【ゲームプロデューサーを目指す学生がクリエイターにインタビュー】全てを満足させることはできない、間違いを認識して作る ヨコオタロウ#3

【ゲームプロデューサーを目指す学生がクリエイターにインタビュー】全てを満足させることはできない、間違いを認識して作る ヨコオタロウ#3

【ゲームプロデューサーを目指す学生がクリエイターにインタビュー】全てを満足させることはできない、間違いを認識して作る ヨコオタロウ#3

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  1. 1ショットガン戦法
  2. 2ユーザーって想像するの?
  3. 3今回のお話をうけて

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【ゲームプロデューサーを目指す学生がクリエイターにインタビュー 第3弾!】今から僕が話す話を基本的には信じないでほしい ヨコオタロウ#1のイメージ
【ゲームプロデューサーを目指す学生がクリエイターにインタビュー 第3弾!】今から僕が話す話を基本的には信じないでほしい ヨコオタロウ#1

ショットガン戦法

前回の記事にいろんな感性の人が存在していて、ある人にとっては正解、別の人にとっては不正解ということがあるという話があった。
これに対するヨコオさんの回答の一つにショットガン戦法がある。多くの要素を取り入れることで、誰かには刺さるだろうという内容だ。

「自分で自分にダメ出しすることがゲーム制作の背骨」ヨコオタロウが“GFF AWARD 2023”でシナリオ制作の秘訣を語った
シナリオにおけるショットガン戦法について紹介されています

福山「要素を全部入れたときに、刺さる部分も当然あると思いますが、逆に受け付けない部分もヒットしてしまうんじゃないかなと思うんですけど......」

ヨコオ様(以下、ヨコオと表記)「そういうことはあり得ますね。犬好きな人のために犬を出したら犬嫌いの人は刺さらない。簡単に言うとそういう話ですよね。」

福山「はい。そういうケースは最初から受け入れているという感じなんでしょうか。」

ヨコオ「全部が全部、全員に向かって全てを満足させることっていうのも当然できないので、ある程度妥協しないといけない。だからもうある程度間違ってることを認識しながら作らないといけないと思います。」

ヨコオ「だから、犬を出しても『犬好きには刺さらないかもしれない』っていうことを認知することが大事だと思うんです。その認知をしないまま『みんな犬が好きでしょ』って決めつけて表現するのは何かを失っている気がするなっていうふうにすごく思いますね。犬好きじゃない人がいるっていうことを常に頭の片隅に置いておくことは大事な気がします。」

福山「制約に近いのかなと感じますが」

ヨコオ「ずっとそういう考え方をしてきたので、制約というよりは、常にそのように反応が起きてるっていう感じですね。」

福山「そもそもそれが前提なので、受け付けない部分に刺さってしまうことはそんなに恐れるというか怖がるようなことではないという感じでしょうか。」

ヨコオ常にそれは恐れないといけないと思っていて。犬を嫌いなお客様のためにどうしたら犬を嫌いな方でも喜んでいただけるかは考えないといけない。例えば猫を出すとか、他の動物がいない、動物がいないことを肯定するようなキャラクターが出てくるであるとか。何かしらの感性が合わない人たちを肯定するようなプレゼンテーションは製品に含まれている方がベターだなと思うんですけどね。」

ユーザーって想像するの?

福山「似たような話ですが、作っている中でのユーザー像は『こういう感性を持ったユーザーがいるだろう』とか結局は想像になるわけで、どういうふうに想像したり精度を高めたりしているんですか。もしくはしてないとか。」

ヨコオ「ユーザーさんは想像しないです。あんまり想像しない。」

福山「そもそも想像しないんですか。」

ヨコオ「うどん屋とかラーメン屋をやっていて、うどん好きとかラーメン好きのお客様を想像しながらその店をやるか?っていう話が近い気がするんですが。うどん屋さんとかラーメン屋さんは、特定のお客様だけじゃなく『いろんなお客様に来ていただきたい』って思ってる気がするんですよね。それと同じで、僕も、特定のお客様を想像して、その人に向けて作ったりはしないです。」

ヨコオ「一方で、どういう人が好きでいてくれるとか、作ったものを嫌いな人がいるだろうなは常に考えるんですけど。」

─── 私が想像していたこととは恐らく順序が逆なのかもしれません。想像上のユーザーを作り上げて、その人にあったもの、その人が嫌いそうなものを考えるといった、ユーザーが先にあるのではない。作品、製品が先にあって、それを好むユーザー、嫌うユーザーについて考える。だからこの質問の答えとしてユーザー像を想像しないということになるのでしょう。

今回のお話をうけて

全てを満足させることはできない、ということはゲームに限らずエンタメコンテンツに対するSNSなどの反応を見ていれば感じることではあります。

それに、刺さる人にだけ刺されば良いという考え方が悪いということではないと思いますが、そのコンテンツの全てが刺さる人はごく一握りだと思います。例えば、ヨコオタロウが作る物語はとても好きだけどアクションゲームは得意じゃないという人の存在は簡単に想像できます。

こうした人に対しても遊んでもらえる、楽しんでもらえるという間口を広げる行為としても「感性が合わない人たちを肯定するようなプレゼンテーション」は大切なのだなと感じました。

余談ですが、アクションRPGであるニーアオートマタでは、アクション部分をオートでしてもらえる機能があり、今回のお話の実例と言える気がします。

『ニーア オートマタ』のアクションはなぜ手触りがいいのか。“新世代を担うアクションの旗手”田浦貴久に迫る【聞き手:ヨコオタロウ】
オートモードについても紹介されています。

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福山
ライター

福山

インターンとして執筆を行っている情報系の大学院生です。ゲーム業界への就職を目指す当事者として、業界に興味を持つ皆様のお役に立つ記事をお届けしていきたいと思います。 大学院ではカラーユニバーサルデザインやデザイン工程でのコミュニケーションについて研究しています。

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