【ゲームプロデューサーを目指す学生がクリエイターにインタビュー】ディレクションにセンス以外の基準はある? 河野一聡#5

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ロジックで判断できるもの
前回の記事では、製品の品質に関するコミュニケーションについて、河野さんの考え方を紹介した。では、その製品の品質や方向性などのディレクションの判断についてはどうだろうか。
福山「アウトプットに対して判断を下すとなった時に、明確な数値基準があるような物でも無いので、何によって判断しているんでしょうか。」
河野様(以下、河野と表記)「前回、小山さんの話を聞いていると思うんですけど、商品のコンセプトで定めていることに繋がっているかとか、それをお客さんが価値があると感じるものになるかという顧客感動。僕は感動させたいので顧客感動って言いますけど、そのレベルに達しているかどうかはひとつ基準になっています。」
河野「商品コンセプトに関してはロジックで語れるんですよ。なので、今僕たちが目指している商品コンセプトはこれだからそういうアイデアはいらないですとか。良くできているけど、直接お客さんのベネフィットには繋がってないので無駄ですとか、その辺はロジックで判断できちゃうところですよね。」
─── この判断がロジカルになるには、「コンセプトの質が十分である」「全体でコンセプトが共有できている」の2点は少なくとも満たしている必要があると感じました。前者は小山さんのインタビューを参考にできるでしょう。そして、後者は河野さんがこれまでに語ってきたチームビルディング、コミュニケーションが参考になるのではないでしょうか。
感性に頼るものもある
河野「ただ、どこまでの品質を目指せば合格基準かは、正直言うと個人の裁量というか、僕だったら僕の基準とかってなっちゃうところがあるのはやっぱり否定できないですね。」
河野「物作りの現場なので、デザイン、ビジュアルや音楽は感性だったりとかセンスで判断する感性的なディレクションになりやすいですし、言語化が難しい部分です。無理にロジカルに喋ってみてもなんだか胡散臭い感じがしてきます。こういうロジックと、こういうルールを決めれば、一定の基準指標がありますという世界とは違うんだよなと感じています。」
河野「補足するならば、チームビルドのところにも関わるんですけど、僕らのチームの場合、長年一緒に問題課題を解決して成功体験を共にしてきたメンバーが各職種に何人かいるんですよ。」
河野「これは幸せな状態で、言葉にならない品質基準の話をした時に、彼らが同基準でものを見ていて、基準が暗黙知として形成されているんですよ。」
河野「なので彼らに言うと『河野さんはこういうの好きだけど、こういうの嫌い』『河野さんはこういうところ苦手』とかって彼らも分かっているし、僕も彼らが出してくるもので、『こういう癖があるんでダメだよなとか、こういうとこ本当に強いよな、いいよな』とかってお互いのことをもう理解しちゃってるんですよ。」
河野「そうすると意思決定・判断もディレクターの孤独な自分だけに問いかけて、自分だけで出す判断ではないです。」
─── 暗黙知になっていると言うと少しマイナスにも受け取れますが、ここで重要なことは感性による判断が個人に依存するものではなくなっている点でしょう。セクションごとに異なる基準で判断されることが減少し、開発チーム全体で見るとメリットの方が大きいはずです。
今回のお話をうけて
ディレクションが完全に感性やセンスに依存するものだったらどうしようという不安がありましたが、ロジカルにできる部分もありそうで少し安心しました。
ただ、判断をロジカルなものにするには「○○だから××」の○○が適切でないといけません。その前提をどう整えるかについては、機会があれば別の方へのインタビューなどでも深掘りたいなと思います。
ロジカルで判断できるものもある一方で、センスや感性を求められることは多々あります。それらに対応するためにも、ゲーム以外も含めて様々なインプットとそれに対する感覚の言語化によって、センスを磨いていかなければなと思いました。
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