【ゲームプロデューサーを目指す学生がクリエイターにインタビュー】感情を動かすような人材育成 河野一聡#6

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河野さんが考える人材育成
福山「志やビジョンの共有を主体としたチームビルディングや判断基準となると、属人的になりやすいものにも感じます。そうならないために人材育成でやりたいこと、既に取り組んでいることはありますか?」
河野様(以下、河野と表記)「おっしゃる通り人材育成は本当に大事なことだし、若い世代を育てていきたいと思っています。でも結局、今言った僕らのチームでやっている世界に打って出るぞっていう熱狂に巻き込んでいくしかないと思うんですよね。その機会を作っていけるかどうかが考えていることです。」
福山「自分たちがやっていることを見せるということですか?」
河野「見せるというか、もうどんどんやろうっていう熱狂の渦に巻き込んでいくしかないと思うんですよ。エイセスで新しく入ってきたビジュアルの人たちとかも、ビジュアルのクオリティ会議とかで、僕と長く一緒にやってきた人たちとの会話の中に巻き込んでいって、夢中にしていく、そうやって視座を上げていくというか、それが一番早いと思うんですよね。」
河野「『このチームではこのレベルのやりとりがされるんだ』とか、『こういうところに気を使ってるんだ』とか、『こういう理由で意思判断や決定がされてるんだ』っていうことを中で覚えていってもらうしかないと思っていて。」
河野「もちろん人材育成という意味で一対一でお話して、どういうキャリア考えてますか、お悩みないですかとか、あなたの強みはこういう所だからここを伸ばした方が良いですよといったマネジメント的なことは当然やります。」
河野「それはやりますが、実際人が育つときって、難しい問題を解決して乗り越えていくプロセスを一緒に乗り切っていくところかなと思ってしまいますね。熱狂している状態って周囲から見ると気持ち悪いんですけれど、そのときこそが人が一番成長している瞬間を感じることが多いです。」
人材育成できている状態とは
河野「繰り返しになりますけど、例えば、会社のパーパスに共感して会社に入ってくるとか、そのプロジェクトのビジョンやセンスに共感して入ってくる、もしくはそれが好きだとかでいいんですけど、そうした出発点から入ってきた人たちを育てていくためには、熱狂の渦に巻き込んでいくのが一番手っ取り早いと思うんです。」
河野「エイセスという会社かつエースコンバットを作るプロジェクトのビジョン、河野が、自分自身が考えているビジョンとか志とか成し遂げたいこと。それに加えて、古くから一緒にいる仲間たちが共感してくれて、全員でお客様のために実現したいことが中心核にあって、それを中心に周りの人たちがまたビジョンに共感して、何としてもそれを成し遂げようというふうに、どんどん巻き込んで大きくなっていく、もう騒乱ですよね。ゲーム開発はどうしても最後は残念ながらいつも狂気じみた状態になるので。」
河野「その騒乱の中に巻き込まれていくぞ、俺はここで一旗揚げるぞでもいいし、とにかくその熱狂の渦に飛び込んでいくぞ、巻き込まれているうちに夢中になっていたぞという人たちが多くいるのが、結果的に僕らが人材育成しているという状態。そこから一歩距離を置いちゃう人がいるのであれば、本当の意味では僕らから人材育成できていないなと。」
河野「何度も繰り返しているビジョン、目標に対して問題解決して、何としてもお客様のために成し遂げるぞという一連の、4,5年の狂乱の状態、熱狂している状態があるわけです。」
河野「そこに入ってきてくれるのであれば、自分はこの中でとにかく力になりたい貢献したいとか、ビジュアルの能力を伸ばしたい、プランニング能力を伸ばしたいと言って入口は違っても、熱狂に入ってくれる人たちに関しては、一緒に難題、問題解決して一緒の目標に向かうので、最高の人材育成ができていると思うんです。」
河野「メソッドだけに頼らない、感情を動かすような人材教育。この人たちと一緒に仕事したい成功したいみたいな。感情で動く教育ができていると思うんです。それに乗り切れない人は、ドライに言うと僕たちのチームで教育されて伸びる人材じゃないのかも知れない。ただそれは別に悪いと言っている訳じゃないです。」
福山「合う合わないの問題ということですよね。」
河野「別のプロジェクトで育つかもしれない。人材育成と言われたときに、僕もこれだけキャリアが長いといろんなメソッドの勉強も人材育成の研修もして、いろんな方法を知ってるんですよ。」
河野「当然ながら一通り通ってきたわけですけど、その上であえてお話するならば、顧客感動を作っていくという高みを目指す熱狂の状態に巻き込んでいくことが最良の人材育成かなと思っています。」
今回のお話をうけて
人材育成としては少し意外な内容で、育成の方法というより環境のお話に近かったかなと感じています。ただ、勉強会や研修が充実していますよ~という制度面の話ではなく、チームとしての空気感や文化という方向性での環境でした。
この環境については馬鹿にできないと思っていて、程度の差はあれど周囲の人にやる気があれば、自分も影響されてやる気が出ることもあります。さらに、それが瞬間的な物ではなく、継続的にそんな影響を与え合える環境は最高だろうなと思います。
育成手法は人によって向き不向きはありますが、環境は比較的広い層に良い影響を与えられると思うので、個人的には納得できるお話だったなと感じました。
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