ゼロから『エルシャダイ』の制作に関わった二人が再会! 『エルシャダイ』の10年とマルチクリエイター・竹安佐和記のこれからについて訊く!-第3回
<第3回目>「そんな装備で大丈夫か?」「大丈夫だ、問題ない」など印象的なセリフ、独特の世界観、魅力的なキャラクターたちが話題を呼んだ『エルシャダイ』の立ち上げからスタジオの解散までを知る竹安佐和記氏が、今だから話せる『エルシャダイ』の真実。その後の10年間と、これから竹安氏が目指す未来について話を伺った。(聞き手:コンフィデンス 取締役 竹下和広)
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第3回 - 見た人が過去に見たものでトレースできず、「何だろう?」となることが重要!
竹安佐和記(以下、竹安):『エルシャダイ』は良くも悪くも、僕らしさが一番出た作品だと思うのです。
僕がずっとこだわっている無国籍感というどこの国にも属さないであったりとか、見たこともない絵面であったりとか、初見で見た人が自分が過去に見たものでトレースできない「何これ?」っていう、でも否定もできない、評価する時に、良いか悪いかという評価に立たないで、「何だろう?」となるもの。それでいて下品でもない。
エロとかグロも悪くないと思うのですが、高尚なアートを求めた時には、動物的な反応で感じるエロ、グロがあると邪魔だと思ったんです。そこってもうゴールは現実世界に存在しているから。あの時、僕が求めたのは現実に手に入らないものを探す事で、昔で言ったらバウハウスの定義した機能性合理性の追求にも近い発想だったかもしれません。
その考え方を人の感性に照らし探求する事で、新たな協調共鳴を呼び文化に貢献するんじゃないかという偉そうなことを考えていたんですよね。(笑)
結果としてそれが「そんな装備で大丈夫か?」「大丈夫だ問題ない」に集約されて、エロとかグロではなくて、ちょっとニヤっとする笑いや、無国籍感や壮大感に繋がったのかなと思います。
竹下和広(以下 竹下):竹安さんが言ってた事は、3分間のトレーラーに集約されています。雲の中から進むとロゴが出てきて、目を凝らすと、鳥の羽(=天使の羽)が漂っています。あの世界観というのは当時のゲーム業界にはなかったし、この感覚を世界のユーザーに体験してもらいたいと思いました。
【エルシャダイ公式トレーラー】
▼「伝説のトレーラー」
▼「E3 2010年イーノックトレーラー」
▼「8分でわかるエルシャダイ」
竹安:いや、未だにないと思います。(笑)何故かと言えば、アレが良いとか悪いとか思っても、実際にアレを作ろうという感性に行かないし、理解出来ないから。ああいうものをもっと見たいという人はいるかも知れないけど、自分で作ろうという発想には絶対にならない気がするんですよ。
竹下:まあ、作らないですよね。(苦笑)竹安さんのオーダーを受けて、当時のCG制作会社白組さんもよく竹安さんに付き合ってあの空気感を演出できたなと今でも思うんです。
竹安:それもね、絵が描けたからなんです。その手法がなければ厳しかったでしょうね。
竹下:では、10周年を目前にして敢えて伺いたいのですが、『エルシャダイ』はなぜ生まれたのか? 今一度、竹安さんに語って頂ければと思います。
株式会社crim
代表取締役 竹安佐和記
カプコン第4開発部にて『Devil May Cry』や『鉄騎』、クローバースタジオでは『大神』の開発に関わったのち、株式会社crimを設立。ディレクター兼キャラクターデザイナーとして『エルシャダイ』を制作。また、スタジオ解散後、『エルシャダイ』の著作権を取得。現在小説Elshaddaiセタ記の執筆、Steam版Elshaddaiの開発中。