ゼロから『エルシャダイ』の制作に関わった二人が再会! 『エルシャダイ』の10年とマルチクリエイター・竹安佐和記のこれからについて訊く!-第2回
<第2回目>「そんな装備で大丈夫か?」「大丈夫だ、問題ない」など印象的なセリフ、独特の世界観、魅力的なキャラクターたちが話題を呼んだ『エルシャダイ』の立ち上げからスタジオの解散までを知る竹安佐和記氏が、今だから話せる『エルシャダイ』の真実。その後の10年間と、これから竹安氏が目指す未来について話を伺った。(聞き手:コンフィデンス 取締役 竹下和広)
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第2回 - 僕が絵を描くのは、絵を描くのが好きだからじゃなく、相手に届けやすいから(竹安)
竹下和広(以下 竹下):それ初めて聞きましたよ。(苦笑)
竹安佐和記(以下、竹安):だって、絵を描いたら相手に届けやすいからやっているのであって、描くこと自体は好きじゃない。時間も掛かるし、手間も掛かる。上手い人というのは次から次へとドンドン出てくるし、CGで良いじゃんというところはいっぱいありますし。
だから、絵描きが専門という訳ではなく、何もない所から新しいものを作るのが好きな人間なんです。イノベーションが好きだから、ゲームに限らず今も色んな仕事をしていますが、誰もやっていないようなことをやるのが好きなので、それを伝えるのに絵は凄く便利なんです。
竹下:ですよね、ゲーム制作も最初は絵コンテとか作りますしね。
竹安:ある意味、世界の共通言語ですから。有名クリエイターでさえ、皆さん自分で描けないから絵で困ってたんです。そこは僕が一歩有利だったと思います。クオリティはそれほど大したものではないけど、自分で描けると伝えるのは楽で早いんです。
竹下:結局、私が竹安さんに出会ったのも、絵がきっかけでしたし。あるゲーム会社さんの有名コンテンツの一枚絵でした。
竹安:竹下さんにはそれを凄く気に入って頂きましたね。
竹下:色んな所で言ってた事なんですが、その絵を見せられた瞬間、動いて見えたんです。誰にも信じてもらえないと思いますが…。
竹安:このタイトルをやれって言われた時は凄く嬉しかったのを憶えていますし、このゲームのシンボルになるような、何だか分からないけど、「バーッと広がるものを描け」と言われました。(笑)
竹下:確かに広がりましたよ!
竹安:緑がバーっと広がっている絵を描いたら、とても評価して頂いて、それは凄く嬉しかったです。エロとかグロとか、直感的に来る感性に訴えるものではなく、感動って一番美しいじゃないですか。そこだけで認められる絵が、当時描けたことが嬉しかったですね。
竹下:私は絵を理解している訳ではないですが、一緒にゲームを作れる人を探していました。偶然か必然かはどちらでも良いけど、ご縁があったんでしょうね。波動が合ったと言うか。その絵を見た途端、金脈でも見つけた様な勢いで事務所に戻って、当時の英国本社社長に「凄い人を見つけた!」と電話をしたのを憶えています。
そして「この人に何か絵を描かせたい」と言った時に、英国本社社長から数枚のあらすじが送られて来たのが、『エルシャダイ』の素案でした。これを私が翻訳して竹安さんに渡した所から全てが始まりました。
竹安:『エルシャダイ』のベース、つまり旧約聖書がベースでした。
竹下:そうです。最初に何を描きましたっけ? アークエンジェルでしたっけ? それがまた凄く良かったんですよ。あの時の竹安さんは神がかかってました。
竹安:イギリスが提案してきた設定に出てくるキャラクターを何枚かボードに描いたんですね。それが非常に評価されて。
竹下:はい、日本的でもないし、西洋的でもない無国籍感。何だか良く分からないけど、とても魅力的でした。確かに、これで凄い骨太のアクションゲームが作れるのかという意見もあったのですが、そこが新しいし、面白いんじゃないか!と英国本社社長と押し切りました。
英国本社社長の懐の深さと新しいものを作りたいと言う熱量が私と竹安さんの中でも自然と理解出来ましたし、当時の我々はとにかく、イグニッションらしいエンターテイメントを目指していて、漸くそれを見つけたという気持ちでした。
株式会社crim
代表取締役 竹安佐和記
カプコン第4開発部にて『Devil May Cry』や『鉄騎』、クローバースタジオでは『大神』の開発に関わったのち、株式会社crimを設立。ディレクター兼キャラクターデザイナーとして『エルシャダイ』を制作。また、スタジオ解散後、『エルシャダイ』の著作権を取得。現在小説Elshaddaiセタ記の執筆、Steam版Elshaddaiの開発中。