャラクターが登場して、SNSなどで話題になっていました。今回のお話を聞いた後にそのキャラクターと出会ったので、確かにこういう人も組織の中で明確な活躍場所が存在するなと実感しました。

コミュニケーション能力は汎用的な能力なので、どの業界でも持ち上げられている気がします。ただ、コミュニケーション能力があれば良い作品が作れるわけではなく、結局は実制作の能力がクオリティに直結すると思います。

優れたコミュニケーション能力の恩恵は、不要な工数を減らすことができたり、建設的な議論によって出来の良さをブーストできることだと感じます。大切ですが、先立つものではなさそうだなと思いました。 

↓NEXT

【ゲームプロデューサーを目指す学生がクリエイターにインタビュー】やりたいことは言語化する、どうするかは専門家を頼る 河野一聡#4のイメージ
【ゲームプロデューサーを目指す学生がクリエイターにインタビュー】やりたいことは言語化する、どうするかは専門家を頼る 河野一聡#4

↓PREV

【ゲームプロデューサーを目指す学生がクリエイターにインタビュー】 チームビルディングで最初にやることは自分のこと? 河野一聡#2のイメージ
【ゲームプロデューサーを目指す学生がクリエイターにインタビュー】 チームビルディングで最初にやることは自分のこと? 河野一聡#2
福山
ライター

福山

インターンとして執筆を行っている情報系の大学院生です。ゲーム業界への就職を目指す当事者として、業界に興味を持つ皆様のお役に立つ記事をお届けしていきたいと思います。 大学院ではカラーユニバーサルデザインやデザイン工程でのコミュニケーションについて研究しています。

おすすめの記事

Recommended Articles
  • ゲーム企画の伝え方 〜より良い企画を作成するために抑えるべきポイント〜

    2024.02.13

  • 【完全版】ChatGPTを使いこなすための汎用プロンプト16選

    2024.03.22

  • ChatGPTを使ったゲーム企画書の書き方|すぐに使えるプロンプトと実例

    2024.03.22