【前編】ライブ配信ツール『ViSUALIVE』の開発から、ハイパーバリトンギターや”Sakura Caster”などオリジナル楽器の制作まで、アーティストの枠にとどまらないクリエイター、佐倉仁のクリエイティブの秘密!
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ゲームアプリやライブ配信プラットフォームサービスなどを手がける株式会社ビジュアライズに所属するアーティストであり、配信プラットフォーム事業も手がける佐倉仁氏に話を伺った。
マルチタレントな「佐倉仁」というアーティストの人格
竹下和広(以下 竹下):本日は「ViSUALIVE」という配信のプラットフォームのご紹介と、「ViSUALIVE」が目指すエンターテインメントの形、もう一つが、アーティストのためのプラットフォームであると言う事ですので、そこで佐倉仁がなにを目指すのか?この3軸をメインにお話を伺っていきます。
まず、最初に、音楽活動から教えてもらえますか?フェイスブックで動画も拝見しますが、いろいろな楽器を演奏されていて、とても多才な方とお見受けしました。
佐倉仁(以下 佐倉):ありがとうございます。
竹下:ビジュアル系の格好をしてギターを持っていたので、あっ、ギター弾く方なんだなと思っていたらドラムもやられていて、マルチにいろいろな才能を持っていらっしゃいますよね。
ある時はNAMM SHOW(アメリカで開催される世界最大規模の楽器ショー)にもいらっしゃいました。あれは確かアナハイムでしたっけ?
佐倉:おかしな場所ですよ。あっ、あの人は! と、雑誌で見た人が会場を歩いていたりしますから。日本人は日本人で、行ったら行ったで仲良くなりますし。つい先日に関ジャムに出ていた、少女ドラマーのよよかちゃんとB‘zのツアーギタリストのYTさんと一緒に「Dreamin’」をセッションしたりとか、訳がわからないです。(笑)
で、少しだけ話を戻すと、僕は特殊な楽器を作っていて…。
竹下:バリトンギターですね。
佐倉:そうです。ベースとギターが同時に弾ける楽器で、ハイパーバリトンギターを作ったのが2年前です。もっと簡単にみんなが楽器を弾けるようにならないかと思って作ったのがSakuraCasterです。3弦でベースとギターが弾けて、三味線みたいなんだけど、指一本だけで弾ける。
3弦楽器SakuraCasterや配信サービス「ViSUALIVE」が生まれたワケ
佐倉:指一本でベースとギターが5度で弾けるので、コードは鳴るんだけど、メジャーとかマイナーの区別はないので、どんな曲でも弾ける。
竹下:それ、特許とか申請されましたか?
佐倉:バリトンギターは申請しましたよ。
竹下:昔は50万とか60万もするギターをローンで買って弾いていた人がいたりしましたが、マニアじゃないと高いので誰でも買えないですよね。だから、同じ形をした安いやつを買ったりしていましたが、最近では老舗メーカーのギブソンが経営不振になったりとか、楽器を弾く人が少なくなってきて、楽器自体が売れなくなってきていますよね。
佐倉:まさにそれが、僕が壊したかった現実で、60年も経っているのにまったく何も変わっていなくて。レスポールが良いとか、ストラトキャスターが良いと言われてる時点で終わっているなと。それをぶっ壊そうよ。
竹下:それしかないですもんね。アイバニーズが出来た時とか時代がちょっと変わるかなとは思いましたが。
佐倉:誰でも弾ける楽器を作って、本当はコロナの時代になる前は、音楽だけやったら卒業できる高校を作ろうと思ってたんだけど、その楽器を作った人間として、高校を作った人間として、自分も表現者として世界一を獲る。でも、コロナでそれが出来なくなって、困ったなと。イベントも出来ないじゃないかと。待てよ、じゃあZOOMで本当のライブのようにやってみようと。
竹下:今回のやつですね!
佐倉:ただ、ZOOMでやったらいろいろと問題が出てきて、リアルタイムでやるのはいいけど、音が悪いとか、モノラルでしか出力できないとか。他でいうと、ライブを観ている人は他の人から顔を見られたくない、要は、隣の人には見られたくないけど、やってるアーティストには見てほしい。
で、アーティストもみんなの顔は見たい。じゃあ、そんなプラットフォームを作っちゃえと言うことで作ったのが「ViSUALIVE」です。
竹下:よくあるパターンですよね。ないのなら作るという。
佐倉:そうです。元々決まっていたやることがコロナでどこかに行ってしまったので。エネルギーを持て余していて。(笑)
竹下:この「ViSUALIVE」というプラットフォーム自体は、別にコロナだからって訳ではなくて、その前から考えていた訳ですよね?
佐倉:いいえ、まったく何も考えていません。コロナになってライブが出来ないからってだけです。サービス名も双子の兄貴の会社の事業として作るので会社名の「ViSUALIZE」に似ているから、「ViSUALIVE」で行こうという感じです。(笑)
竹下:僕はてっきり、元々作っていて、タイミングがバッチリあったということかな? と思っていました。
佐倉:いやいや、コロナだしやること無くなったし、どうしようって6月まで悩んで、6月にZOOMでライブをやって、その後、えいえいっと!
竹下:いろいろと悪いところとか、改善点だとか浮き上がってきたわけですね。
佐倉:後発なんで、他社だと40秒くらいなんですね、ライブやってから届くまで。みんなありがとうって言って、40秒くらいすると届く。その40秒を待たないといけない。
竹下:40秒ってラグですか?
佐倉:心がバキバキに折れるんですよ。(苦笑)やってる人が、もうやりたくないって思っちゃうくらいに。
竹下:いっこく堂さんの方が短いですよね。(笑)
佐倉:で、まずはタイムラグを短くして、今はまだ5秒くらいあるのですが、音を悪くしてまでラグを短くしてもねえ。音が綺麗なまま、映像が綺麗なまま、どこまでラグを短くできるかと言うのを今やっています。
竹下:コロナになって一番被害を受けているのは飲食店と、後もう一つは興行。ライブだとかコンサートだとか、人が集まってパフォーマンスを見せる。そこに苦しんでいるアーティストさんだったりがいる訳ですよね。お友達でも、交友関係でも、そういう人は沢山います。島谷ひとみさんのライブ配信も見たのですが、そういう人にこういう場を与えるプラットフォームを目指していくのだろうなと。
佐倉:いつの時代も、僕は反骨心の塊なんです。逆に言うと、この社会に対しての反骨心だったのが、ある意味、こう言う状況になったからこそ、正当な、反骨心とは言わず、この社会をどうにかして元に戻そう。元に戻らないのならば、違う道を作ろうと言うのが好きですね。
竹下:パイオニア精神ですね!
佐倉:平時に向かないタイプなんです。平常時はダメです。
竹下:リラックスできないタイプだったりしますか?
佐倉:リラックスは出来ないんですよ。
竹下:常にどこかに緊張があったほうがいい感じですよね。私の目に映る印象では反骨心がメラメラ燃えてるようには見えないのですが…。(笑)
佐倉:まあ、大人になりましたからね。(笑)
竹下:丸くなったということですか。
佐倉:そうですね、20代のアーティストの頃は、それこそ現役の後輩が楽屋に来ても会わな
いくらい…。
竹下:ちょっと怖い系ですか。
佐倉:挨拶する暇があるなら練習しろよっと思ってしまってたんです。
竹下:体育会系ミュージシャンですね。(笑)
佐倉:面白いのは、挨拶に来たやつが全員売れたっていう。(笑)結局アーティスティックなのがいいという訳ではなく、コネクションというか社会の中でちゃんと人と人との関係を作れたやつが売れるという悲しい事実。
竹下:アーティスト界隈でもそうなんですね?
佐倉:そうだと思います、正直なところ。プロデューサーとかに面倒臭いことを言うタイプだったんです。なんで今やらなくちゃいけないのとか、この歌詞なんなのとか、あのタイアップは絶対に嫌だよとか。
でも、それがカッコいいから言ってる訳じゃなくて、若いし、エネルギーが余っているから、うっかり口に出るじゃないですか。そうしたら、あいつは面倒臭いし、使い難いとかってことになるから、さっきのご縁という意味では、自分で縁をなくす方向に、無意識に舵を切っていた。
竹下:話を伺っていると、一匹狼っぽいですね。
佐倉:だから、その真逆の役割をやってる兄貴はすごいって思いますね。
竹下:お兄さんは会社をやるために、ある部分ビジネスライクに振る舞わなくてはいけないこともある。
佐倉:意外とマッチングが良いというか。兄が出来ないことを僕がやり、僕が出来ないことを兄がやる。
竹下:プラットフォーム自体は、コロナ真っ只中で、自粛も入って、緊急事態も入った中で、今どんな感じで進化していっているのですか? もっと使いやすくとか、革新とか、改善とか、改良とかされているのですか?
ないなら作ってしまえ! 「ViSUALIVE」誕生の秘密
佐倉:いちばん最初はタイムラグの話と、後は、なんでEC機能がきちんと入っていないのだろうと思ったのです。ライブの売上ってチケットかグッズなのにチケット屋さんが作ったプラットフォームはチケットを売ることに特化しているから、買ったらありがとうございますではなくて、グッズとかあるでしょう。ライブと言ったら、まずグッズじゃんと。
それがないのは、訳がわからないなと思いました。じゃあ、作ったらいいという事で作ってみたんです。
竹下:ライブのグッズ売り上げって大きいですからね!
佐倉:その後に、観る方法を変えてみた。例えば、3人の女性ユニットの方達でやったのが、3人を追いかける専用カメラの3枚チケットを作って、全体を切り替えながら映すいわゆる一般的なカメラと、特定の方だけを狙い続けるというチケットを別で売ったんです。
そうすると、プラスオンでみんな買ってくれたみたいで、パソコンで見ながら、スマホでお気に入りのアイドルだけを見ていたのでしょうね。そういう機能を付けてみました。「推しカメラ」っていう名前です。
竹下:なんだか試してみたいですね!
佐倉:後はアバターで、ウチのシステムって、アーティストさんの目の前に大きなテレビとか、大画面のプロジェクターで、お客さんが並んでいるのを映しているんです。その人達が投げ銭してくれるとバーって出てくるんです。
で、そのアバターは、最初にサイト側で設定したファンの格好をしたアバターで、遊びに行けるし、そのアーティストのつなぎとかを買って遊びに行けるから、みんなで参加した感も得られます。
竹下:アバターがそのコンサートを見ているって感じですね。それはアーティストも見れるのですか?
佐倉:下世話な話ですけど、普通にコメントしたら上に流れるだけですけど、ちょっと高いやつをやると、そのキャラクターがグッと出てきて、名前が出て、コメントがバンと出てくるんです。で、高いやつを選ぶと、その後ろで花火が上がるみたいな。よりアーティストも、ああこの方はたくさん投げてくれたんだなと分かると、いじれるじゃないですか、「ありがとう」って。そうなるとうれしいですし、また来ようって気持ちになりますよね。
竹下:コインか何かを買うのですよね?「ViSUALIVE」コインとか?
佐倉:そうです。ライブコインというのを買って、10コインから徐々にみたいな感じで。
竹下:TikTokとかSHOWROOMとか、あの辺のサービスが全部出て歌ったりとか、ハートが出たりとか、いっぱいいろんなもんを投げてますよね。あれのチケット販売がある版なんですね?
佐倉:そうです。それのアーティスト用の専用版みたいなものです。業務用みたいな。SHOWROOMとかって、投げ銭中心じゃないですか。大物アーティストがチケット代を取ってやる興行に投げ銭が出来るという、またちょっと違う物です。今後は、これを流行らせて行けたらと。
竹下:それを配信してから、どのくらい経っているのですか? 去年からですよね?
佐倉:去年です。10月くらいですね。
竹下:まだ、半年経っていないんですよね?
佐倉:お陰さまで、これはまだ言えないのですが、色んなアーティストの方々のライブが決まってきています。
竹下:早いですね!しかし始められて4ヵ月くらいとのことで、これからトライアル&エラーもあるのでしょうね。今どれくらいの人たちが、プラットフォームを支えているのですか?
佐倉:スタッフはけっこう多いですね。10人くらいです。来月からもう少し増えて、13名くらいになります。
竹下:いろいろご苦労もあるかもしれませんが、少しずつ事業は大きくなっている感じですか?
佐倉:嬉しいことに、「ViSUALIVE」というプラットフォームに出たいという方も増えれば、「ViSUALIVE」のバックエンドを使いたいというご相談とかも来ます。低遅延での配信ができるエンジンを貸してくれとか。今までも事業の垂直立上げというのを何度かやって来ましたが、ここまで色んなニーズを引き出せる事業というのは珍しいなという感じです。
竹下:佐倉さんがお考えになっている方向で、今着実に進んで行っているという感じですね。
佐倉:逆に言うと、僕が思ったのよりも速度が速いから、どう舵を切ればいいのか。急流下りかという感じです。
竹下:ありきたりで、つまらない質問かも知れませんが、このエンターテイメントの形を目指していく中で、1年後の今頃、「ViSUALIVE」の描くエンターテイメントの形は、どんな風になっていると思いますか?
佐倉:具体的にということですか?
竹下:いえ、具体的でなくても…。もしヴィジョンのようなものがあれば伺えたらと。
株式会社ビジュアライズ
クリエイター&アーティスト
佐倉仁
長崎県生まれ。中学時代からバンド活動を開始、高校時代には学業よりもバンド中心の生活に。アーティストとして活動する傍ら、映像の合成・編集なども自ら行う。2020年の世界最大の楽器ショウNAMM SHOWにて「3本弦の誰もが簡単にベースとギターを同時に弾くことが出来る弦楽器”SakuraCaster”を展示、”忍者ギタリスト”の異名を持つ、アーティスト&クリエイター。