参加型社会貢献(インフラ保守)ゲーム「PicTrée(ピクトレ)」DePIN最新事例はどこへ向かうのか
参加型社会貢献(インフラ保守)ゲーム「PicTrée」(以下、ピクトレ)を推進する、Greenway Grid Global(以下、GGG)社の鬼頭様と、Digital Entertainment Asset(以下、DEA)社の栗原様に、『Play to Earn』を用いたインフラ課題解決の新たな可能性や、実証実験結果の詳細、今後の展開についてを詳しく伺いました。
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Greenway Grid Global (GGG)
GGGは、東京電力パワーグリッド株式会社(以下、「東京電力PG」)と中部電力株式会社、ICMG Partners Pte Ltdの3社でシンガポールに設立した合弁会社です。次世代インフラやニューテクノロジーへの投資事業、新事業の開発事業、変革リーダー育成事業、この3つの事業を三位一体で行うことで、世界に幸せをもたらす企業を目指しています。
https://www.greenwaygrid.global/
今回、インタビューにお答えいただいた鬼頭 和希様は、東京電力パワーグリッド株式会社よりGGG社に出向されています。
「電柱」という社会インフラが抱える課題
ーー本日はよろしくお願いいたします。
ーー本プロジェクト(ピクトレ)は、『ゲーミフィケーションを用いた課題解決』を目的とされているかと思いますが、具体的にはどのような課題解決を目指しているのでしょうか。
GGG社 鬼頭様(以下、鬼頭と表記)「私たちは、電柱をはじめとした、生活を支える物理インフラが持つ様々な課題を解決したいと思っております。
特にピクトレでは、DEA社さんが持つ『Play to Earn』技術をより発展的に活用して、インフラ課題の解決を目指しています。
具体的には、『電柱などのインフラ設備の写真を現地で撮影してもらう』ことにより、ユーザーの方に楽しんでもらいながら、インフラ保守の効率化を目指しています。」
ーー電柱の保守点検には、現状どれくらいのコストがかかっているのでしょうか?
鬼頭「現在東京電力は約600万本の電柱を管理しており、その中でも、直営で作業を行うものと、委託に出して点検をするものがあります。委託費用だけでも、年間で約20億円のコストがかかっています。」
ーーありがとうございます。『ピクトレ』は、コスト面の解決にアプローチしつつも、生活インフラの安全保障につながるため、ユーザー・GGG社様の双方にメリットがあるゲームなのですね。
『Play to Earn』の仕組みに感じた可能性
ーー先ほど、”『Play to Earn』技術の可能性”とご発言されていましたが、具体的にはどのようなことでしょうか?
鬼頭「『Play to Earn』は、社会貢献性が高い技術であると私は考えています。
どのような社会貢献性が提供できるかについては、後ほどお話いたしますが、前提として、世間ではまだ『Play to Earn』への信頼度が低い状況だと考えています。そのイメージを払拭するために、『Play to Earn』の『社会への活用可能性』を証明する必要があります。
私たちがDEA社CEOの山田さんと初めてお話をさせていただいた時から、山田さんも『Play to Earnで社会課題の解決にアプローチしたい』、という構想を持っていらっしゃいました。」
鬼頭「そこで私たちが共同で『ピクトレ』を制作し、挑戦することで、NFTやブロックチェーンの『社会での必要性』を証明できると考えました。
『ピクトレ』では、Web3の手触り感のあるユースケースを、初めて作ることができると感じています。」
ーー『手触り感のあるユースケース』とは、具体的にはどのようなことでしょうか?
鬼頭「『ピクトレ』の主要素である、ユーザーが自分で写真を撮った対価として、報酬を渡せるシステムには、手触り感(自分で何かアクションを起こすことで、何かに貢献できる感覚、この場合は物理インフラの保守点検)があるということです。
『ピクトレ』では、実際に現地で写真撮影をした報酬として、暗号資産やAmazonギフト券を受け取ることができます。これは、今までのWeb3を用いたプロジェクトではあまり見られなかった形態です。」
ーーつまり、これまでのタップやクリックでプレイし、報酬を獲得できるゲームとは異なり、『実際に体を動かして行動した対価』として報酬を発生させる形態には、新鮮かつ手触り感がある、ということですね。
実証実験で得た確かな手ごたえ
実証実験の開催地
引用:https://pictree.greenwaygrid.global/news/1118/
ーー実証実験では500人の方が参加されたということですが、手応えを感じた瞬間やエピソードがあれば、お聞かせください。
鬼頭「はい。そもそも、ゲームのシステムを構築する段階から、手応えを感じざるを得ないようにしていたというのがご回答になります。
『ピクトレ』は、保守メンテナンスエンジニアを含めた10人程度のチームを東京電力PG・GGG社内で結成し、『どういった写真なら業務効率化できるか』をプロの目線から監修し、制作していました。
そのため、実証実験が始まり、写真が撮られた段階から効率化が始まっている手応えを感じていました。」
ーーなるほど。ありがとうございます。
ーー前橋での第一回実証実験の開催と、2回目である今回の東京の開催で、大きく変わったことはありますでしょうか。
鬼頭「前橋での第一回実証実験の時には、約20,000本の電柱が撮影され、写真の精度も非常に良い結果となりました。
中でも、特に我々が驚かされたのは撮影スピードです。1時間で2,000本の電柱が撮影されることもありました。これは東京電力の直営チームでは絶対にできないことです。
この結果を2回目の東京の実証実験で活かそうと議論し、実施いたしました。具体的には、電柱に何か異変が生じた際に対するアプローチです。
たとえば、電線に何かが引っかかったり、電柱に自動車がぶつかったりといった事象です。
この状況に対して、先ほどお話しした1回目の実証実験のスピード感を活かせないか検討し、東京では『ミッション』という、緊急クエストを新たに実施いたしました。
具体的には、ピクトレ内に『この電柱を◯時間以内に◇本撮影してください』、というクエストを発生させ、ユーザーの方に撮影していただく試みです。」
撮影ミッションイメージ
引用:https://pictree.greenwaygrid.global/news/1159/
鬼頭「結果としては、95%前後の達成率でした。クエスト発生後、40分程度で撮影されている事例もありました。」
ーーそれはすごいですね。そこまでハイスピードでミッション達成がされていることに驚きました。
ーー先ほど例として電柱の異変のお話をされていましたが、そこまでのハイスピードでユーザーが鮮度の高い写真を撮影していただけるということは、大きなポイントになるかもしれませんね。
ブロックチェーンゲームならではのグローバル性
ーー『ピクトレ』はグローバル展開も視野に入れているのでしょうか?
鬼頭「はい。『ピクトレ』の報酬はAmazonギフト券だけでも成り立つのですが、グローバル展開をさせるために、あえて暗号資産も取り入れています。」
鬼頭「今の『ピクトレ』は、ユーザーが撮った写真を、人間が確認するフローになっているのですが、その前の一次判定として、AIを使用しています。
具体的には、写真の内容が電柱か、電柱でないか(虚偽や不正のあるものでないか)の判定をAIにさせているのですが、この判定の前に、もう1段階、人の目視による判定を設けようと思っています。
たとえば、その判定業務を海外の方、たとえばバングラデシュの方にやってもらうとします。その報酬が日本基準では微々たる額だとしても、バングラデシュの賃金水準では適正な報酬になるので、新たな雇用機会の創出になり得ます。
しかし、これを現行の通貨システムで行おうと思うと、実現できません。たとえばですが、1円相当分の報酬を国外に送ろうとした場合、国際送金手数料が2,000円程度かかります。つまり、少額の報酬送金はできないのです。」
――国際送金は、既存の金融機関を使うと「遅い」「お金がかかる」など、デメリットづくしですからね…
鬼頭「しかし、『ピクトレ』経済圏に暗号資産を用いることで、ほぼ手数料なしで瞬間的に報酬を送金できるようになります。
これにより、新たな経済を形成できると思っています。ユーザーさんがゲームをプレイすることで、なぜか『企業』にも、『自治体や諸外国の人』にも貢献できている。
そういった、多方面に良い影響を与えられる、Web3でないと実現できない世界を作りたいと思っています。
事業としては1個工数が増える形になるのですが、それで救える人がいるならば、そうするべきだと我々は思っています。」
ーーありがとうございます。国際送金コストの安さと、それに関連した夢がWeb3にはあるということですね。
他社協業やIPコラボで拡大するプロダクトの未来
ーー今後の展開について、差し支えない範囲でお伺いできますでしょうか。
鬼頭「具体的な場所まではまだ言えないのですが、東京電力エリア管内かつ、複数の場所で、サービス展開エリアの拡大をしたいと思っています。将来的には東京電力エリアの全管内でピクトレを使えるようにしていきたいと思っています。」
DEA社 栗原様(以下、栗原と表記)「新しいエリアに展開させる際に、『ご当地IP』とのコラボを行い、そのIPファンの方々にも楽しんでもらえるような企画も進めています。
また、東京電力PG、GGG社さん以外の事業者さんとも、ピクトレの仕組みを使ってインフラ保守に貢献できるように進めています。」
『ピクトレ』は社会貢献性を重視する
ーー現在、『Play to Earn』ゲームには多くの企業が参入しており、『お金が稼げるうえにゲーム性が高い』ことを重視したものが多い印象です。
ーーしかし、『ピクトレ』は『社会課題の解決』を第一に置いている印象です。その意図をお伺いできますでしょうか?
鬼頭「ゲームを長時間プレイしていると、満足感が得られる一方で、罪悪感が残る感覚に陥ることがあるかと思います。しかし、ゲームを通じて社会貢献ができているとなれば、ゲームをやることに対する理由が生まれると思います。
もちろん、『Play to Earn』ゲームとして、楽しみながら稼げるように『ピクトレ』を作っています。しかし、莫大な制作費をかけて『ピクトレ』を制作したのは、エンタメとしてその他のゲームと戦わせるためではありません。
ユーザーに『ピクトレ』をプレイする正当な理由を用意する、つまり、社会貢献ができる独自性を重視しています。」
ゲームを遊ぶ『良い言い訳』をどうデザインするか?
ーーDEA社様からのメッセージがあれば、お聞かせください。
栗原「私は『Play to Earn』ゲーム業界に入ってから4年が経ち、その間に多くのプロダクトを見てきました。そのうえで、『ピクトレ』では、これまでの『Play to Earn』ゲームからもう一歩踏み込んだものを作る必要があると感じています。
具体的には、これまでの『Play to Earn』ゲーム同様に、純粋なエンタメとしての『ゲームの楽しさ』と『稼げる』体験価値を両立させることに加えて、『誰かのためになる』という体験価値を付与することです。
『稼げる』という前提の動機がありつつも、間接的に誰かの役にたつことにもなる、というのは、心が満たされる体験であると思います。
ゲームプレイに、『インフラのためになっている』『地域貢献ができる』という良い意味での『言い訳』を作れることは、『ピクトレ』が作れる新たな世界だと思います。
ゲームをプレイし続けていると、『こんなことやってていいんだろうか』といった不安を感じることがあるかと思いますが、それに対して『これは社会にとって無駄じゃないし、その正当な対価としてお金をもらっている』といった理由を付与できることは、『Play to Earn』の新たな道筋になるのではないかと思っています。」
「ユーザーと運営が手を取り合える」理想的な構図を創出
ーー『ピクトレ』は、他の『Play to Earn』ゲームに比べ、『なぜ報酬が得られるのか』が、非常にわかりやすい構造(自分の写真が具体的にどんなふうに活用されているかが分かりやすい構造)になっているかと思います。それも意図されたことなのでしょうか?
栗原「はい。『ピクトレ』は、『Play to Earn』業界において初めて、真にユーザーと運営が手を取り合える構図を生み出せたと思っています。
我々は様々な『Play to Earn』のゲームを生み出し、運営してきました。その中で、悩んだことや、反省するべきことも数多くありました。その反省を踏まえたうえで、『ピクトレ』では、元々のブロックチェーンの理想を実現できるように構築しました。
ユーザーの方は、たくさん写真を撮ることによって、稼ぐことができる。一方我々は、その写真を活用することで、ビジネスをより大きくすることができる。ユーザーさんと運営の利害がしっかり一致するようになっています。
この構図を作れたことは、『ピクトレ』のクリティカルポイントだと思っています。ユーザー数がまだそんなに多くないにも関わらず、既に多くの写真が集まっているのも、『ピクトレ』の構図により、コミュニティが有効に機能しているからだと思っています。
『ピクトレ』のコミュニティはとても雰囲気が良いです。オープンチャットで普段から連絡が取り合われていて、『今日は自分がこの電柱取りに行きます』などという協力の相談が行われています。
『ピクトレ』の取り組みを前向きに捉え、健全に盛り上げていこうとしてくださるユーザーさんが多く、コミュニティビルディングが成功しているのも、『ピクトレ』の構造だからこそだと感じています。」
ーーありがとうございます。『ピクトレ』では、限られたトークンを奪い合う構図ではなく、協力することで報酬を得られるという、これまでにない設計になっているのだと理解できました。
他事業社との展開、IPコラボ、NFTや称号要素などの機能開発は今後も積極的に進める
ーー今後の展開や構想について、DEA社様からも何かお伺いできることはありますでしょうか?
栗原「『ピクトレ』を通して、『画像を収集して価値を出す』という概念を、ゲーム経済圏の中に幅広く広げていきたいと思っています。だからこそ、先ほど鬼頭さんからもお話があった通り、多くの事業者さんと協議を進めています。
また、ゲームにのめり込んでいたら、気づけば良いことをしていて、お金も稼げるという構造にしたいので、ゲームとしての面白さもどんどん高めていくつもりです。
IPコラボを充実させることもそうですし、今後は新しくNFTキャラの要素も入れ、キャラゲーのような楽しみ方もできるようにする予定です。また、陣地を多く獲得したり、ゲームに特別な貢献をされたりしたプレイヤーには、称号としてバッジを付与するといった要素の追加も予定しています。
金銭的インセンティブ以外の部分でも価値を感じ、自然に継続してもらうことが一番だと思います。なので、ゲームとしての達成感やコミュニティに所属する楽しさなど、様々な要素で価値を感じてもらえるような仕組みを構築していきたいです。
そのためには、まだ物足りない部分もあると思いますので、機能開発をどんどん進め、より充実したゲームに仕上げていくつもりです。」
ーー本日はありがとうございました。今後が非常に楽しみになるお話でした。
GGG 鬼頭和希 様(Innovation Manager)
2009年 TEPCO PG入社。主に東南アジアにおける海外コンサルティング、MA等を担当する。
その後、国際協力機構(JICA)にてODA案件開発に従事した後、Greenway Grid Global Pte.Ltd.のInnovation Managerを務める。
日本のインフラをWeb3でdemocratizationし、社会課題を解決し続ける未来を目指す。
引用:https://gamemo.confidence-media.jp/2122
関連リンク
PicTrée(ピクトレ)公式サイト
https://pictree.greenwaygrid.global/
PicTrée(ピクトレ)ホワイトペーパー
https://whitepaper.pictree.playmining.co
PicTrée(ピクトレ)公式X(旧Twitter)
https://x.com/pictree_dea
AppStore
https://apps.apple.com/jp/app/id6478513639?l=ja
GooglePlay
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.playmining.i2e&hl=ja&gl=jp
引用:https://gamemo.confidence-media.jp/2122